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虎の翼に向かい風 はて?の風はアゲンスト 物語の3分の1を総括だ その2

今日のOP : 映画「ドリーム」予告


皆様、おはこんばんちは。

今回は、
・梅子さんがなぜ高等試験直前に離婚届を突き付けられたのか
・よねさんはいつか自分らしく生きられるのか
について考えてみました。

冒頭のイラストは、
前回と同じイラストレーター kei02 さんの作品を選ばせていただきました。
なんとなく、男装のよねさんの孤独がにじみ出ているイラストかな、
と思って選びました。

今日のOP

今日のOPは、
ジェンダー&人種の偏見に立ち向かった映画「ドリーム」の予告です。
原題は"Hidden Figures".
隠された人々、すなわち日陰の人々、というところでしょうか。
虎に翼に触発されてご紹介する、
ジェンダー問題を正面から取り扱うおすすめ映画の第2弾です。

本当は、主題歌PVを載せたかったのですが見つからず、
映画の雰囲気を感じていただくのも良いか、と
映画の予告をあえて貼り付けました。

第1弾の映画「プリティ・リーグ」は、
徴兵で欠員になった男性メジャーリーグの代用の
女子プロ野球リーグが舞台でした。
リーグ全体で盛り上げてその存在価値を認めさせるために、
いわば「サービスのプロに如何に徹するか」が、課題でした。

舞台は、NASA

今回の「ドリーム」は、宇宙航空技術開発の最先端、NASAが舞台で、
3人の黒人ヒロインの武器はズバリ、「知性」です。
頭脳と、先見の明と、粘り強い交渉とで、
「ガラスの天井」を突き抜け、白人の偏見を打破します。

ガラスの靴を履かずに、裸足で泥の中でもがき苦しんで成功を掴み取った、
"実力行使版"シンデレラ・ストーリーを下の枠内にまとめました。

理工系大学出身者としてはついつい力が入り、
とてつもなく長い説明になってしまいました。
でもまあ、理工系の分野で活躍された実在女性について語るのは、
楽しいものです。

ご多忙な方は、スキップしてください。
でも、本当に見ごたえがある映画なんですよ。

自動車に相乗りして職場に通うほど仲の良い、3人の黒人女性が主役です。3人は、NASAのマーキュリー計画を下支えする、日陰の労働者。
性別および肌の色という、2重の差別を受けています。

一人目のキャサリンは、数学の天才。
才能を買われて宇宙研究本部に、
初の女性黒人スタッフとして大抜擢される。

しかし、抜擢されたというよりは、職場にただ放り込まれた、という状態。
共用のコーヒーポットは、人種によって分けられている。
建屋には黒人女性用のトイレが無く、
片道800mも離れた黒人棟の女性用トイレへと、
豪雨の中でも、ダッシュで通わなければならない。
書類をトイレに持ち込み、用を足しながら計算をこなすほどの激務。
何より悔しいのは、自分を平然と蔑む白人同僚達の視線だ。

彼女に渡される書類は、彼女が信用できないから、という理由で、
機密を守るためにあちこち黒く塗りつぶされている。
こんなので、まともに仕事ができるか!!

黒塗りの部分を光に透かして解読し、黒板の数値と一致すると知るや、
彼女は黒板でパパっと問題を解いてしまう。
同僚が長い間解けなかったのに、彼女には秒殺ならぬ、分殺だった。
優秀さを認められ、黒塗りは無くなった。
 
優秀な彼女がたびたび席を長時間外すことを訝しんだ
上司ハリソンは、ようやく彼女の苦境を理解する。
そして、"黒人女性用"というNASA中のトイレの標識を工具で叩き壊し、
トイレの色は全部一緒だろ、白も黒もあるか、と
周囲に「にらみ」を利かせた。
コーヒーポットも、本当の意味で「共用化」された。

