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吉隠の里に行って来ました

奈良の桜井市、吉隠 (よなばり) の里は、
万葉集にある穂積皇子 (ほづみのみこ) の歌で有名な場所であります。

降る雪は あはにな降りそ 吉隠の 猪養の岡の 寒からまくに
( 降る雪は、そんなに多く降らないでくれ 吉隠の猪養〔いかい〕の岡が寒いだろうから )  巻2-203               

穂積皇子は、高市皇子 (たけちのみこ) の妃とされる但馬皇女 (たじまのひめみこ) と恋仲になり、
708年に亡くなった但馬皇女が葬られた、吉隠の猪養の岡を偲んで
この歌を詠みました。

奈良を生涯のモチーフとした写真家の入江泰吉氏が、
この歌をイメージした雪の吉隠の名作を撮っています。

激しく吹雪が舞う、三日月状の何段もの棚田を俯瞰した印象的な光景です。

近くの榛原に雪が降ったとのツイートを見て、
私もこの棚田の雪が見たくて吉隠へ向かったのでした。

実は、「吉隠」の所在地は明らかにされていますが、
但馬皇女が葬られた「猪養の岡」の場所は明らかではありません。

入江泰吉氏の写真も「吉隠」で撮られたという点では、万葉の歌と関連性が有りますが、
写真の「棚田」自体は、それ自体名高いものではあるものの、
但馬皇女の「猪養の岡」との直接の関連が無い、ということになります。

🔸

近鉄桜井駅北口前からのコミュニティーバス (※1) に乗り、
「吉隠」バス停で降りるまでに、
初めは数人いた乗客は次第に減って、私だけになっていました。

実は、そのバス路線は東西を走る近鉄線と大体北側に並行しており、
帰りの榛原駅からの近鉄電車の窓越しでも、「吉隠の里」が意外と近くに見えることが後でわかりました。(※2) 

地図をかなり細かく見て、有名な「棚田」にたどり着いたのですが、
私以外誰も人がいませんでした。
棚田は評判に違わず、とても美しいフォルムながらも、
雪は降った形跡もありません。

穂積皇子の願いの勝ち、と言ったところでしょうか。



(随時更新)


※1 >
近鉄桜井駅北口前からのコミュニティーバスで吉隠に着く、とネットで調べてたのですが、
これまで乗ってきた「コミュニティーバス」のイメージと違って、
駅北口を出て、左のほうにあるバス乗り場に止まっていた、外見が普通の路線バスと同じ車種がそれで、
路線バスとの違いと言えば、前面に「コミュニティーバス」と書かれた小さなプレートが付いていることくらいでした。

ここ以外では、
奈良からすこし京都に入った位置にあるJR加茂駅から海住山寺へのコミュニティーバスは、ワンボックスカー程度の大きさで、
ハイカー風の団体客と一緒に乗った時、
運転手さんは、「コミュニティーバスなので、混雑時は地元の人を優先します」と言っていました。

〔「歩いても行ける距離なので」とのこと。
ただ、私も加茂駅と (木津川にかかる橋を渡って) 恭仁宮跡・山城国分寺跡とをつなぐ道は歩いた (と言うより、歩くはめになった) ことがありますが、
そこに限らず木津川の橋は高度が有って、歩くと怖い。

[ 📷 木津川 ]

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東大寺大仏殿の木材を運んだ木津川に相応しい壮大さは感じます。

東の笠置駅近くのキャンプ場のあたりまで来ると、まだマシな高さですが。

加茂駅近くではありませんが蟹満寺へ西から行った時の橋など、欄干が低くて、車はすぐ横をビュンビュンすり抜けて、命の危険さえ感じましたよ。〕

近鉄大和上市駅と宮滝遺跡間の行き来で何回か乗ったコミュニティーバスは、普通の路線バスに形状は近いものでしたが。


※2 >
奈良の方から室生寺などへ行く場合、よく使われる電車ですが、
そこからこんな近くに「万葉の吉隠の里」があるとは知りませんでした。
もっと山の方へ入ったところかと思っていたのです。

(吉隠から榛原駅への歩きのルートは、
特に後半が車道沿いを延々と歩く、
史跡巡りでは有りがちな展開で決してお薦めできませんが、
帰りはバスが無い時間になっていたので歩くしかありませんでした。)

しかし、電車はしょっちゅう走るものの、
この吉隠の近くに止まるわけではないので、バスに頼ったわけです。

帰りにわかったのですが、
(私が事前に調べていたのとは、すこし違って)
バス停から「西」に行ったところに、
東西の車道から北に位置する棚田への登り道がありました。
(それもバス停の位置によって、また変化するかもしれませんが。)

私は勘違いして、トラックなどが続々と走り抜ける東西の車道を「東」へしばらく歩き、
それでは北側の棚田へ登る道が無く、
やっと入る道が有ったかと思うと、
「棚田」よりは東に位置する、万葉歌碑のある校庭に来ていました。

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🔍 入江泰吉記念 奈良市写真美術館公式ページ 「『万葉大和路』展」(2020年) 
 上から3番目の写真が吉隠の里の棚田

入江泰吉氏の写真は画面の幾つものファクターを、その瞬間に居合わせる為に
どうリサーチしているのか、いつも不思議に感じます。

私が写真を撮っていても、また、他の方々の大和路の写真を見ても
入江泰吉氏ほどに美しい条件が揃わないんですよね。


📖 ブログ内入江泰吉関連記事


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(参考)

📷 海住山寺 五重塔 (国宝)

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📷 宮滝遺跡

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📷 宮滝 万葉の故地「激 (たぎ) つ河内」の辺り

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📷 宮滝 万葉の故地「夢のわだ」

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(20年9月11月12月21年8月更新)





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