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美しさとは

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美しさの定義って、難しい。その時代に生きた人の価値観とともに、変わるのかもしれない。いや、まったく変わらないものなのかもしれない。美しさってなんだろう。自分に問いかけて、考えたこ…
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#歴史が好き

桃源郷に秘められたシンボル。

*ブーティ村 ロマネスク様式のサンタマリアネーヴェ教会 * ロマネスク様式の教会両脇がオリーブ畑の急な坂道を、えっちらおっちら登っていきます。振り向くと山に囲まれたブーティ村が日の光を受け緑に浮かんでいます。 太陽を受けた銀色のオリーブの葉がキラキラ光り、無造作に掛かる梯子は、いままで剪定でもしていたのでしょうか。時(とき)を切り取ったような瞬間。 1500年代のメディチ家が農園として別荘を作る、たぶんずっと前からオリーブオイルを生産している、歴史ある土地です。大きく畝

ルネサンスの寵児、フィリッポ。 空間の美しさ。Part.4

やっと、ひとりで現場を仕切れるようになったフィリッポ。 一難去って、また一難。 現場作業安全対策ガイドラインクーポラの高さ、116.50メートル。見たことも聞いたこともない、超高層。 実際に請け負う現場作業員のもっともなる意見。みんなを集めて、フィリッポが話し始めます。 作業員の皆様が、いまだかつてみない大事業を前に、不安になられるお気持ちは、よくわかります。そして、いかに困難で大変な作業になるのかも、理解しています。転落死を回避し、高層でも怖がらず作業ができるように

世界は音に包まれている Part.1

『音の美しさ』の続編です。 音楽。音を奏で、その音色を楽しむこと。 耳で聴き、時には感情をゆさぶり、時には気持ちを穏やかにしてくれる、心の処方箋のような存在。 自然、黙想。そして、音楽。昔から「音楽とは?」と、宇宙の真理を考えるごとく、深遠に思慮し、歴史に名を残した哲学者達。 紀元前6世紀頃のギリシャ。手を伸ばせば届くかのように、星の光が地上に降り注いでいた時代。 エーゲ海から聞こえてくるさざ波の音を耳にしながら、色とりどりに煌めく星空を眺めている、ひとりの人物。彼は

世界は音に包まれている Part.2

『音の美しさ』の続編です。 世界は音色に包まれている Part.1 美しさとは、調和である。音楽だけど、音楽じゃない。中世時代は音楽をどう解釈して、宇宙、神、人、との調和を図ろうとしたのでしょう。 ロマネスク様式の教会と音楽。天使が奏でる、天上の音 欧州で、キリスト教が世界の中心となると、神学が生まれます。神学では、天体の調和の観念は、天使の音楽として解釈し直されます。 昇天したマリア様が、天の女王になる、マリア様の戴冠式。大変おめでたいシーンなので、天使楽団が音楽を

世界は音に包まれている Part.3

『音の美しさ』の続編です。 世界は音に包まれている Part.1 世界は音に包まれている Part.2 建築と音楽の、数合わせ。ルネッサンス時代に入ると、以前に登場したブルネレスキと、彼と同時代に生きたレオン・バッティスタ・アルベルティが、フィレンツェ国の空間に手を加えます。 まずは、ブルネレスキに登場してもらいましょう。1420年に着工し、1436年にクーポラが完成。聖堂の献堂式が行われます。 献堂式に用いられる音楽は、もちろんオリジナル。ルネサンス最大の音楽家と言わ

世界は音に包まれている Part.4

『音の美しさ』の続編です。 世界は音に包まれている Part.1 世界は音に包まれている Part.2 世界は音に包まれている Part.3 音楽は、音色が流れるように続く、時のなかでの美しさ。 建築は、建物にリズム感を与える、空間のなかでの美しさ。 この二つに共通する調和。それは、算数や幾何学が出会う場でもあります。 中世時代の美しさは、床面も柱も、幾何学から割り出されていましたが、ルネッサンス時代になると「数字」が重要になってきます。 音楽と建築。ブルネレスキのあ

世界は音に包まれている ! Part.5(最終回)

連載4回のはずが、前回のレオン様が長くなってしまったので、2回に分けました。今回は、本当の最終回パート5です。 『音の美しさ』の続編です。 世界は音に包まれている Part.1 世界は音に包まれている Part.2 世界は音に包まれている Part.3 世界は音に包まれている Part.4 音と建築。リズムや調和を感じるのは、なにも、歴史的な建築物だけじゃありません。ちょっと視点を変えて、周りを見渡せば、きっとまわりにあるはず。見てるけど、見えてないだけ。 フィレンツェ