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専門家も感服!キャバレー王・福富太郎の審美眼が築いたアートコレクション👑「観察力」と「想像力」でビジネスもアートも大成功✨

2021年4月24日に東京ステーションギャラリーで始まったのが、「コレクター福富太郎の眼 昭和のキャバレー王が愛した絵画」展。

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でもみなさん、キャバレー王のアートコレクション!と聞いてどんな印象を持たれますか?
私が内容を知らずにパッと感じてしまったのは「成金趣味でミーハーなんじゃないの?」という印象。なぜって、やっぱりキャバレーって水商売だし。。。
もう少し詳しく聞くと、15歳で銀座のキャバレー「モンテカルロ」のボーイとなり、たたき上げで26歳にして独立!

福富太郎(ふくとみ たろう/1931-2018)さんは、1964年の東京オリンピック景気を背景に、全国に44店舗にものぼるキャバレーを展開して、キャバレー王となったのです。

1.たたき上げのキャバレー王が独学で珠玉のアートコレクションを築くということ


凄腕の実業家であったのだろうなと思うのですが、どうして美術の専門家をも唸らせる名コレクションを築くことができたのかしら?と純粋な疑問が湧いてきました。
 明らかに、金に任せてとか、虚栄のために蒐集したものではない!
まず展覧会を一巡することでそれはわかります。
それに何より、並み居る美術の専門家の方々から心からの賞賛を得ているところがすごい👀そのことは、東京ステーションギャラリー館長の冨田章さんや今展監修の山下裕二さんのスピーチからもひしひしと伝わってきました。

なぜ福富さんは、独学(敢えてこの表現)でそのようなコレクションを築くことができたのか???

展覧会図録でも紹介されている数々の福富さんご自身の言葉から、それは彼一流の「観察力」と「想像力」があったのでは?!と思いました。そしてその両者はもしかしたら、キャバレー事業で所得番付全国1位まで上りつめた“商才”の大元と共通する「力」だったのかも!

チャーン!ここで、そう思わせてくれた作品&福富さんの言葉(今展図録より引用)をご紹介します。

1.岡田三郎助《あやめの衣》は顔なくして美人画

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岡田三郎助《あやめの衣》(写真左)

《あやめの衣》は、実は私が8年ほど勤めたポーラの美術館が所蔵するもので何度も鑑賞したことがあった作品。今回初めて、その前は福富さんがお持ちだったと知りました!
何度も見ていた作品なので、福富さんのユニークな「観察力」と「想像力」をひときわ感じました。

「印刷された画集では味わえぬ明るく澄んだ色調、健康な耽美感、そして豊なロマンが香っている」(今展図録147ページより)

というのが実物を初めて見た時の彼の感想。
私の「色っぽいな~」という単純な感想に比べてゆたか~(;^_^A

そして続くのは、驚くべき発見をさせてくれた彼の言葉!

「顔なくして美人画?顔が描かれていないから、見るひとにかえっていろいろな想像をさせてくれる。あこがれの美女、歴史上の美女もいれば(。。。中略。。。)もっと手近に恋人やカミさんを思い起させてくれる。心にくい美人画である。(今展図録148ページより)

衝撃的!私ったら、最初見た時から「美人画」だ!と思い込んでそれ以上追求していなかった。。。岡田三郎助の傑作として、美術館にあるのだから、当然そうだと思っていたのです。でも、、、確かに後ろを向いているから顔は見えていないのですね!それを疑問にも思わず、すっとばして「美人」だと勝手に思い込んでいた~💦

そこのところ、福富さんは、まず「顔がない」ということをじっくり観察して、そこから、顔がないことによっていろいろな美人を想像して、それで「心にくい美人画」という結論に達している✨このステキな展開に感動~!

2. 寺崎廣業《母子》の芙蓉は。。。

初めて聞いた画家で、絵も地味なのですが、福富さんの解釈にジ~ン!

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廣業の聖母は厳格な姑の気に入られず彼が腹にいるとき離縁され実家で産んだ。後妻を迎えた父に引き取られたがその後妻は何人か変わった。廣業は乳母の乳を飲み厳格な祖母に育てられた。生母への慕情が芙蓉のぽっかり咲いた花と共に香ってくる絵である。(今展図録58ページより)

画家の寂しい生い立ちから彼の心情に想像を膨らませ、その心が目の前の絵画の芙蓉に表現されていると感じるとは!!ポエムのような観察力と想像力ですね✨

3. 北野恒富《道行》は心中ものだけどホット!

こちらは今展でも目玉作品として展示されている大きな屏風。
妖しげな雰囲気の男女ですよね。それもそのはず、心中へ向かうところなのです。

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悲劇的であの世の空気感充満の作品ではありますが、ある意味2人の世界に浸って、ナルシスティックな多幸感すら感じるな~と思っていた絵です。
その根拠は自分では見つけられなかったのですが、福富さんの言葉の中にありました!

男は手に数珠を持ち、その手に女が手を絡ませる。指先に淡く紅がさされてそこだけ温かい血が通う。生身のぬくもりが伝わってくる。(今展図録100ページより)

指先の紅!!顔は青白く、上目も半分あの世だけど。。。つないでいる手には、情熱がある。「ここに私が感じたナルシスティックな多幸感があったのかな~」と、福富さんに説明していただいたような気持ちでした。

まだまだたくさんあるのですが、こんな風に、彼の「観察力」と「想像力」が一つ一つの作品をコレクションする時に、そのつど展開されたのでしょうね。

そして、この「観察力」と「想像力」が、絶対に欲しい名品に出会ったときに破格の安値で手に入れる駆け引きにも生きてくる!(というエピソードもいろいろあるようです)。そしてこれはキャバレー事業にも活躍した能力なのではないかな~と一人でやたら納得!

みなさん、どう思われますか?
ぜひ展覧会にいらっしゃって、続きの考察をお願いします!!!

【展覧会概要】
展覧会「コレクター福富太郎の眼 昭和のキャバレー王が愛した絵画」
会期:2021年4月24日(土)〜6月27日(日)
会場:東京ステーションギャラリー
住所:東京都千代田区丸の内1-9-1
休館日:月曜日
※6月1日(火)から閉幕までは無休
開館時間:10:00〜18:00(入館は閉館30分前まで)
※金曜日の夜間開館は当面中止
入館料:一般 1,200円、高校・大学生 1,000円、中学生以下 無料
※障がい者手帳などの持参者は100円引き(介添者1名は無料)
※開催内容が変更となる場合あり

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