二人目のドロシーは、黒人女性の計算係を束ねているが、
人種のせいで管理職に付けないことに苛立ちを感じていた。
正当な待遇を要求しても、
上司の白人女性ミッチェルには、鼻であしらわれる始末。

ある晩、新たに導入された大型コンピュータの設置部屋に
彼女はこっそり忍び込み、どういう代物かを把握する。
そして、いずれ黒人はお払い箱になる、と同僚に訴えた。

ドロシーは、自主的にプログラミング言語FORTRANの習得を開始する。
FORTRANの指南書は、図書館からパクったものだ。
なにせ、「ここは白人用の図書館よ」と注意され、ムカついたのだ。

いざコンピュータが導入されても、
うまく稼働してくれなくて職員は皆、難儀している。
ドロシーは時間をかけて動作原理を学び、
遂にコンピュータを、勝手に稼働させてしまう。
職員たちは、コンピュータが稼働していることに驚き、
ドロシーはおとがめなし。

それどころか、天敵のミッチェルから、
大型コンピュータの運用係を任されたと通告される一方、
不要になった同僚の首を切るようにも言われる。

ドロシーは、同僚の雇用を守るのでなければ、
その職を引き受けないと撥ねつけ、ミッチェルを黙らせる。
同僚の黒人女性を引き連れて颯爽とコンピュータ室に乗り込む姿は、
とても誇らしげだ。
白人女性職員が黒人女性に教えを請うという逆転現象も、痛快だ。

三人目のメアリーは、白人向けの大学の学位が無いので、
技術者にはなれないと、ミッチェルから告げられる。
彼女はついに決意し、許可を求めて裁判所に訴えた。
私に許可を与えれば、あなたの名前は歴史に残りますよ、と判事を説得。
彼女の熱意は判事を動かし、夜間講座に限って受講が認められた。

キャサリンは自らの才能と努力で認められ、
発言禁止という理不尽な制約はあるものの、
会議に参加することを許される。
彼女がその場で計算をこなす方が、効率的だと判断されたからだ。
彼女は難しい着水範囲の予測も楽々とこなし、実力を見せつける。

しかし、皮肉なことに、大型コンピュータが稼働を開始すると、
もう彼女の出番は無くなり、元の黒人棟に戻された。

マーキュリー・アトラス6号の打ち上げ直前に、
データの齟齬が発見された。
迅速かつ正確に検算する能力者として指名されたのが、キャサリン。
彼女を呼びに黒人棟にダッシュする元同僚の白人男性は、
彼女がトイレに行く度にどれほど消耗したかを、身をもって知る。

彼女の検算によって打ち上げの決行が決まり、
ご褒美として管制室で打ち上げを見守る栄誉を与えられた。

キャサリンはその後も、月面着陸やスペースシャトル計画を、
計算によって支えた。
ドロシーとメアリーはそれぞれ念願の、
初黒人女性管理職および初黒人女性航空技術者になる。

NASAのように先進的で個人の能力が問われる職場でも、
平然と人種・性差別が、かつては横行していたんですね。

白人ならば普通に努力していれば、エスカレーター式に昇進できる。
黒人女性はそれぞれ、
別格の天賦の才と、
チャンスを嗅ぎ分ける嗅覚と、
挫けずに交渉を続ける粘りと
を、必要に迫られて駆使しなければならなかった。
それだけやってようやく、手にした地位は白人と同等だった。

一本の映画に3人の物語が詰め込まれており、
とってもお得ですよ。

虎に翼との共通点

虎に翼でも、映画と同様に、
女子部は離れの別棟に教室が設けられていたし、
女性用トイレが足りずに、増設を直談判していましたね。

女性の社会進出において、インフラ整備は後手後手。
でも、現場で我慢しながら粘り強く必要性を訴えてきた先人のおかげで
今日の状況が実現されているわけです。
感謝。

余談

ちなみに私が在籍した某国立理工系大学のお話。

本館ですら、女子トイレは3階毎にしか設けられていなかった。
女子トイレが全く設けられていない棟もあった。
シャワー室の窓の鍵は、壊されていた(覗きのためである。)
体育は、男子と合同。何せ、女子は2~3%しかいなかったから。
男子寮はあっても、女子寮は無い。
無い無い尽くしなのである。

