読んだ論文 (Validation of Modified ALBI Grade for More Detailed Assessment of Hepatic Function in Hepatocellular Carcinoma Patients: A Multicenter Analysis. Liver Cancer. 2019;8(2):121-129.)

肝細胞癌患者における肝機能のより詳細な評価のための修正ALBIグレードの妥当性。多施設共同解析

日本からの報告。下記リンクから無料で本文を閲覧可能です。

要旨

背景・目的
我が国では,抗ウイルス療法の進展や高齢化に伴い,肝予備機能の良好な患者における肝細胞癌(HCC)の発生頻度が増加している.そこで、肝予備能の評価ツールとしての修正アルブミン・ビリルビン(ALBI)グレードの有用性を評価した。

材料・方法
2000年から2017年までに治療を受けた未治療HCC患者6,649例を登録し、研修群(愛媛県群:E群、n=2,357)と検証群(検証群:V群、n=4,292)のコホートに分けた。Child-Pugh分類と、TNMステージと各評価ツールに基づいて算出した日本統合ステージング(JIS)、ALBI-TNM(ALBI-T)、mALBI-Tスコアを用いて、TNMステージと各評価ツールを遡って、ALBIおよび修正ALBI(mALBI)のグレードを比較した。

結果

E群では、mALBI-Tのアカイケの情報基準(AIC)とc-index値(13,725.2/0.744)は、ALBI-T(13,772.6/0.733)、JISスコア(13,874.7/0.720)と比較して良好であり、V群(mALBI-T:27,727.4/0.760、ALBI-T:27,817.8/0.750、JIS:27,807.5/0.748)でも同様の結果が得られた。

臨床的背景因子(年齢、病因、腫瘍の大きさ、腫瘍数、治療法)については群間で有意差があったが、全例においてmALBI-TのAICおよびc-index値(45,327.1/0.755)はALBI-T(45,467.7/0.744)およびJIS(45,555.8/0.739)よりも優れており、HCC患者の層別化能および予後予測能に優れていることが示唆された。

結論
肝予備機能に対するmALBIグレードの詳細な層別化能力は、最近のHCC患者の傾向に適しており、mALBI-Tは既存の全病期分類スコアリングシステムよりも正確な予測値を提供する可能性がある。


(解説と個人的な感想)

ALBI gradeは、肝機能の予後指標として用いられる。

その他の指標は、下記のサイトが非常に参考になります。

上記サイトに記載している内容を引用したものを↓に記載しますが、肝予備能などを確認する指標はたくさんあります。

●  Child-Pugh分類は、血液生化学的検査データ(Bil、Alb、INR)と肝性脳症・腹水の有無を用いたスコアリングシステムであり、肝硬変および肝予備能の診断に用いられます。
●  MELDスコアは、血液生化学的検査データ(T-Bil、INR、Cr)と透析治療の有無を用いたスコアリングシステムであり、12歳以上の肝硬変および肝移植登録者における肝予備能の診断に用いられます。
●  MELD Naスコアは、従来のMELDスコア同様の血液生化学的検査データ(T-Bil、INR、Cr)にNaを追加したスコアリングシステムであり、12歳以上の急性肝炎・肝硬変および肝移植登録者における肝予備能の診断に用いられます。
●  PELDスコアは、血液生化学的検査データ(Bil、INR、Alb)と年齢、成長度を用いたスコアリングシステムであり、12歳未満の肝硬変および肝移植登録者における肝予備能の診断に用いられます。
●  ALBI スコアは、血液生化学的検査データ(T-Bil、Alb)を用いたスコアリングシステムであり、肝細胞癌の治療法を選択する際に用いられます。
通常スコアは ALBI グレードとよばれる 3 つのグレード(1,2,3)に分類されますが、当ツールでは 4 つのグレード(1,2a,2b,3)に細分化することで、より優れた評価能力が期待できる modified ALBI(mALBI)グレードを採用しています。

色々な指標がありますが、例えば、医薬品の添付文書の”慎重投与”や”禁忌”の項目によく記載されている指標として"Child-Pugh分類"がありますが、算出には、血液生化学的検査データとして、ビリルビン値、アルブミン値、プロトロンビン時間に加え、客観的な指標として、肝性脳症・腹水の有無の情報が必要です。

例えば、イグザレルトの添付文書のうち、禁忌の項目には、下記のとおり記載されています。

”中等度以上の肝障害(Child-Pugh分類B又はCに相当)のある患者”

考えてみてください。イグザレルトの処方する専門診療科は、適応症を考えると

○非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制
○深部静脈血栓症及び肺血栓塞栓症の治療及び再発抑制

となっているので、脳卒中を診療している診療科か、循環器に関する診療科の医師が主となるかと思います。そういう先生方が、Child-Pughのスコアリングを外来診察時に毎回するでしょうか?

一方、ALBIグレードは、計算式は複雑ですが、名前のとおり、アルブミンとビリルビン値があれば、算出可能です。しかも、肝硬変領域では、Child-pughスコアとALBI gradeの相関性に関しても報告をされています。

現在のところ、医薬品の効果にALBIスコアがどういう傾向を示すかという点について、詳細な検討はされていませんが、代替指標として使用可能かもしれません→自分でも少し検討したいとは思っていますが・・・。

今後の検討に期待したいです。


よろしければサポートお願いします。 サポートいただいた費用で、論文の取り寄せ等に使わせていただき、記事を充実させていきます。