見出し画像

[イタリア修行編vol.4]

状況を確認する為アイモ エ ナディアへ電話をしました。
取り敢えず一度来て欲しいと言うので
行ってみると
娘さんのステファーニャが

「何でもっと早く連絡してこなかったの!
待ってたわよ!」

って。
そんな感じじゃ無かったですよね。。。

「いつから来れるの?明日?」

今サドレルで働いてるので直ぐには難しいと伝えると

「じゃあ早く話してきなさい。
貴方ここで働きたかったんでしょ!」

・・・・・・。
そうだけど、サドレル楽しいし勉強になるしなぁ。
でも折角機会を準備して下さった西沢シェフに対してそんな不義理出来ないし、
どうしよう
と思いながら帰りました。

次の日サドレルに相談しました。

「まあ、しょうがないか、でも後1ヶ月はいて欲しい。その後だったら良いよ。
それと誰か知り合いのコック居ない?」

えっ、意外にあっさり。
なんかそれはそれで寂しいんですけどー。

スタッフにもその旨を伝えたのですが
意外な反応を示したのが
シモーネでした。

「それは裏切りだ!
お前は俺たちの事が嫌いになったのか!
もう俺はお前とは話さない!」

違うんだけど、そんなつもりは無いんだけど、、、、。
でもこの反応ちょっとだけ嬉しい。
なんかこんなのが欲しかった。

結局シモーネは本当に最終日まで話してくれませんでした。
それはそれでめんどくさかったです。

なんだかんだいって
ステージは
アイモ エ ナディアに移ります。

僕の師匠ディボ ディバの西沢シェフは
アイモ エ ナディアを京都に招いてコラボフェアを
した事があり
その時、僕は専門学校生でディボ ディバでアルバイトをしていました。

そのフェアで小間使いの手伝いをしていたバイトが、
その本丸の厨房で働くことになりました。

アイモ エ ナディアは
ミラノの南西にあるエリアにある
閑静な住宅街にあるリストランテ。

夫婦のダブルシェフ体制で
ホールでお客様に対応するシェフはアイモさんで
厨房を取り仕切るのはナディアさんです。

仕入れは主にアイモさんがしているのですが、
その目利きは神がかりな程凄く
いつも最高の食材を仕入れてきます。
アイモさんの食材の説明や演出が
アイモ エ ナディアの魅力の一つなんだと思います。

ナディアさんも
シェフなのに慈愛に満ちた凄く素敵な方で
そのせいか厨房の空気感もとても和やかなんです。

ステファーニャは相変わらず。
ズバズバ切り裂いていくみたいな感じで
良いバランスのリストランテです。

僕が任されたのはいきなりアンティパストのシェフ。
ええ!?
引継ぎは?

修行に行かれた方はわかると思うのですが
出来ないと言うと
コイツ出来ないんだと判断されるので
取り敢えず、

「わかった出来る。」

って言うんです。
で後からこんな感じかなぁって
やってきたので、今回も
何とかそれで乗り切りました。

やっと慣れてきた頃に
研修生の教育係を任されたのですが、
中々破天荒な女の子で、
全く言う通りにやってくれないんです。
こう盛り付けるんだよ。って言っても勝手にオリジナリティ入れてくるし、
この生地を丸く焼いてから筒状に丸めてって言っても、なんか分からなものが出来上がってるし、
もう良いからって、ウスイエンドウの薄皮を剥いといてって言ったらウスイエンドウの形が無くなってるし、
新しい職場でまさかのウエイトトレーニングを強いられて一杯一杯になった僕は

「なにしとんねん!」

って関西弁で怒鳴っちゃいました。
そしたらスタッフの皆んなから非難轟々。
女の子に怒ったらダメ
お前は最低なやつだ。

えっ確かにそうですが、そこ?
人としては程度の低い事をしたと思いますが、
職人としてはそこまで言われる程のこと?

未熟な感情の若い僕は、周りの反応を受け入れる事が出来ないまま。悶々としていると

カルネのシェフのディーノが
休み時間に僕を公園に誘ってきました。

「ケイスケ、俺はお前の気持ちは良くわかる。
お前の仕事は早いし、気も効く
あんな娘に振り回された本当に大変だと思う。
だけど、リストランテって人を幸せにする所だろ。」

ディーノ!
何これ!映画のワンシーン!?
心に刺さりました。

ディナーの営業の前に彼女に謝って
色々話しました。
そしたら、めっちゃ出来る娘になってまして
アンティ出し終えた後にハイタッチ。

青春ドラマですね。

それから、ペーシェ(魚)と臨時でプリモとドルチェのシェフを経験させて頂いていよいよ帰国のタイムリミットがやってきました。
期限つきでディボ ディバから出さしていただいていたのです。

そんな折にステファーニャからこんな話がありました。

「アイモ エ ナディアのイスラエル店の話があるんだけど、そこでやらない?」

え?
あの西沢シェフとの約束があるので、難しいです。と言うと

「貴方は西沢のお店にずっといなかったんだから、西沢は貴方を必要としてないわ。
だから大丈夫じゃない?」

大丈夫、なのかな。
イヤイヤ、そもそも別にイスラエル行きたいわけじゃ無いし、
何だったらテロとかも怖いから良いですと
丁寧にお断りをして

日本に帰りました。

多くの人と出逢い多くの事を学んだイタリアでした。
もちろん嫌な事も有りましたが、
それを超える良い事も盛り沢山でした。

素晴らしい国イタリア!
Forza! Italia!!
#andr àtuttobene

今のイタリアの事を考えると本当に居た堪れません。
何か出来ないかと思い
僕の記憶の中にあるポジティブなイタリアを書き下ろしてみました。

なにぶん素人なので長文乱文で申し訳ありませんでした。
お付き合い本当にありがとうございます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?