最近は、女子の比率が20%弱15%程度にまで上昇したそうだ。
ほぉーーーーーーーう。

総合大学や、私立大学だったら、もうちょっと違ったんだろうな。

それでは前回の続き、3分の1総括の第2弾、始まりまーす。
今回は、梅子さんとよねさんのターンです。

はて? 梅子の夫はモラル違反では?

虐げられる女の象徴、母性の固まり、梅子さん。

梅子さんは、3人息子の面倒を見ながら大学で法律を学ぶ、お母さん学生。
食欲旺盛な若人におにぎりを差し入れる、母性の人。

長男は帝大生、梅子は名律大生。
夫の徹男は民訴案件に精通しており、
大学の代理講義も難なくこなす、優秀な弁護士。

世間から見れば、子育てに目処がついた有閑な奥様が、
向上心を抱いてご主人と同じ学問を習得されようとしている、
誠にご立派な学術一家というところだろう。

世間ではご立派でも、代理講義では妻をけなして平気で笑いを取る徹男。
まごうことなきモラハラ体質の持ち主。
「徹男」と書いて、「もらはらおとこ」とでも読むのか?
(全国の徹男さん、ごめんなさい。)
長男も、蛙の子は蛙、母を見下す立派なモラハラ予備軍だ。

梅子女史は、取り返しのつかなくなる前にせめて
次男と三男だけでも救いたいと考えた。
そのために、離婚後の親権保有を目指して、法律を学ぶ。
怒りと諦めと執念と、やっぱり最終的には「母性」の人なのである。

梅子はしょっちゅう握り飯を配っているが、
米を大量に消費して、夫に叱られたりはしないのか?と
私は常々不安に思っていた。

今から考えると、級友に配ってた握り飯って、
徹男の稼いだ金を、腹いせに使ってやりたかったってことか?
普通の奥様ならブランド品や高級な着物でも買い漁って
散財に励むのだろう。
握り飯を配るところが、梅子さんの梅子さんたる所以で、
私の想像の中ですら、とことん真面目である。

あの握り飯大盤振る舞いは、ささやかな主婦の抵抗だったんだなぁ。
もちろん、喜んで美味しい美味しいと食べてくれる無邪気な笑顔が、
彼女を束の間でも、幸せにしてくれたんだろうけど。

徹男は、妻を大学に通わせる懐の深さを見せる一方、
お妾さん宅に入り浸り、とんと帰宅しないことは、周知の事実。
物笑いの種ではあるが、笑われるのは徹男ではなく、妻である梅子。
攻撃対象は弱者であるのが、この世の悲しい常なのだ。

突然の離婚届、その謎

弁護士になって、いつか夫に離婚を要求してやる、という決意を胸に
法律の勉強にいそしむ梅子。

しかし、この徹男なるモラハラ男、
あろうことか梅子の2度目の高等試験の直前に、離婚届を突き付ける。

子供は渡さない。俺は愛人と再婚する。

まるで何かの制裁を課すかのように、
長年の鬱憤を晴らすかのように、
嫌がらせする徹男。

昔の男の甲斐性って?

