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新卒から7年働いた会社を辞めた

早期希望退職

新卒から7年働いた会社を辞めた。
早期希望退職制度が大きなきっかけだった。
コロナ禍での経営悪化による人員整理が目的。
30歳以上を対象に退職金割増しで辞めることができるという制度であった。

僕は一緒に働く人が、仕事が、好きだった。
だから今まで辞める理由などなかった。

大好きだった会社

今お世話になっているリクルーターの方に言われた。
転職の場合、大半が会社が嫌いで辞める。
好きな仕事を諦めなければならないケースは珍しい、と。

とにかく若手を大切にしてくれる会社だった。
失敗をして色んな挑戦をして大きくなりなさいと背中を押してくれる。
社長がひとりひとりの出身地から出身高校、出身大学まで覚えている。
そんな社長の人柄にも魅かれて、入社を決めた。

小学生の頃から憧れてきた仕事。
もちろん、酸いも甘いも経験していくことにはなったが、
退職した今でも入社して良かったと思える会社だった。

仕事だけではなく、自分の20代の人格形成をしてくれた人たちとの
たくさんの出会いもあった。
人を慮れる優しい人、ポジティブで何事もトライする人…
チームで一緒に働く人たちが僕は大好きだった。

そんな大好きな会社の風向きが変わったのは、
社長の交代だった。
それによって正反対の人が来た。
会社の舵が一気に切られていくのを感じた。

その中で発表された希望退職制度だった。
初めて「辞める」という選択肢が浮かび上がってくる。

退職の理由

希望退職制度をきっかけに辞めるという選択肢が増えて、
上長とも面談を重ねていく中で気持ちを整理した。

先述の通り、小学生の時から憧れてきた大好きな仕事だった。
でも、コロナ禍で過ごした2年間で仕事量が愕然と減った。
また、一通りの業務を経験できたことから停滞感が強く、
このままでいいのかなという思いが芽生えた。
希望退職制度で辞めるという選択肢を与えられて初めて、自分と向き合った結果、30歳の区切りで新天地で挑戦したいと思うようになった。

また、金銭的な影響も大きかった。
この2年は残業するほどの仕事も無くなり、給料カットで残業代は無し。
もちろんボーナスもなし。
生涯年収を少し埋めてくれる割増の退職金はありがたかった。

最後まで後ろ髪を引かれたのは、公私ともにお世話になった会社の人たちとの別れだった。
辞めてもこちらからアプローチすれば会ってくれる、関係が途切れることはない、と信じることにした。

上長との面談で高校受験に失敗した時以来の大泣きをしながら、
様々な条件や感情を整理しながら、決断をしたのである。

悔恨の気持ち

断腸の思いで、退職の決断をしてから1ヶ月で希望退職の申し出が受け入れられた。
本当に会社を辞めるんだ、という気持ちがあった。
その寂しさや複雑な気持ちを埋め合わせて断ち切るように、自然とデスクの整理や仕事の引継ぎに手が動いていた。
一斉退職まであと2ヶ月あるのに。

少しして、退職者の一覧が発表された。
そこに名前があったのは、自分も含めた30~40歳代の若手社員やお子さんがいる女性社員、契約社員ばかり。
本来、メインターゲットとなったであろう給与の高い役職者の「おじさん」の名前はほとんどそこには無かった。
「おじさん」は自らも対象だったにも関わらず、部下に退職を迫りつつも、自らは残留の選択を取ったのである。

とても悔しかった。
他人の人生に介入する権利がないことが分かっているからこそ。
「おじさん」にもそれぞれの人生があり、家庭があり、経済状況がある。
そんなことは分かってる。
そんなことは分かってるけど。
面談でこちらの人生の選択には介入できるのに、こちらは「おじさん」の人生に介入できない。不公平である。

少しすると支店の閉鎖もあり、「おじさん」が本社に集まってきた。
我が物顔で残留を決めた「おじさん」達が会社の今後について考えるような顔をしながらも自分のことを考えて、PCの前で難しい顔をするふりをしているように見えた。

さらには希望退職を募っておきながらも、さらにグループ会社から「おじさん」を受け入れて補充が行われる。
自分が空けたつもりの穴は跡形もなく「おじさん」に埋められるのである。
かわいがってきた未来ある若手後輩社員でなく、「おじさん」。

もう大好きだった会社は「おじさん」のものになっていた。

退職日

退職日の朝を迎え、最初は何ともなかった。
午前中は返納品を淡々と提出し、メールを整理し、デスクをまとめる。
午後を迎えると、同じタイミングで退職する人達がお世話になっている人へ挨拶まわりを始めていた。

僕は夕礼にて退職の挨拶をさせていただくことになっていた。
何ともなかった心が夕方になりざわざわしてくる。

夕礼の時、第一声が出てこない。
代わりに涙が止まらなくなる。

何ともなかったと思っていた。
何ともないわけがなかった。
大好きだった仕事や仲間を手放すことを悔やむ気持ちにやっと向き合えた。

色んな人と泣きあった。
普段、冗談交じりで仕事の話をしていた上司ですら目が潤んでいた。

「おじさん」のことはさておき、本当に良い会社だった。

これからのこと

退職してからはゆるく再就職活動や帰省するなどぶらぶら過ごしている。
天気が良い日はサイクリングをしながら、ハローワークへ行ったり、
無職の味方イオンモールへ行ったり。

残留か退職か。
どちらが正しかったのかはまだ分からない。
10年後、20年後に人生を振り返って初めて分かるのだろうと思う。

希望退職制度が自分史に残る大きな出来事になったことは確かである。

幸い、大学の友人が良き理解者のリクルーターの方を紹介してくれた。
おかげでマイペースに再就職活動を進めることが出来ている。
人に恵まれている人生だな、と改めて実感している。

また同じ業界、同じ会社に戻ることが出来たら嬉しいけれども、
それはまだ先の話になりそうだし、この先もしかしたらもっとのめりこめる仕事と出会えるかもしれない。

そんな期待を抱きつつ、前を向いて進んでいこうと思う。



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