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File.01 竹内遥香さん(ハープ奏者)インタビュー

長野県内では数少ないプロハープ奏者の一人である竹内さん。ハープは戦友と語る竹内さんが、普段どんな思いでハープと向き合っているのかお話しを伺いました。


―― 現在の活動状況を教えてください。

主に演奏活動と教える活動をしています。
演奏活動には3つのタイプがあり、1つ目は音楽事務所からお話をいただいて行う仕事でホテルのロビーコンサートやブライダルでの演奏などをやらせていただいています。2つ目は個人で引き受ける仕事ということでオーケストラや吹奏楽の賛助出演、会社や自治体でのイベント演奏、文化施設から依頼を受けてアウトリーチ活動やコンサートなども行っています。3つ目は自主企画ということで、自分たちでコンサートを企画してホールで演奏しています。この3つが演奏活動の柱になっているのですが、大きな演奏会ということになると年間20本くらいに出演させていただいています。
教える活動は、楽器店などで音大受験生や趣味で習われている方に教えたり、中高生の吹奏楽コンクールのシーズンになると、ハープを使用する学校から依頼を受けて学生さんたちに教えるということもあります。
教えるうえでは、演奏者の気持ちが分からないといけないと考えているので、自分が現役で演奏していないと教えられないこともあります。なので、教えるために細くても良いから演奏活動は続けなければいけないと思っています。また逆に、教えることで生徒さんから気付かせてもらうことや、演奏会を生徒さんに聞きに来てもらうことでモチベーションに繋がる部分もありますので、演奏活動と教える事の両方が私の活動の大切な軸になっています。

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―― ハープを始めたきっかけを教えてください。

小さいときはピアノやお琴を習っていて音楽には触れていたんです。ただ、高校に入るタイミングで、たまたまテレビでフランスのハープ奏者さんが、一人でグランドハープを演奏している番組を見かけて「あ、やってみたい」と、そこでピーンとくるものがあって軽い気持ちで始めてしまいました(笑)。
実際に弾いてみたらすごく楽しかったのですが、メジャーな楽器ではないので、県内に先生がいるのかも分からず、楽器もすごく高価で、始めるまでが大変でした。始めた後も、自宅のある東御市から先生がいる長野市まで通わなければならず苦労しました。

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―― ハープの魅力を教えてください。

よく演奏者の皆さんが言われるのですが、弾いていてその音色にまず自分自身が癒されるんです。誰が弾いても素敵な音が出ることも魅力の一つですね。例えば養護学校などへ行って生徒さんに演奏体験をしてもらっているのですが、ちょっと触っただけで音色が響くので喜んでもらえるんです。楽器の見た目も綺麗なので「なかなか見ない楽器だから生で見られて良かった」なんて言われると嬉しいですね。ただ、ハープは大きくて運ぶのが大変なんです。都会だとハープを運ぶ専用の業者さんがいたりしますが、長野だと簡単に頼める環境にないので、自分の車に積んで移動しています。
また、楽器の機能的な観点からいえば、楽器によっては必ず伴奏がいた方がよい物もある中で、ハープは一人でもコンサートができますし、オーケストラや吹奏楽に入ることもできるので、それが楽しみでもありますね。

―― 演奏するうえで大切にしていることはありますか?

ハープ奏者の中には力強く演奏する方がいたり、色んなタイプの方がいらっしゃいます。自分で言うのも変ですが、私はどちらかというと癒し系というか、優しい音で人の心に寄り添える演奏をしたいと思っています。演奏を聞いた方にほっとしてもらえるというか、安心してもらえるような演奏を心掛けています。
ハープは一見優雅な楽器に思われがちですが、ホントはペダルを踏んで足をバタバタさせているんです。ただ、それを感じさせずにいかに優雅に見せられるかを意識しながら演奏をしています。普段見られないような手の動きや楽器の動かし方など、演奏している姿を全て見られているので、そこもハープならではの見せ場かなと思っています。

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―― 長野県での活動はいつ頃から考えていたのですか?

大学時代の4年間は神奈川県で過ごしました。在学しながらブライダルやオーケストラの仕事はしていたのですが、仕事をしてみて都会の空気が自分に合わないなと思ったのが一つのきっかけですね。あとは地元が好きなので帰ってきたいという思いもありました。大学を卒業してすぐに帰ってきたので、長野県で活動を始めて今年で6年目になりました。

―― nextに登録したきっかけを教えてください。

ホクト文化ホールで開催された「長野県新人演奏会」と安曇野市で開催された「新進演奏家オーディション」に出演させていただいたことで推薦をいただき、長野に帰ってきたばかりでどうやって音楽の仕事を作っていいか分からない状況で、少しでも繋がりを作りたくてnextに登録をしました。

―― nextに登録して良かったことはありますか?

これまでにnextを通じて9件仕事をいただきました。県内だけでなく東京の方からも依頼いただくなど、実際の仕事に繋がっているので凄くありがたいです。
また、自分では判断できかねるような案件も、一度next担当者の方が目を通してくれているので、問い合わせが来たときに安心して受けています。

―― 今後nextに期待することはどんなことですか?

東京の方から仕事をいただいたときに、県が関わって運営しているサイトに掲載されているので信頼して依頼しましたと言われたことがあります。私なりに人間性というか、しっかりコミュニケーションが取れてこの人は仕事のやり取りができる人だという信頼をしてもらったという理解をしましたが、現在のサイト上から演奏者の個性まで分かるのは難しいと思います。だから例えばサイト上にこのエリアで活動していますとか、学校で教えていますとか、子どもを相手にするのが好きですとか、ジャズもできますよとか、演奏者のアピールポイントが掲載されると複数いる楽器でも演奏者の個性が少しでも見えてきて、選ぶ方も人選しやすくなるのではないかなと思いました。
またコロナ禍の現状で言えば、文化庁などから支援制度が沢山出ているのですが、その情報が全ての演奏者に届いているかというとなかなかそういう状況にないと思います。なので、そういう情報をnextでまとめてお伝えいただけると大変助かるなと感じました。
あとは例えば交流会とかnext登録者による演奏会など、登録者同士の横の繋がりが作れると嬉しいですね。

―― 今後の目標を教えてください。

この5年間県内各地を演奏で回らせていただく中で、地域や環境によって音楽の届き方が違っているということに気付かされました。例えば、小さなお子さんが色んな楽器に触れている地域があれば、生演奏なんて聞いたことないとおっしゃるお年寄りがいる地域もありました。ですので、演奏家としてより上を目指して立派な演奏会に出演したいという気持ちももちろんありますが、普段生演奏をあまり聞けないような地域や、小さなお子さんからご年配の方々まで、県内の隅々まで音楽を届けたいという思いがあります。そのために、今までは企画していただいたものに演奏に行くという形の仕事が多かったですが、これからは自分が企画する演奏会に力を入れていきたいと思っています。
あとは自分もハープを始めるにあたって苦労がありましたので、自分の下の世代が演奏できる場を沢山作れたら良いなという思いもありますね。

竹内遥香(たけうちはるか)/ハープ奏者
東御市出身、東御市在住。グランドハープを15歳より始める。上田高校卒業。2016年、昭和音楽大学器楽学科弦管打楽器コース卒業。これまでにハープを原口久子、山崎祐介の各氏に師事。長野県若手芸術家支援事業「next」登録アーティスト。

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(取材:「信州art walk repo」取材部 香山羊一・町田弘行・藤澤智徳)

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