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錯覚

職場を出るともうだいぶ暗い。気づいたら日が短くなっていたし、そろそろカーディガンを持ってこないといけない。

日々、それなりに落ち込んでいる。それなりに傷ついて、まあそれでも生きてかなきゃいけないからさって言いながら。

そりゃ悔しいさ。悲しくてやりきれないけど、そればかりに引っ張られたら戻ってこられないような、そのくらいの大きさを感じている。
だから今は短歌に居る。今は逃げるための短歌。短歌にさえしておけば、私から溢れる真っ黒たちが、勝手に色んなところに歩いて行ってくれそうで。

日々の楽しみだったドラマたちも終わりを迎えていき、季節は変わるらしい。落ち込んでたって秋になってくのよって。

どこにいても、なんとなーく、「分かっている人だけが分かっていてくれればいい」になってしまう私の生き方はどこが私らしいんだろうか。
良い意味でも、悪い意味でも。この私らしさってどこから来るんだろう。私の正義って、どうしてこんなにも普通の顔をしているようでものすごく頑固で、強くなってしまうのだろうか。

そのせいでいつも、どこにいても、なんとなーく人が寄ってきたり離れたり。誰でもそんなもんだとは思うんだけど、私が思うに私の正義って「分かってくれている人だけがちゃんと分かっている」ものらしい。

まあ、正義なんて大体そんなもんなんだろうな。学生時代頼れる大人だったひとに、「誰だって何だってそう。だからまずは自分の味方を増やせ」と言われたのを思い出した。闘いにでも出るんか。

学生時代のマブたちと電話して身内ネタで笑い転げる夜があった。こんなにくだらなくてしょうもなくて、このくらいで生きていけたらいいのに。生きていくために前を向くだけのことがこんなに重いなんて。

私が彼らに見る夢ってのはさ、幻でも錯覚でもないのよ。嘘も偽りもその場限りもない、全部ほんとう。彼らが見る夢は、はじめはただの妄想や理想だったかもしれない。でもね、彼らが本気でその夢を掴み取りに行くんだったらどこまでもついていくだけで、彼らと私たちで本当にしていくのよ。

今回ばかりは全然花束を返せなくてごめんね。好きな人に「ごめんね」と言われるのがこんなに辛いなんて知らなかった。こんな「ごめんね」なんて、わたし、知らなかった。
大丈夫、また一緒に少しずつ乗り越えていこうねって、本気で思うのに。本当に心から思っているのに。自分自身の足元がぐらりと揺れているようで、花束を返せない。

「心配かけてごめんね」なんて、どうかそんなことを言わないでほしい。私たちの心配の中にある、愛だけを、いいところだけを、貰っていってよ。ずるくなってよ。全部受け止めなくていいよ。その抱えてるものひとつくらい持たせてよ。


職場を出るとまっすぐ光る星。見て、一番星。
なんだか涙が出て、自然と見上げた私は上を向いているようだった。せめて、今日だけは。

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