雇用市場の回復を目指し、豪中銀は政府と連携へ

■ 豪中銀は10月理事会で、市場予想通り政策金利と資金供給策などの現状維持を決定した

■ 豪中銀は豪政府と雇用の回復を巡る連携を進め、11月理事会での利下げ観測につながる見込み

 本稿では、10月6日に開催された豪中銀(RBA)理事会の結果と豪政府が発表した今年度予算案について整理する。10月理事会では市場予想通り、政策金利と3年物国債利回り目標を過去最低の0.25%で据え置くことが決定された。また、前回の9月理事会で拡大を決定したばかりの金融機関向け資金供給ファシリティー(TFF)の規模や期間についても、現状維持を決定した。本稿執筆時点のTFF利用額は9月理事会時点の590億豪ドルから810億豪ドルに増加した。また、9月理事会以降にRBAが実施した国債市場での豪政府証券(AGS)買入は20億豪ドルとなり、3月以降の国債購入は総額630億豪ドルに達した。

 RBAが注目するのは、失業率をはじめとした雇用市場であることに変化はない。10月理事会の声明文では、「理事会は高い失業率に対処することを重要な国家的優先事項と考える」と雇用市場への注目を強調する文言を追加した。そのうえで、「労働市場の状況はここ数か月で幾分改善した」とし、「失業率は以前の予想よりも低い水準でピークを迎える」と見通しを好転させた。一方で、「インフレ率が2-3%の目標範囲内で持続的に推移すると確信するまでは、政策金利は引き上げない」との文言は維持され、RBAは金融緩和姿勢を継続している。11月6日に公表される四半期金融政策報告では、雇用市場の最新見通しが示される予定だが、「雇用支援につながる追加の緩和措置について、引き続き検討している」との声明文を踏まえて、市場では次回の11月理事会で政策金利を0.1%へ引き下げるとの見方が多数派である。本稿執筆時点で、3年物国債利回りはRBAの目標である0.25%を下回る0.14%台まで低下しており、金融市場では既に追加利下げ観測が一定程度織り込まれている。

 また、10月のRBA理事会が開催された10月6日には、豪政府が今年度(今年7月から来年6月まで)予算案を発表した。通常は5月に発表されるが、今年度は新型コロナ禍の豪州経済への影響を見極めるため延期されていた。予算案では、財政赤字が過去最大規模へ拡大する一方、向こう4年間で100万人の新規雇用を創出する計画をはじめ、雇用の回復を優先させる方針が示された。雇用回復を巡るRBAと豪政府の連携が示唆される形となっており、RBAの追加利下げに関して10月15日に予定されているロウRBA総裁の講演に注目が集まる。

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