新型コロナ感染「第2波」の影響を考える

■ 欧州では、新型コロナウイルス感染拡大が続き、厳しい経済活動の制限が再び導入されている

■ 第1波と比べて各経済主体の財務・財政状況が悪化するなか、「時間との闘い」の様相が強まる

 欧州を中心に新型コロナウイルス感染が北半球で再び流行し始めている。ドイツ、フランス、イギリスなど、欧州の主要国ではすでに1日当たりの新規感染者数が3-4月のピーク時を大幅に上回っている。これらの国では軒並み厳しい経済活動制限が導入されるなど、政府が感染拡大の抑制に本格的に動き出している。

 経済的観点では、第1波との共通点は、ヒトやモノの移動が政策的に制限されることである。運輸、観光、飲食業などのサービス業を中心に活動の収縮は避けられそうになく、昨冬同様、一時休業、失業補償など公的支援によるセーフティーネット(安全網)構築が、経済的悪影響の遮断という観点で重要になる。一方で、第1波との違いとしては、経済活動全てを制限していない点が挙げられる。不要不急の外出が厳しく制限される反面、工場の操業や公共サービスなど最低限の活動を継続する方針で、各国ともに経済活動との両立が企図されている。また、大半の国では経済活動制限の期間を12月上旬までに設定されており、クリスマス商戦の本格化前に経済活動を正常化させたい思惑がうかがえる。

 また、企業、家計、政府すべての経済主体で昨冬時点より財務・財政状況が大幅に悪化している点も、第1波と大きく異なる。企業への打撃は、サービス業を中心に資金繰り(Liquidity)にとどまらず支払能力(Solvency)に及ぶ可能性が以前より高まっている。民間企業への資金繰り支援については金融政策でも対応可能であるが、支払能力に対する支援策の中心は財政政策であり*1、その重要性が一段と増すことになるだろう。そもそも、経済活動制限は加速度的に拡大する新型コロナウイルス感染に歯止めをかけるための政策であり、本質は、経済活動を犠牲に、医療崩壊を防ぐための「時間稼ぎ」だと言える。根本的な問題解決には治療薬やワクチンの完成を待たなければならない。公的支援の余力が限られつつあるなか、経済主体の財務基盤の悪化、医療崩壊の双方の観点において、「時間との闘い」という意味合いが一段と強まってくると考えられる。

*1 支払能力の支援策は、資本注入(損失吸収能力の向上)や債務保証(民間部門から公的部門への債務移転)などの財政政策が中心となる

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