ところで筆者は、
昔の男の器量とか甲斐性とかいうものは、
いかに金銭的な面倒を見るかにかかっていると、耳にしたことがある。

お妾さんを囲っている男性が、事業で失敗したら、
まずお妾さんが一生食べていける分の金銭を優先的に渡し、
家族は後回しなのだそうだ。

それが、妾を囲うときの覚悟だとか。
妾と言う日陰の身に落とす代わりに、
金銭を生涯にわたって保証する、というわけだ。

一方、お妾さんを囲うからといって、
本妻をおろそかにしてはならないことは、
当時としては当然のモラルである。

本妻は本妻として、その地位を脅かしてはならない。
結婚は家同士を繋ぐ絆だったから、
おいそれと解消することが出来なかったのは、至極当前か。
仲人さんのご機嫌を損ねないためにも、婚姻の維持が穏当である。

それならば、本妻を追い出してお妾さんを迎え入れる徹男は、
世間から後ろ指差されまくるのではないだろうか?
例えばお妾さんに子供ができたとしても、
そのまま囲ってやれば良いだけのこと。
なんで離婚届を突き付ける必要があったのだろう?

世間の風評を非常に気にするタイプの男だと思う。
それなのに敢えて妻を追い出して、
お妾さんを迎え入れる理由がわからない。
第一、モラハラ男は相手を攻撃する一方、
自分の所有物として執着する傾向がある。
梅子を手放すのは、不自然だ。

架空の人物である梅子を合格させるわけにはいかないから、
取り敢えず徹男に罪を着せて退場させちゃえ、
という話の進行の都合だとしか、思えなかった。最初は。

でもモヤモヤするうちに、一つの可能性を考え付いた。
私の考察は、こうだ。

徹男が長年にわたって梅子を虐げてきた結果、
徹男が見下し、梅子が耐えるのが当たり前になっていった。
少なくとも、徹男の中では。
徹男は、梅子を煮ようが焼こうが、自分の勝手だと思い込んでいる。

梅子が法律を学ぶために大学に行くことを懇願してきたとき、
どうせ年増女の道楽、すぐに挫折するさ、
そうしたら笑ってやろう、
と高を括ったはずだ。

ところが、母性の梅子は子供のために、必死で努力する。
友にも恵まれ、同じ志を抱き、共に一つの目標を追いかける喜びを知る。

そんな梅子の様子が、面白くなかったんだろうな、徹男は。

当てつけに、本宅へは寄り付かないようにした。
でも、梅子は挫けない。
夫に媚びることもない。

講義の代理を頼まれたときも、
若い女の容姿に価値があると認められた判例をわざわざ題材にして、
お前のようなおばさんは無価値であることを、笑いの種にしてやった。

1回目の高等試験に落ちれば諦めるだろうと踏んでいたが、
その気配は無い。
このまま勉強を続けて下手に合格でもされたら、それこそ面倒の種だ。
この俺様と同格だという、生意気な態度を取られかねない。

だから、2回目の高等試験の直前に梅子の心をへし折って、
受験を断念させてやろう。
所詮、金を稼ぐ当てもない女だ、
必死で詫びを入れてくるに違いない。

梅子を叩きのめす最高のタイミングを待つ、モラハラ徹男。
高等試験直前に、あくまで「嫌がらせ」として、離婚届を突き付けた。
本当に離婚する気はない。
ただちょっと困らせてやれば、自分の立場を思い知るだろう、
くらいに考えていた。

でも、梅子は本気で徹男に愛想を尽かし、
失意の中、三男の光三郎を連れて家を出ていった。

私の妄想

これなら、当時の風潮とも矛盾しないし、
離婚届という切り札を切った理由にも、合点がいく。
そして、何故1回目ではなく、
2回目の高等試験の直前というタイミングだったのかも、説明がつく。

代理の講義の際に徹男が梅子を馬鹿にしたのは、
なんだかんだいって、梅子に関心があるから。
いじめっ子が好きな子をいじめるという、例の悪癖である。
モラハラ男の虐待と執着心、面倒臭い。

でもまあ、話の進行の都合上の、予定調和的な離婚届なんでしょうね。
実際のところは。

梅子さんのその後の予想

離婚届を突き付けた時、何故三男を梅子は連れ出せたのか?
家制度とモラハラ男の執着心とを考慮すると、不自然だ。
男子はみんな大庭家のもの、が当然の主張だろう。
国際情勢が戦争へと向かう中、戦死するかもしれない男子は、貴重だ。

その不自然さが今後の伏線になると考えると、
問題となるのは、長男と次男の生死。

徴兵または空襲で、両者ともに亡くなってはいまいか?
その場合、大庭家の存続が危うい。
必然的に、徹男の関心は、かつて放り棄てた三男に一極集中するであろう。

どうなる、梅子?
光三郎を守り切れるのか?

