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喜びも悲しびも みんな生きたい

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口には出せなかったけれど  心が折れそうな危うさの中で 私たちは 同じ風景を眺めた 青い海を見ているの?  白いカモメを眺めているの?  あの日 ここに私たちがいた  そのこと…
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京都、 絵に描きたい情景 。

京都の四季は美しい。 過ぎた日々を思い出すと、 切なくて、恋しくて。 じわーーーーーっと。 青い墨が手漉きの和紙に沁み込んでゆくように ゆっくりと、静かに私の気持ちが満ちてゆく。 そんな情感を、旅人の私は、 いつか絵に残したいと思っている。 第一景) 雨瀟瀟 初回のテーマは「雨」です。 荷風の作品に「雨瀟瀟」と云うのがあると知った。 ここでの「瀟瀟」とは、静かに寂しげに雨が降りつづく様に近く、 秋の長雨、「しとしと」ということばが似合う。 一方で、「瀟

黒侘助

モラトリアムな季節 アプローチの脇に侘助椿を植えたのはいつ頃だったろう。 そう言えば昔、通っていた大学の、かつての市電通りを挟んで西側に、「わびすけ」という名の薄暗い喫茶店があった。 授業をサボってはよく足を運んだ場所だった。 入り口横の大きめの窓には町屋の雰囲気が漂う格子が取り付けられていた。 ちょうど店の前には市電の停車場があって、窓からは学生たちが頻回に乗り降りする光景が見えた。 私は窓辺の席に座って、訪ね来ぬ友を待つように、行き交う学生たちのシルエットを眺