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精神が壊れる一端

素敵な唐の椅子は、祖母がいつも座っていたもの。
「よく来たね」と言ってくれて、「待ってたよ」と言ってくれて、わたしの名を呼んでくれた、あの祖母が、いつもいつも座っていたもの。

曲線が美しいアンティーク風の箪笥は、わたしが高校生の頃、母が買ってくれたもの。
自分の部屋にあって、見ているだけでたのしくて。
1番上の段には、友達からの手紙を入れていた。

物に執着するということと、物に心の支えを見いだすことは、違う。
ましてや、愛すべき物ならば。

それらを「捨てないで」と言っている人間がいるのに、簡単に捨ててしまうなんていうことは、暴力でしかないのです。

わたしは、さめざめと泣いた。
母からそうした大事なものを奪い、わたしから大事なものを奪って、平気で生きている実弟のことを、どうやって討てばよいのか。

祖母のぬくもりを感じさせるものはもうないし、高校時代のわたしをしまっていた箪笥も、もうない。

これは、物への執着とは違う。

大事な物と、一緒に生きていきたいと思うだけなのに。

わたしは、深く傷ついて、さめざめと、おいおいと、泣くしかないのです。

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