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秘密基地、持っていますか?

四畳半という無限大の秘密基地を僕が手に入れたのは中学生の頃でした。
二階に上がる階段の脇のところにある部屋。
確かそれまでは物置のように使ったか、両親が何かに使っていたスペースだったと思うんですが、うーん…忘れた。なんかハリーポッターみたい。
ずっと自分の部屋が欲しいとねだってもなかなかその願いを聞き入れられず(今考えると一人にさせたら危ないことでもしかねないと思われていたのかもしれない)、その時すでに部屋を持っていた友達もいて「みんな持ってるよ」の最終兵器も発射したが全然効果はなく(もともとそれが効く親ではなかった)、それまで寝室は両親と同じで、宿題とかも全部茶の間でやっていました。(いや部屋を持ってからも勉強はしてなかったかも)

ある時僕の要請と部屋が空くタイミングが丁度よかったのか、なんとかそのスペースに潜り込むことに成功します。
それからは漫画や小説を読みふけり、好きなバンドのDVDや映画を学校のある朝まで観明かし、今の引きこもっての制作作業が好きな性格を作り出したのはこの頃だと言っても過言ではないでしょう。
だからこの時部屋をもらっていなければ今やきっと渋谷の街を闊歩する今時の若者になっていたかもしれません。(黙れ)



そう言えば中学生になって部屋をもらうまではよくダンボールで部屋を作っていました。
今考えたらよくあんなにダンボールがあったなと思います(笑)
木材ではなくダンボールで
ノコギリや釘やネジの代わりに、ハサミやガムテープやカッターで。
ドアノブは割り箸を貼り付けて、テレビはないけどストローで屋根にアンテナを作って、家の中や縁側の庭、玄関の外の大きいスペースに僕だけの基地を幾度も作っていました。

本物の部屋と違って吹けば飛ぶし濡れたら崩れてしまうけど、僕にとっては本物も偽物もなく、紛れもなく自分だけの秘密基地でした。
小学生の頃は拾った木の棒を携えて、痛い思いをしても自転車で外を駆け回る活発な少年ではあったけど、もともと自分の世界に引きこもって何かをしたいという性質を持っていたのか、部屋を持たずプライベートなんていうものが存在しなかった家族で過ごしていたことの反動でなのか。
囲って屋根を乗せただけのダンボールの中にお菓子やおもちゃを持ち込んでいるだけで楽しかったし、それを改造したり、時には友達を家に呼んで一緒に作るのも楽しかった。



時は過ぎ自分の部屋を持ち、今はずっと一人暮らしで過ごしていますが、僕は当時の秘密基地に代わるものを今も持っていることに気がつきました。
それは部屋の中に作った「作業スペース」です。
この文章を書いているのもそう、絵を描いたり曲を書くのもそう。
勉強したり本を読んだり、そのままいつも寝入ってしまうのもそう。
全部このスペースから生まれ出ています。(寝入るは生み出してないか)
この場所は他の生活スペースとは比べ物にならないほどに、ホームセンターやらで買い集めた材料や工具家具を使い作業しやすい空間を作るために日々改造しています。
参考になる資料やよく読む本はすぐ手の届くところにあって
文房具も持ち歩きのものと区別して大量に置いてあります。
デスクランプはたくさんお店を見て回って選んだ自慢の品です。
先日はやっと机の高さに合った椅子を見つけて買ってきて
なぜか興奮し過ぎて椅子を設置したところを写真で撮るという意味のない行動をとってしまうくらいにワクワクしました。


多分僕にとって今の作業スペースも当時のダンボール基地も、どっちもずっと自分の世界を誰になんと思われるかなんて気にせず生み出して表現できる異空間なんだと思います。
やっぱり僕は歌を歌っても絵を誰かに見せても、自分のわかってる価値以上にその人の評価が気になってしまうことがまだ多いから。
そんなこと気にしなくてもいいと自分に言い聞かせてもなかなかできないから。
ただ自分が自分であることができるように、なんの波風も立たず穏やかにいられるように、そのために必要な場所なんだと思います。


昨今、個人で利用できる貸し出しスペースがどんどんできたり、飲食店でも一人利用の個室ができたりと一人になれる時間を必要とする人が増えてきました。
みんな自分だけの秘密基地を求めているのかもしれません。
あなたは持っていますか?

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