民法のまさに改正点が、窮地の梅子を救うのだろうか。
彼女の弁護人は誰だ?
やり手弁護士の徹男と喧嘩する気概の持ち主、となると、
対象は絞られる。

よねさんが生存していて試験に合格し、弁護を引き受けることができれば、
万々歳なのだが。

というわけで、よねさんに続く。

自分の予想でこんなに盛り上がって、どないすんのか。
きっと私の予想の斜め上をゆくストーリー展開が、待っているのだろう。

ところで、"大庭家"という単語を書く度に、
おーばけなんだっ、おーばけなんだっ、おーばけなんだっけっれっどっ」という、新オバケののQ太郎のOPが頭にこだまする。
懐かしいなあ。

はて? よねさんは本当は"か弱い"んだから、
肩ひじ張るのはお止しになれば?

危なっかしくて、見ていられないよ、よねさん

よねさんは、貧農の出身だ。
姉に続いて自分も身売りされるところを、
髪を短く切り、商品価値を下げて抵抗した。

それでも抗い切れないとなると、
優しかった姉を追って上京し、紹介されたカフェで働き始める。
「男装」が彼女のトレードマーク。
オンナを棄て、カフェの女給さんのアシストで食いつなぐ。

明日の希望のない、その日暮らしの生活。
そんな中、女郎の姉が置屋に取り分を
長年ちょろまかされていたことが発覚する。
身を汚して稼いだ金を、立場の弱さに付け込んで奪い取るなんて!
早く年季を明けさせて、自由にしてあげたい。

何とかして助けたいと、カフェの客に相談した。
弁護士であるその男は、見返りとしてカラダを差し出すよう、ほのめかす。

叩けばいくらでも埃の出る置屋の人間だ。
弁護士にちょっと釘を刺されたら、すぐにピンハネした金を返した。
弁護士は手数料を差っ引いた残りの金を渡しながら、
困りごとがあればまた相談しなさいと、意味ありげに耳元で囁いた。

弱者は結局、オンナをウリにするしかないのか・・・。
チカラの無い自分に腹が立って腹が立って、どうしようもないよねさん。

置屋は当然の成り行きで、自分たちに楯突いた姉を放り出した。
そもそも、そうなることがわかっていたから、
姉自身は打つ手なしで、途方に暮れていたのだ。

弁護士ならきっと何とかしてくれるだろうと藁をもすがる気持ちだったが、逆に姉を窮地に追い込んでしまった。
自分の見通しの甘さが、どうしても許せない。

手元には、姉に渡せなかった札ビラ。
新聞には、明律大学法学部の進学資格が得られる女子部の創設の記事。

もう誰にも頼るものか。
姉が女の魂を売って得た尊い尊いカネの一番の使い途を、今決めた。
私は、法律という武器を得て、誰にも頼らず生きるのだ。

孤独で、
過去の失敗を引きずって、
そんな自分を許すだけの強さや狡さが欠けていて、
攻撃的な毒舌で他人を牽制し、
男装が、方便ではなく、
他人を寄せ付けないための防具となるとともに、
自分のアイデンティティを日々、自分に思い知らせるための重い重い足枷になってしまった、
グラスハートの持ち主。

一言で括ると、「超不器用」。

視聴者を心配でプルプルさせちゃう存在、それが、よねさんだ。

教室のみんなでピクニックに出掛けた時、
如何にも小物キャラの小橋から、女の武器は料理だろ、と
法律を武器と信じるよねさんに対して言わせるなんて。
本当に上手い脚本だなぁ、と感心する。

寅子は法律を、人を守る布団や盾だと考えていて、
よねさんとは良い対比になっている。
キャラが立ってるなあ。

よねさんの頑なさは、一生モノなのか?

