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16_アレルギーの隠れた主役、好酸球

前回、アレルギーは寄生虫に対抗するために進化的に獲得した能力であることをご紹介しました。アレルギーは免疫の誤動作ではなく、「能力」なのです。その能力は「好酸球」というスペシャリストが関与しています。

好酸球の自爆死がアレルギーの原因

ほうきの柄は1本ですが、穂先の方は多数に分かれて複雑に入り組んでいます。炎症反応も多くの細胞や炎症物質が複雑怪奇に影響しあって、訳が分からないほどです。

アレルギーのそれぞれの作用は非常に複雑で、矛盾に満ちています。しかも原因なのか結果なのか非常に分かりにくいのです。これもアレルギー疾患が手ごわい理由の一つです。

穂先の話は奇々怪々で訳が分からないので、ここでは穂先の話は一切せずに、柄の部分だけの話をします。

ほうきの穂先は奇々怪々

花粉症などのアレルギーでは、好酸球という細胞がかかわっています。好酸球は寄生虫対策のために進化したスペシャリストです。

花粉症では好酸球の働きが重要です。花粉症は、好酸球性鼻炎や好酸球性結膜炎などが複合したもので、ほかにも好酸球性副鼻腔炎やアトピー性皮膚炎、喘息、好酸球性食道炎なども同じメカニズムです。

好酸球というのは、主に寄生虫などの大きな外敵に対する防御装置として、進化の過程で獲得したものです。アレルギーでは好酸球が主役で、対策のカギを握る細胞です。

マクロファージの自爆死と同じように、好酸球も自爆をします。ただし好酸球の自爆はマクロファージとは違って、自らのDNAを投網のように使って、外敵に投げつけるのです(細胞外トラップ)。しかも毒性の強いカチオン性タンパク質も含まれています。

アレルギーの主役、好酸球のエトーシス

カチオン性タンパク質とは正電荷を持ったタンパク質で、ネバネバしたDNAとともに負電荷の寄生虫の表面に張り付いて、ダメージを与えます。この好酸球の自爆はエトーシスと呼ばれています。

エトーシスでは破裂した好酸球は自爆死しますが、ミトコンドリアのDNAを放出する小さなエトーシスも行うことができます。これはmitoエトーシスと呼ばれ、死なずに何回でも放出することができます。

好酸球性鼻炎などのアレルギーでは、好酸球の自爆攻撃があまりにも強力であり、寄生虫の組織に穴をあけて死に至らしめることができるほどです。

寄生虫は大きいので的に当たりやすいですが、花粉となると小さいので、的を外して自分にあたる可能性が高くなります。アレルギーでは強力な炎症作用と、組織の修復にあたる抗炎症作用が同時並行で進みます。

好酸球の自爆を支配しているのはミトコンドリア

2022年にWeiらは、PM2.5粒子がヒトマクロファージのインフラマソームという自爆死(パイロトーシス)に特有のタンパク質を活性化して、IL-1βなどのサイトカインをつくることを報告しました。つまり自爆死が呼吸器疾患における炎症に関与していることを示す新たな証拠が示されたのです(Wei et al, 2022)。

自爆死の進行中に放出されるIL-1βなどサイトカインは、好酸球の動員に関連しています。このような経緯から自爆死対策が、炎症を制するための「1丁目1番地」と考えられるのです。

つまり、ほうきの柄についているのが、マクロファージの自爆死、続いて樹状細胞の自爆死と抗原提示、そして好酸球の自爆です。

花粉症は魔女とともにやってくる?

マクロファージは樹状細胞と同じように抗原提示を行いますが、マクロファージの抗原提示はミトコンドリアの状態によって変化するのです。ミトコンドリアは活性酸素を発生しますが、ミトコンドリアの活性酸素がマクロファージを自爆させ、その時に抗原提示が強くなります。

樹状細胞は強力な抗原提示細胞ですが、マクロファージの自爆死の影響を受けますし、ミトコンドリアの活性酸素の影響も受けます。好酸球もミトコンドリアの活性酸素が、エトーシスを起こす引き金になります。

ミトコンドリアは、適度な運動と休息によって健全に保たれます。しかし現代人はミトコンドリアを知らず知らずのうちに酷使する生活をしています。

例えば、風邪をひいたときに抗生物質を摂取する行為は、益がなく害のみがあります。風邪はウイルスが原因であり、抗生物質はウイルスには効果がないためです。それどころか、細菌出身のミトコンドリアにとって、ほとんどの抗生物質は毒なのです。

また、解熱剤や痛み止めなどの過剰摂取は、ミトコンドリアの機能不全や損傷を引き起こす可能性があります。またプロトンポンプ阻害剤(PPI)は広く使用されている薬剤ですが、PPI がミトコンドリアに悪影響を及ぼし、ミトコンドリアの機能にさまざまな悪影響を引き起こす可能性があります。

現代人はミトコンドリアのことをもっと知り、普段からミトコンドリアを増やす努力をしなければなりません。そのヒントになるのが、アーミッシュの人たちの生活です(「12_ミトコンドリアは全身に元気と炎症を広めている」で紹介)。

ミトコンドリアを簡単に増やす方法

しかし、もっと簡単にミトコンドリアを増やす方法があります。それがライラEVを摂取する方法です。

ライラEVはミトコンドリアの量を増やすことで、ミトコンドリアの活性酸素を減らすことができます。もう少し正確にいうと、ミトコンドリア膜電位を必要以上に上げずに、ミトコンドリアの含有量を増やすことによって、活性酸素の産生量を減らす効果があると考えられるのです。

またライラEVがマクロファージの自爆死を抑制することは、このnoteで何回も報告しています。それがライラEVが花粉症を抑えるメカニズムと考えられます。これまでに多くの方に試していただいていますが、ライラEVを摂取してから数時間で効き始めるようで、花粉が飛び始めてからで十分に間に合います。

次回の予定

17_自己免疫疾患は、好中球の自爆でおこる
今回は、好酸球が起こすアレルギーを取り上げましたが、次回は好中球が起こす自己免疫疾患です。自己免疫疾患は長期間炎症が続いて症状が重くなることが多く、年々罹患者が増加しています。自己免疫疾患のメカニズムとその原因について考察します。

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