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11_ミトコンドリアの量が細胞の生死を決める

ミトコンドリアは高校の生物の教科書に出てくるので、多くの人は目にしているはずですが、たいていの人は俵状の虫のようなものとしか記憶していないと思います。
しかしこの虫のようなものが、実は生命のカギを握る重要なものなのです。

ミトコンドリアの量は歳とともに減少する

人間が歳をとると、ミトコンドリアも年々老化して、アクティブなミトコンドリアは減少していきます。

図1 年齢とともにミトコンドリアは減少する

ミトコンドリアは、外の好気性細菌が取り込まれて、エネルギーをつくる小器官として進化したものですが、激務のために老化しやすいのです。

Lilac01-EVはミトコンドリアの量を2倍にする

図2はヒトの線維芽細胞を老化させて、Lilac01-EVをかけたときの変化を表しています。線維芽細胞とは、皮膚の下にあるコラーゲンなどをつくる細胞です。

図2 線維芽細胞にLilac01-EVをかけたときの変化

線維芽細胞は老化すると丸くなります(図2左)。これにLilac01-EVをかけると元の細長い形に戻り、面積が約2倍になりました(図2右)。赤い色の面積がミトコンドリアの量を表しており、Lilac01-EVをかけることで2倍になることがわかりました。また赤い色の濃さは、ミトコンドリア膜電位の強さを表しており、赤い色の濃さについては変化がなく、ミトコンドリア膜電位は変化していないことがわかりました。

図2では、本当にLilac01-EVがミトコンドリアに届いているかわかりませんので、次の実験を行いました。

図3は、図2右の状態の線維芽細胞の内部(下から2.5μm)の写真です。ひも状のオレンジ色に光っているものがミトコンドリアで、丸く黒く抜けているところが細胞核です。

図3 Lilac01-EVをかけたときの線維芽細胞の内部

図3の写真は、生きた細胞に振りかけると、Lilac01-EVは細胞の中に入って、ミトコンドリアに作用することがわかりました。
このような結果から、Lilac01-EVはミトコンドリアの量を増やすことがわかりました。

図4 線維芽細胞にLilac01-EVをかけると、ミトコンドリアが増える

膜電位を必要以上に上げないことが大事

この実験では、ミトコンドリア膜電位を上げないという結果が得られましたが、これは何を意味するのでしょうか。

ミトコンドリア膜電位とは、ミトコンドリアにある二枚の膜の内膜にかかる電位のことです。ミトコンドリアは内膜にあるプロトンポンプで水素イオンをくみ上げて、内膜に電位ができます。この電位でATP合成酵素がATPをつくります。

膜電位は大きい方がエネルギーをたくさんつくれるように思いますが、膜電位が大きすぎると膜がこわれてしまいます。何しろ通常でも膜には20万ボルト/cmもの大きな電圧がかかるのです。

そこで膜は水素イオンを漏らして電圧を抑えるのです。その時にリーク電流が生じて、それが活性酸素をつくります。つまり膜電位は必要以上に上がりすぎると、かえって老化の原因になってしまいます。

Lilac01-EVはミトコンドリアの活性酸素を増やさずにミトコンドリアの量だけ増やしていることを示しています。

Lilac01-EVの膜成分はほとんどがカルジオリピンだった

私たちはLilac01-EVの膜成分の分析を大学と共同で進めました。そうするとLilac01-EVの膜成分はほとんどがカルジオリピン(CL)であることがわかりました。
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マクロファージの自爆を止めた理由は、Lilac01-EVの膜成分であるCLがミトコンドリアに届いて、ミトコンドリアの量を増強した可能性があります。

次回予定

12_ミトコンドリアは全身に「元気」と「炎症」を広めている
ミトコンドリは元は外の細菌で、たくさんのEVをつくるという性質を継承しています。ミトコンドリア由来のEVが、全身の健康と病気をコントロールしているというお話です。

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