よねさんの毒舌は、ハリネズミの棘の如く他者を遠ざけようとするが、
4人もの良いお友達に恵まれて、本当に安堵した。
しかし、初めに比べれば少し角が取れたけど、まだまだ毒舌は健在。
彼女の心の傷は、未だ癒えざる。
幸せになったお姉さんと再会できなきゃ、自分を許せないかい?

カフェの女給は当時は、男に媚を売って生計を立てる下賤な職業。
よねさん姉妹とまではいかなくても、
色々ワケありの女性が働いていたのだろう。
そんな様々な女性が彼女の心にどう映っていたかが、
劇中で描写されていないのは、残念だ。

放浪記で有名な林芙美子さんは、カフェで女給をしていた。
心は純粋な女給たちが男に食い物にされるのを目撃して、
心を痛め、お互い慰め合っていた。
虐げられた者ほど、他人に優しくなる。

マスターの増野がよねさんの境遇を知っているくらいだから、
カフェのお姉さま方は、きっと郷里の妹と重ねて、
よねさんのことを随分と可愛がってくれただろう。

そんな弱き者を助けることこそが、
法律という武器を持つ者の義務ではないのかい?
よねさん。

男装がよねさんの拠り所なのは理解する。
しかし、筆記試験に受かっても、
男装して口述試験に臨んで落とされては、
志を貫けないだろう。

弁護士は、自分のためではなく、他人のために生きる職業だよ。
早くそのことに気付いてくれないかな、
彼女の視野が広がらないかな、
と見守っているうちに、
大空襲で行方不明になってしまった。

ご近所さんの話では、カフェの人は亡くなったとか。

大空襲の日の出来事を妄想する

よねさんや増野がいるカフェにも、火の手が迫ってくる。
よねさんみたいに普段肩ひじを張って生きている人ほど、
融通が利かなくて、危機に瀕した際には、脆さを露呈する。

焼け崩れた建物がよねさんに襲い掛かるところを、
増野が自分の身を呈して助ける。

カフェの儚き女給たちを見守ってきた増野が
よねさんを助ける理由はただ一つ。
よねさんこそが、本当に守らなければならない
か弱き女性だからだ。

オンナを棄てたはずなのに、オンナだからこそ助けられる。
この矛盾を突き付けられて、
さすがのよねさんの心の防御壁にも、ヒビが入る。

ご近所さんが言っていた亡くなったカフェの人とは、
増野さんのことなのかなぁ、と思う。

私の妄想

よねさんには、是が非でも、生き残っていて欲しい。

オンナを棄てた、なんて言い続けるのは、
自分が女であることを滅茶苦茶、意識している証拠。
よねさんが、本当のよねさんらしく生きられる日が来ればいいと願う。

男性俳優さんに拍手

憎らしい人を心底憎ったらしいと感じるときは、
その役者さんが演技達者な証拠。
大庭徹男役の飯田基祐さんの演技を褒めよう、パチパチパチ。

カフェのマスター増野を演ずる、平山祐介さん。
長身のよねさんと並べても、なお背が高く、
よねさんを見守る優しがにじみ出ていた。
平山さんにも、拍手。パチパチパチ。

最後に

8000文字を超える記事を果たして読んでくださる方が
いらっしゃるかどうか、予想が付きません。
ここまでお読みくださり、ありがとうございます。

続きはまた次回ということで。

以上

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「世の中に人の情け受くるこそ情けなしとは言ふもののお前では無し」 おこころざし、誠にありがとうございます。 ブタもおだてりゃ木に登る、ЯRtoneサポすりゃ天にも昇る。