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喜びも悲しびも みんな生きたい

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口には出せなかったけれど  心が折れそうな危うさの中で 私たちは 同じ風景を眺めた 青い海を見ているの?  白いカモメを眺めているの?  あの日 ここに私たちがいた  そのこと…
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#エッセイ

黒侘助

モラトリアムな季節 アプローチの脇に侘助椿を植えたのはいつ頃だったろう。 そう言えば昔、通っていた大学の、かつての市電通りを挟んで西側に、「わびすけ」という名の薄暗い喫茶店があった。 授業をサボってはよく足を運んだ場所だった。 入り口横の大きめの窓には町屋の雰囲気が漂う格子が取り付けられていた。 ちょうど店の前には市電の停車場があって、窓からは学生たちが頻回に乗り降りする光景が見えた。 私は窓辺の席に座って、訪ね来ぬ友を待つように、行き交う学生たちのシルエットを眺

蝉の産声を聞いた(!?) 耳鳴りな日々。

うっとこの旦那はん 二十数年来 耳鳴りに往生したはりますねん。 ちょうど附属病院で仕事しはるようになって 暫くしての頃からでおすねん。 右の耳から始まって 今では両方で鳴ってるて言うたはります。  どないしはったんやろ。 「えらい時もあったぁ」言うたはりました。 なんでもシンと静まり返った夜分がそうらしいのどす。 うちらには ようわからへんのどすけど、 気にし過ぎて気ぃ狂いそうになってしまう時もあるそうどすなぁ。 耳鳴りは「耳の鐘」とか言うのやそうどすけど