確率:ザ・ギャザリング(準備編)

CFBのFrank Karstenの記事を読んでいて、「こういうの面白いよなー」と思ったので、MTGの確率を色々計算しつつ、せっかくなのでシェアしようと考えました。
シェアするにしても、考え方が分からないと自己満に終わってしまうので、今回は確率を計算するときの考え方について書いて、次回以降、色々な確率について書いていこうと思います。

0.やりたいこと

・確率を計算するときの考え方を理解してもらいたい。
確率の計算は怖くないよ!というのを知ってほしい。

1.順列と組み合わせ

確率の考え方の前に、「順列」と「組み合わせ」という言葉について説明します。例えば、A、B、C、Dというカードがあるとします。

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このカード4枚のうち、2枚を並べると何通りになるでしょうか。
実際に並べてみると、並べ方は「AB、AC、AD、BA、BC、BD、CA、CB、CD、DA、DB、DC」の12通りになります。
このように、並び順まで気にした場合の数のことを「順列」といいます。

では、カードゲームの手札のように、並び順は関係ない場合は何通りになるでしょうか。
この場合、先ほどの並べ方のうち同じ意味になるものはまとめれば、「AB=BA、AC=CA、AD=DA、BC=CB、BD=DB、CD=DC」の6通りになります。
このように、並び順は気にしない場合の数のことを「組み合わせ」といいます。

しかし、簡単に数えられる場合は実際に数えてしまえばいいですが、「60枚のカードのうち、7枚を選ぶ組み合わせは何通り?」などのように、実際に数えるのは大変な場合もあります。そのようなときは、公式を使うことで求めることができます。

2.順列と組み合わせの公式

それでは順列と組み合わせの公式について説明します。
はじめに、「n枚の異なるカードのうち、k枚を順番に並べる場合の数」は次の式で表すことができます。

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「P」は順列の英語であるpermutationの頭文字から来ています。また、「!」マークのついた記号は「階乗(かいじょう)」といい、以下の計算式のように、「表示の数字を1ずつ減らして1になるまでの数をすべて掛ける」を省略した記号になります。

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では先ほどの「4枚のカードのうち2枚のカードを並べる場合の数」を公式から求めてみましょう。先ほどの式に当てはめると、「n」は「4」、「k」は「2」になるので、計算は次のようになります。

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実際に数えてたときと同じ、12通りがちゃんと出てきました。

次は組み合わせの数の公式です。「n枚の異なるカードのうち、k枚を取り出した組み合わせの数」は次の式で表すことができます。

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「C」は順列の英語であるcombinationの頭文字から来ています。
(カッコ内の補足:組み合わせの数は、順列のうち「順番を考えなければ同じ意味になる組み合わせ」を数えない場合の数になります。その重複パターンはk!通りのため、その数で割ってあげれば組み合わせの数になる、ということになります。)

では先ほどの「4枚のカードのうち、2枚を取り出す組み合わせ の数」を公式から求めてみましょう。

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順列同様、実際に数えたときと同じ6通りとなりました。
MTGの確率を考える場合は、この組み合わせの数をよく使いますので、ぜひ覚えておいてください。

3.確率を出してみよう

では、いよいよ確率の計算についてです。基本的な確率は次の式から求めることができます。

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「Pr」は確率の英語であるprobabilityから来ています(単に「P」と書いたりもします)。
サイコロを例に考えてみましょう。
「サイコロを1回振って5か6の目が出る確率」を考えます。それぞれの組み合わせを考えると、「すべての組み合わせの数」が1から6の6通り、そして「目的の組み合わせの数」は、5か6の2通りです。そのため、求めたい確率は「2/6(約33.3%)」ということがわかります。ね、簡単でしょ?

もう一つ、「余事象(よじしょう)」を使った確率の計算方法を紹介します。
先ほどのサイコロの例の場合、「5か6の目が出る」場合のことを少し難しい言い方をすると「事象(じしょう)」といいます。これに対して、「5か6の目が出る」以外の場合のことを「余事象」といいます(全体のことは「全事象」といいます)。

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この余事象の考え方を使った場合の確率の計算式が次の式になります。

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この式は、「全事象の起こる確率(100%)」から、「余事象の起こる確率」を取り除くことで「事象の起こる確率」を求める、という方法です。分子の「目的以外の組み合わせの数」が「余事象の組み合わせの数」になります。
この計算式を使う場面についてですが、例えば「60枚のデッキに20枚の土地を入れた場合、初手7枚に少なくとも1枚土地がある確率」を求めようとした場合、これの事象としては「手札に土地が1枚」から「手札に土地が7枚」が該当し、計算量がとても多くなります。しかし、余事象を使えば、「手札に土地が0枚」のパターンを計算し、その確率を全体から引いてあげれば求めたい確率を簡単に求めることができます。
このように実際に確率を計算する場合は、余事象を使ってみると意外と簡単に計算できる場合がたくさんありますので、覚えておいてください。

4.確率の例

それでは実際の例に当てはめて確率の計算をしてみたいと思います。
今回はみんな大好きドレッジから、マリガンを繰り返すことでに「初手にBazaar of Baghdadが(少なくとも1枚)ある確率」がどれくらいになるのかを計算します。
デッキは60枚、そのうちBazaar of Baghdadは4枚とします。また、計算が複雑になるため、血清の粉末は使わない前提です。

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計算には先ほど紹介した余事象を使います。マリガンはなし(=0回)で「初手にBazaar of Baghdadが(少なくとも1枚)ある確率」は「全事象の起こる確率(100%)」から「余事象の起こる確率(初手にBazaar of Baghdadが1枚もない確率)」を引けばよいので、このような計算になります。

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次に、マリガンは1回までOK(=マリガン0回またはマリガン1回で初手にBazaar of Baghdadが(少なくとも1枚)ある確率)の確率を考えてみましょう。
まず、「マリガン1回以下」は「マリガン0回」と「マリガン1回」に分けることができます。「マリガン0回」における確率は先ほど計算しました(39.9%)。
次に、「マリガン1回」の確率は、「1回目は引かなかったけれども2回目(1回マリガンした後)には引く確率」となりますので、次のような計算で求めることができます。

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「マリガン1回以下」の確率は63.9%と一気に上がりました。

この計算を繰り返して、マリガン6回までの確率をまとめると以下の結果が出てきます。

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今回の確率はEWE2019のイベントカバレージでも出ていましたので、確認すると6回マリガン時の確率が97.2%で一致しています(検算は大事!)。これで計算完了です。
もし興味のある方は余事象を使わないパターンでも計算してみてください。

最後に、参考としてBazaar of Baghdadが1枚制限になった場合の確率も出してみました。先日ドレッジにボコボコにされた私からすると、このくらいがちょうどいいのでは?と思ってしまいますね。。。

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5.まとめ

・「順列」は並び順まで気にした場合の数のこと、「組み合わせ」は並び順は気にしない場合の数のこと。
・確率は「目的の組み合わせの数 ÷ すべての組み合わせの数」から求められる。シチュエーションによっては余事象を使うと簡単に計算できる。
・Bazaar of Baghdadは早く制限すべき 。

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