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モネの「積みわら」が122億円、その理由とモネが切り開いた新しい絵画について

このnoteでは、名画の背後にあるストーリーや教科書にはのっていない画家の秘密、美術作品そのものの価値などを取り上げていきます。

第一回目ではモネを取り上げます。

モネといえば「睡蓮」が有名ですが、2019年にモネの描いた「積みわら」という作品が、なんと122億円という衝撃的な価格で落札されたことはご存知でしょうか?

「え、積みわら? なんでそんなに高いの??」

そう思った方もいるのではないでしょうか?

今回は、モネの「積みわら」がなぜそんなに高い値段で取引されたのか、その背景や美術史における「積みわら」の立ち位置、そしてモネが挑戦した「抽象絵画」という世界について、解説していきます!

モネの「積みわら」が122億円!その衝撃の理由とは?

「積みわら」は、モネが光と時間による変化を表現するために、同じモチーフを異なる時間帯や季節で描いた連作シリーズの最初の作品です。

モネといえば「睡蓮」が有名ですが、「睡蓮」は実はこの連作という手法を確立した後に描かれた作品。
つまり、「積みわら」はモネの作品において、連作という重要な転換点となった作品とされているのです。(実際はサンラザール駅を描いた時にショート版の連作を書いています。)

そして、美術品の価格が大きく左右される要素の一つに「ストーリー性」があります。

実はモネの「積みわら」、あの有名な抽象絵画の創始者、ワシリー・カンディンスキーに衝撃的な影響を与えたという、話があります。

カンディンスキーは、音楽を絵画で表現しようとするなど、当時としては革新的な試みを行っていた画家の一人でした。
しかし、なかなか表現方法が見つからず、スランプに陥っていた時期があったそうです。

そんな時、カンディンスキーは偶然にも逆さまになったモネの「積みわら」を見て、雷に打たれたような衝撃を受けたと言います。

その抽象的な表現方法は、カンディンスキーが目指していた音楽の視覚化と共鳴し、後の抽象絵画に大きな影響を与えることになりました。

このように、モネの「積みわら」は、印象派という枠を超えて、抽象絵画という新しい表現の扉を開いた作品として、美術史においても重要な意味を持つ作品と言えるでしょう。

そして、美術品の価格を決める上で重要な要素である「希少性」という点においても、「積みわら」は「睡蓮」に比べて現存数が少ないため、市場に出回ることは非常に稀です。

これらの要素が重なり、モネの「積みわら」は122億円という、途方もない価格で落札されたのです。

「抽象絵画」って、一体どんな絵?

「抽象絵画」は、私たちが普段目にする風景や人物などを具体的に描くのではなく、色や形、筆触といった絵画の要素そのものを用いて、画家の感情や思想を表現する絵画のスタイルです。

モネが活躍した時代は、カメラが登場し始めた頃。
それまでは、絵画は目に映るものを正確に描くことが求められてきました。

しかし、写真が登場したことで、「絵画はもはや現実を写し取るだけの存在ではない」という考え方が生まれ始めます。

そして、画家たちは「じゃあ、絵画で何を表現するのか?」という問いと向き合うことになり、その結果として生まれたのが「抽象絵画」なのです。

モネ自身は、抽象絵画を描いていたわけではありません。

しかし、光と時間による変化を捉えようとしたモネの作品は、結果的に抽象絵画の要素を含む作品となり、カンディンスキーをはじめとする多くの画家たちに影響を与えました。

まとめ|モネの挑戦は、美術の未来を切り開いた

モネ自身は意識して抽象絵画を描いていたわけではありませんが、結果的にモネの作品がその誕生を後押ししたことは間違いありません。

風景をありのままに切り取るのではなく、光と影、時間と共に移り変わる自然の姿を表現しようとしたモネの作品は、まさにそれまでの美術界の常識を覆す、挑戦だったと言えるでしょう。

そして、カンディンスキーをはじめとする画家たちは、モネの作品から抽象絵画の可能性を見出し、新たな表現に挑戦していきます。

それは、まさに伝統的な美術界に対する、ブレークスルーの瞬間でした。

次回は、そんな挑戦的な作品を生み出したモネという人物像を、さらに深掘りしていきたいと思います。

Podcast「アート秘話〜名画に隠された世界〜」では、今回取り上げた内容を対談形式で語っています。こちらの放送もどうぞよろしくお願いします!


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