くじ引きの不公平性:二度引きルール

東京都知事選挙が熱いですね。
選挙といえば?
そう、くじ引きですね!

軽いものでは立候補届け出順(とポスター掲載場所)を決めるくじ引き、
重いものには票数が同じだったときの最終決戦くじ引きまであります。
(政治)人生を賭けたくじ引き、ぜったい面白いですよね。

お遊びではない大真面目なくじ引きでは、往々にして奇妙なルールが追加されることがあります。
くじを引く順番を決めるくじ引きを行うという、二度引きルールです。

そもそもくじ引きは数学的に公平だと証明されていますから、
無駄に二回もくじ引きする必要は無いんじゃないのか?
簡単な確率計算を理解していないのか?
と文句を言いたくなります。

しかし、くじ引きって実際には不公平なんです。

実は「不公平」なくじ引き

「くじ引きが公平である」というのは、あくまで数学の世界の話です。

実際には物理的に存在するくじを引くわけなので、「引くくじを選択できる」というのは、それだけで僅かに有利です。
ぶっちゃければ、不正のしやすさが引く順番によって違うんです。

不正を防ぐという観点で見ると、二度引きルールはけっこう合理的です。

二度引きルールで(確実な)不正をしたければ、
一回目のくじ引きで一番手を引く不正をして、
二回目のくじ引きで当たりを引く不正をしなければなりません。
一度引きルールと比較して、不正のコストが二乗で掛かります。

くじ引きを一回増やすだけなので、大して実施コストも掛かりません。
(そのコストが本当に効果に見合っているのかという疑問はありますが)

簡明さをワザと犠牲にして不正の入り込む余地を減らす。
そういう意図が二度引きルールには有るのです(大嘘)。

似たような事例としてはプログラムコードの難読化があります。
本来ならばできる限り単純にするべきプログラムコードを、他人が解析し辛くするためにワザと複雑化するらしいです。

オマケ:くじ引きの公平性

なぜ、くじ引きは数学的に公平なのでしょうか。
ちょっと変わった説明をしてみたいと思います。

とりあえず問題設定。
ハズレくじ4本、当たりくじ1本が入った箱があり、
A、B、C、D、E の5人がこの順番でくじを1本ずつ引くとします。

普通のくじ引きでは、くじを引いた直後にくじの結果を公開しますが、
引いたくじの結果を誰も見ないというルールを考えてみましょう。

くじを引き終わると、誰も中身を知らない未公開のくじを、A、B、C、D、E が1本ずつ持つことになりますが、誰の未公開くじをとってみても、それが当たりである確率は1/5です。
誰もくじの中身を知らないから、当たりチャンスが同じだけある。
A、B、C、D、E の全員、当たる確率は1/5だということになります。

くじを引いた直後にくじの結果を公開するルールだったとしても、「ある人間が当たりを引く確率」は変わらないはずなので、くじ引きは公平だと言えます。

くじを引く順番がマヤカシだと直接指摘している点で、私はこの説明が気に入っています。
ちょっとインチキなんですけどね。



追記:
何が「インチキ」なのかを書いておきます。
実は「全員がくじを引いたとき、誰かが当たる確率」と、「全員がくじを持っているとき、誰かが当たりを持っている確率」は、別物の確率です。
端的に説明すると、「異なる行為(試行)の確率だから、別物の確率」となります。
確率としては同じ値 1/5 ですが、それぞれ 1/5 であることの理由が異なっていることに、お気づきでしょうか。


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