トルコリラは最安値を更新中

■ トルコリラは対ドルで史上最安値付近にあり、対円で本日最安値を更新

■ 東地中海の海底資源を巡り、EUからの制裁発動が現実味。新たなリラ売り材料に

 トルコリラが下げ止まらない。10月9日、対ドルで7.95リラ台後半の史上最安値を付け、足元は7.92リラ台前半で推移する。対円では本稿執筆中に13円台前半と最安値を更新した。この背景には、東地中海の領海問題や海底資源を巡り、欧州連合(EU)加盟国である隣国のギリシャやキプロスとの緊張再燃がある。トルコは問題となっている海域での石油・ガス田探査を続け、10月2日のEU首脳会議ではトルコへの制裁が議題となることが決まっていた。こうした動きを受けて、トルコは9月13日に同海域で活動していた海底資源探査船を帰港させ、同22日には海底資源を巡るギリシャとの二国間協議を4年ぶりに再開することで合意した。このためEU首脳会議では、トルコが「挑発行為」を継続する場合、早ければ12月にも制裁を課すとキプロスに確約するにとどまった。だが、10月12日にトルコは再び探査船を同海域に派遣、ギリシャはEUに対して制裁発動を改めて要求する事態となった。トルコ系住民の多いドイツは仲介に乗り出していたが、ここに至りドイツのマース外相も「EU加盟国としてドイツはキプロスとギリシャの側の立場である」と述べ、トルコとギリシャの直接対話は見送られる模様だ。

 アゼルバイジャンとアルメニアの民族紛争へトルコが介入したことが嫌気され、トルコリラは9月に下落が加速した。ロシアが仲介に乗り出したことで10月10日に同紛争はいったん停戦したが、停戦後も互いに違反行為があったとして戦闘は続いている。こうしたなかで、外交ルートを使った解決に向かっていたキプロスやギリシャとの東地中海の海底資源問題が蒸し返され、港湾施設の利用制限などEUからの制裁発動が現実味を帯びてきた。別の地政学的リスクがリラ売り材料に追加された格好だ。トルコ中銀は9月24日に資本流出を止めるため2年ぶりの利上げに踏み切ったが、リラ安は止まっていない。トルコがアゼルバイジャン、東地中海にこだわる背景にはエネルギー供給問題、外貨不足があり、今後も他国との摩擦は頻発するとみられ、トルコリラの下落基調は続くと考えざるを得ない。

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