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「本と香りをめぐる対談集」Vol.8「エウロペアナ:二〇世紀史概説」~文学アロマフェア~

2021/12/6(月)~12(日)文学アロマフェア~大切な誰かに贈る1冊の香り~@BOOKSHOPTRAVELLER

BOOKSHOP TRAVELLERは、約100人のひと箱店主たちが棚を借りてつくる下北沢の本屋。そこに集う個性豊かなひと箱店主たちと、“言葉×香りのアロマセラピー「読むアロマ」”のアロマ書房のコラボレーション企画のレポートnote「本と香りをめぐる対談集」を連載していきます。歌人で「うたとポルスカ」を運営されている吉田恭大さんです。

文学アロマフェアの詳細はこちら


ひと箱店主:うたとポルスカ 吉田恭大

【プロフィール】
鳥取出身。歌人/舞台制作者。「北赤羽歌会」「うたとポルスカ」運営。

【選書した本】
エウロペアナ: 二〇世紀史概説
( パトリク・オウジェドニーク 著/阿部 賢一 ・篠原 琢 訳/白水社)

【作品概要】
『一九一七年、あるイタリアの兵士は自分の姉に宛てた手紙のなかで、日を追うごとに、僕は前向きポジティブになっていく、と書いた。』(本文より)
主にヨーロッパの二十世紀、について。第一次世界大戦と第二次世界大戦とそれからその後。歴史的な出来事や、各地の小さなエピソード、統計上の数字や政治のスローガンや噂話、たくさんの断片をかき混ぜて積み重ねた奇妙な小説は、でもそれが間違いなく現在のわたしたちに続いていることを教えてくれる。


「本と香りをめぐる対談集」Vol.8

アロマ書房:こんにちは。今回、「大切な誰かに贈る1冊」ということで『エウロペアナ: 二〇世紀史概説』を選ばれましたが、選書の理由を教えてください。

うたとポルスカ 吉田恭大(以下、吉田):実家に帰省する友人に。
是非、年末の新幹線や夜行列車の中で読んでほしいですね。20世紀の色々なエピソードが作中で繋がっていたり、いなかったりするんですけれど……自分の身体の移動と重ね合わせることで、文体の速度感も面白がれるのではないかとおもいます。割とさくっと読み終わりますし。

アロマ書房:ありがとうございます!「実家に帰省する友人」は、なにかしらの背景があるのでしょうか?普通の旅行ではないところが気になりました。

吉田:なるべく遠くに行く電車の中がいいかな、と思い「実家に帰省」というイメージが浮かびました。飛行機だと文字通り地に足が付かないというか、この本に対しては速度が速すぎる気がします。

アロマ書房:速度感、わかるような気がします。私は、この魅惑的な雰囲気の作品をまだ読んだことがないのですが、吉田さんがこの作品に惹かれたのはなぜだと思われますか?また、読んだあとどんな気持ちになるか、よかったら教えてください。

吉田:スピード感と情報量で読者を圧倒する、みたいな変な小説で、特に明るい内容でもないのですが、読んでいるうちにこちらもテンションが上がっていくような感覚が不思議で惹かれています。作品の文体と、時間の流れがせわしないのですが、読んでいるうちにこちらも何か忙しい気持ちになるというか、アドレナリンが出てくるような不思議な感覚があります。

アロマ書房:電車の揺れと、高揚があいまっていつもと違う空間を感じそうです。では次に、香りを作る参考にさせていただきたいのですが、作品の世界観を色に例えるなら何色でしょうか?

吉田:濃い緑

アロマ書房:作品の空気感を表すとしたらどんな言葉になるでしょう?
※ 選択方式でお答えしていただいています

吉田:軽い、シャープ、暗い、外交的

アロマ書房:作品の斬新さやシャープな印象を香りで表現できればと思います。どうもありがとうございました!

以上のお話から、わたしが作った『エウロペアナ』の香りがこちらです。


『エウロペアナ』ブレンドについて

【ブレンドレシピ】
ライム ローズマリーシネオール ラビンツァラ
レモングラス タイムリナロール パチュリ


「テンションが上がっていくような、不思議な感覚」をテーマに香りを作りました。その斬新さ、独創的な雰囲気をチラッとしのばせています。
香りのテイストは、作品の空気感から「軽い、シャープ、暗い、外交的」です。

ブレンドした香りをひとつずつ解説していきます。

心を活気づけ、刺激するライム。「濃い緑」のイメージによせて。ほろ苦さ=エッジのきいた雰囲気にフィットする香り。

ローズマリーはシャープさと活字を追う楽しさを。その世界にピントを合わせる。

クスノキの仲間のラビンツァラ。肺の奥にやさしく染み込み香りは、心身に働きかける幅広い作用とツヤツヤの緑の葉を持つ。

そしてレモングラス。独創性や革命、ビジョンなどを司る天王星に属する精油のひとつ。レモン様の香りは力強く、そして複雑さ秘める。

タイムリナロールは長く人類とともにいるハーブ。その歴史と、世界各地への拡がりは多方面にわたる。心を鼓舞する香り。

ベースを支えるのは時をゆっくり刻み熟成する精油、パチュリ。地に足をつけ、外からの翻弄から守ってくれる。

マダガスカル、モロッコにスペイン、ジャワ、イタリア。世界各地に産地を持つ6種類の精油をコラージュして、「なんか不思議」の世界を創りました。


『エウロペアナ』の香りの感想


アロマ書房:完成した香りを嗅いでみていかがでしたか?

吉田:主にライムの印象なのでしょうか、最初はすっきりした感じがあって、だんだん色々な気配がしてきて、面白かったです。
『エウロペアナ』には時々ハッとさせられるようなフレーズや言い回しがたくさん埋め込まれているのですが、そういう断片に触れた瞬間の目が醒めるような気持ち、に通じるものがあるような気もします。

アロマ書房:この作品のように、香りを感じる瞬間ごとに様々な表情を楽しんでいただけたらうれしいです。どうもありがとうございました!


「文学アロマフェア~大切な誰かに贈る1冊の香り~@BOOKSHOPTRAVELLER」開催詳細

開催期間:12月6日(月)~12月12日(日)
会場:BOOKSHOP TRAVELLER(〒155-0031 東京都世田谷区北沢2丁目30−11北沢ビル3F)
営業時間:12時~19時
定休日:水・木

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