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I am I, You are you

 君はいつも小さな天球儀を手にして、それを手の平の上で弄んでいる。それにはきっと大いなる未知の意味が隠されているのだろうが、その真実を知ることは僕には不可能だった。捨て去れない利己心や虚栄心が心の中にはびこって、イマジネイションの翼で自由自在に宇宙を飛翔することを阻害するからだ。しかも僕は基本的に独断と偏見に満ちているタイプで、それはちょっとやそっとじゃ変えようがない。そんな風にしてすべてが何かの口実となるのをよそに、君はただ一人ひたすらに不思議な天球儀と向き合っている。笑みを浮かべるでもなく、涙を流すでもなく。僕の見ている限り、君の感情は何一つ動いている様子はない。まるで平等の破壊をし尽くす遠心力に触れたみたいだ。原理と違う原理が何もかもを統治し、現実的な力でもって少数決を強いているかのよう。いずれにしろ僕には直接的に関係のない話だ。可能性の限界については重々知っているつもりだし、諸権利の行使のやり方だってある程度はわかっている。自己自身の仲裁者になるのはたやすいことではないが、それを一応前途の目標としてはいる。とにもかくにも自分だけの道を自分一人で進んでいくより他はない。だって何より僕は天球儀を持っていないのだから。


#創作大賞2024
#オールカテゴリ部門


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