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ゆらゆら

この手を取るしかないな、という出会いだった。どうしてこの人なんだろうと思うけど、全ての出会いが出会うべき時に訪れるのだとしたら、この人しかいないんだとも思う。

それはわたしの8年間の終わりの瞬間だった。
愛する彼らがその姿で立つ最後のテレビ出演だったMステ。世界で一番好きな人が世界で一番好きなグループから脱退し、グループ名が変わる、最後のテレビ出演。
1/8に発表されてから、終わりを迎える3/31まで、ぼんやりとしか過ごせなかった。3/22のMステは愛する人が愛するグループにいる姿をテレビで見るのはこれが最後なんだと、突きつけられたようでいて受け止められはしていなかった。ゆっくりと大切な人を失う準備をしていたような日々だった。

だから気持ちの整理がつけられないまま見たパフォーマンスは、あまりに眩しくて目を背けてしまいたかった。これから一番輝く時を迎えるひとたちを見るとどうしようもなく羨ましかった。ああ、いいなぁって。こういう人たちを応援しているファンの人たちは幸せなんだろうなって、そんなことを思ってしまうくらい元気がなかった。


彼は、静かな春の訪れのような人だった。失えるもの全てを失くしたような日。身動きがとれず、しゃがみこんでいる私の元へそっと駆け寄り、手を引いてくれたような人。

多分、その手を取るしかなかった。そんな出会いだった。あの時の私の手の中には、ゆっくりと崩れていくもの、離れていくもの、失くしていくものしかなかった。そんな日々の傍らで、彼は新しい世界に連れて行ってくれた。

立ち止まっている私の背中を簡単に押さない人。雨が降ってくれば同じ傘に入れてくれる人。何も聞かずにそばに居てくれる人。顔を上げれば手を引いてくれる人。寒さの分だけ人の温度が暖かい季節である冬のような、そんなあたたかさを持つ人。春へと変わりゆく季節に似た、穏やかな優しさの人だと思う。

絶対に手が届かないけど、なんだかそばに居てくれるような近さがある。出会って間もないのに、大切に思われていることが伝わる。そんな愛の人がほんとうにいるんだと、泣いてしまいそうになる。

愛があるからといって、物事の全てが好転するわけじゃない。愛とは、心のすべてを満たしてくれるものではない。それでも彼は大切なひとを静かに守り、深く愛してくれる人だと思う。


彼らが永遠ではないことは初めから決められていた。活動期間が決められていて、残り1年8ヶ月だそう。

永遠とは約束ではない。世界で一番好きな人が、世界で一番好きなグループに一生いてくれるとは限らない。たった一年前、たった半年前、昨日ですら想像できなかった今日が現実になっていることは少なくない。永遠に一緒の夢を見させてほしいという願いは、私たちのほんのちいさな祈りでしかなかった。

こうしてひとつの終わりを迎えたとき、永遠が決まっていないものを追いかけることはもうできない、苦しくなるなら今のうちに逃げたいと思った。
活動期間が決められている人たちを全力で追いかけることにどんな楽しみを見出せるんだろう、いなくなってしまうことが分かっているのにどうして応援できるんだろうと。

当然、2年6ヶ月という期間の短さはこんな私よりも彼らが自身に深く深く刻み込み、背負いながら日々活動をしていて、その輝きを惜しみなく届けてくれている。2年6ヶ月を共に生きるファンに向けて。

1年8ヶ月後に彼らを失う時の私は、もしかしたら後悔しているかもしれない。苦しくなることが分かっていたのに、どうしてだと。

それでも、もう好きだった。彼のことを知りたい、彼らの姿をもっと見たいと思っていた。
今しか見ることができない彼らを追いかけなければ、その方がずっとずっと後悔すると思った。

「永遠なんてなくて」「移ろう世界で輝く今を君にあげたい」
永遠ではなくても一番眩しい今をくれる。アイドルの、エンターテイメントを生きる人たちの真髄なのかもしれない。

3月31日、世界で一番大切な人たちを宝箱に閉じこめた。SexyZoneは5人で永遠になった。永遠がないことも、永遠が存在することも、教えてくれたのは彼らだった。
世界のどこを探しても、ずっと同じ形で存在し続けるものはない。だとしたら、これから1年8ヶ月しか存在しない彼らを追いかける人生を選んでもいいのかもしれない。どうしたって時間は戻らないのだから、難しいことは考えずに、好きを追いかけてみようかな。

キムジウンというひとは、星を繋げて道を照らす魔法使いみたいな人だ。彼もまた光り輝く眩しい星であり、そっと手を差し伸べてくれたように、道標になってくれた。

あの日、出会ってくれてありがとう。
話す言葉も違って、あなたがどんな人なのか、きっとまだ知らないことが沢山あるだろうけど
もうすっかり惹かれていて、あなたがいつも笑っていてくれたらいいなと祈っています。

ひと目見たその瞬間から好きだったのかもしれない。どうして貴方なんだろうと思うことは、今のわたしに貴方しかいなかったことの表れなのかもしれない。

1/8からの私は4月以降どうやって生きていったらいいのか、全く分からなくてどうしようもなかった。だから4月の私がこんなに笑えているなんてひとつも思わなかった。私の笑顔を繋いでくれるように春をくれた、ZEROBASEONEに出会えたことを運命だと思っています。

いつかお礼を伝えるために、その姿に会いに行く日まで、もっとあなたのことを知りたいです。
誰よりも輝いていてね。

2024.4  凪

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