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“読も” 2022年7月度 第2回|すてきなひとたち

拝啓、ART HOUSE様

初夏の候、益々ご清栄の事と存じ上げます。
まずはこれまで私個人やバンドとしてお世話になりました事、感謝申し上げます。

さて、わたしは何かの終わりに際してというものが苦手です。
別れを惜しむ事に対して、その物事や人物とどれ程の知識や経験、思い出、時間の共有があるのか、また、その感情を持つ事だけの全うな理由があるか考えて、埒が明かなくなってしまうのです。
しかしながら、大手を振っておさらばを伝える機会を頂きました為、思いを書き綴らせて頂きます。

10年以上バンドマンと言っても、ライブハウスといえばART HOUSEでばかりでライブをしてきました。
好き、嫌い、苛立ち、さみしさ、たのしさ、嫉妬、性欲、自己顕示欲、達成感、死にたさ、悩み、よろこび、そして願い、祈り。
バンドマン、シンガーソングライター、演者、スタッフ、お客、酔っ払い。
様々な人間の、様々な感情を目の当たりにしてきました。
それはタバコの匂いの染みついた吹き溜まりで、ゲロの匂いのする公衆便所みたいで、しかしとても美しく、人が生きていると感じられるかけがえのない場所だと感じておりました。

Biscuit oriba、大学時代のコピーバンド、弾き語り、すてきなひとたち、お世話になり始めて十余年、時には精神的に無理になったり、実家が無くなったり、職場が遠くなったりで寄り付きもしない時期もありました。
しかしながら、その度に頃合をみて、さも当たり前のように声を掛けて頂き、何度もステージに立たせて頂きました。
そしてステージに立つたび、「ここだ!」「これだ!」と、少年の心で、大げさに感じておりました。

自分にとって、そこにある場所が無くなってしまうというのはなんとも形容し難く、実感がなく、言葉を選ぶことが難しいです。
きっと、数カ月後、東門街や生田神社に訪れたときなんとなく目をやった路地からART HOUSEがなくなっていたときに、本当に実感ができるのでしょう。

他に無い暖かさが、僕がART HOUSEにばかり出ている理由です。
ありがとうございました。

愛を

すてきなひとたち
Biscuit oriba
塚本 悠太

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