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秋葉マジックの正体と結末

こんにちは。残念ながら昇格はできませんでしたが、今回は秋葉さんのサッカーを振り返りたいと思います。


まずは秋葉監督になっての成績ですが、一試合平均勝点1.97で42試合にすると町田に次いで2位、平均得点2.11・平均失点0.77で今シーズンからチームに加わって4月に監督に就任した身としてほぼ完璧な数字を残しています。
少し前にこれを秋葉マジックと称していた記事がありましたが、このマジックの正体とは何だったか見ていきます。
(先日他でこれについて書いた記事が出てましたが、もうちょい詳しく書きたいと思います。ほんとはプレーオフ前に書くつもりだったんだけど…)

縛りからの解放

色々なところで出ているように前監督の時のサッカーに選手が窮屈さを感じていたのは間違いないでしょう。守備も組織的でなくビルドアップも白崎に頼る事が多かったリカルド監督が戦術的だったとは全く思いませんが、相手を押し込んだ時にポジションを取って守備を動かしていく形は、やり始めて時間も経っていないことから、まだ選手が感覚でできるまでには至っておらず「こう動かなければならない」という縛りを選手に与えてしまった形になっていたと思います。

サッカーは瞬間瞬間で状況が変わるスポーツです、特にPA付近までくればそれこそ選手に時間はありません。本来はその時間を作ったりする為のものですが、それを感覚まで落とし込めていなかったので逆に選手の直感的・瞬間的な判断を奪ってしまっていました。(本来はレレのところに入るはずだった乾の怪我が無ければすこしは違ったかもしれませんが)

その状態を見ていた秋葉監督はまずはその縛りを解いて選手が瞬間的に判断(プレー)できるようしました。

ここでは「選手の好きではない事・苦手な事をしていた、自分の良さ・長所を発揮させて」と書かれていますが、これは実際には「こう動きなさい」の縛りを解いて選手のこれまで持っている経験則を元にした判断を最優先にするという事だったと思います。
そしてそれでやれると判断したのはコーチとしてエスパルスの選手のレベルを見てと、これまでJ2で指揮を執ってきてそのレベルを知っている秋葉監督だったからでしょう。

チームの共通認識

しかしいくら経験があって能力がある選手達でもそれだけでは戦えません。チームとしてどのように戦うのか、それが示されないと選手の動きや考え方がバラバラになります。
そこで選手が同じ方向を向くために秋葉監督が示したのが、就任してからずっと口にしている

「超攻撃的・アグレッシブ・前(ゴール)に向かう」

という言葉です。

これが秋葉エスパルスの共通認識でありプレー選択基準です。この共通認識と選択基準を提示して「こう動きなさい」という縛りを解いた選手達にはそれ以上の事は言わない。おそらく秋葉監督はこの大枠だけを設定して、そこからに関しては選手に委ねていたと思います。

前に向かう意味

この共通認識の中で「前に向かう」は秋葉監督のサッカーの中で大きな意味を持ちます。
「前に向かう」が実際にどのようなプレーかというと、まず攻撃での「前に向かう」プレーは相手最終ラインの裏を取ってそこにボールを出す、ディフェンスの間でボールを受けて前を向く、味方を追い越す動き等です。
守備に於いてはボールを奪いに行く守備です。高い位置でも低い位置でも目の前の相手に向かってプレスをかけてボールを奪いにいきます。自分のスペースを守るのではなくそこを空けてもボールに向かいます。

大事なポイントは攻撃でいえばそのプレー自体が失敗しても相手を動かす、守備でいえば最初に前に出てボールを奪えなくても最終的にそれ自体がボールを奪う事に繋がる事です。
動いた先にボールが出てこなくても、その選手が動いた事で状況に変化をもたらします。最終ラインの裏を取るであればそのラインを押し下げる、間で受けてるであれば元々いたスペースを空けるとともに相手を引っ張ってきたりできます。また追い越す動きではボールホルダーから守備を引き剥がしたりする事が起きます。
守備についても最初のプレスで取れなくても、その後ろは相手選手を捕まえています。それがゴールまでには2重3重とあり、そう簡単には全てを剥がしていくことは中々できません。ボールを持っている側も、1秒後には状況が変わっている中で猛然とボールに奪いに来られたらそう簡単には思うようにはパスを繋げません。
これは結果として戦術的(?)な決まりや仕組みを作って選手を動かす事と同じ目的を果たす事になります。
攻撃でいえば相手を動かしてスペースと時間を得てゴールを奪う、守備では相手のスペースと時間を削ってボールを奪うです。これが秋葉監督の「前に向かう」という言葉の大きな意味です。

まず動く

この同じ目的を果たす為に、秋葉エスパルスでは大事な事があります。それが「まず(先に)動く」です。
シーズン途中から監督になり、ここから何か新しく仕組みを作ってそれを感覚まで落とし込む時間がありません。そもそもそれに縛られていた選手を解放したほうが上手くいくと考えているのに、そこに新たに縛りを加えるのは本末転倒です。
なので選手の能力の高さを生かしてそれでいて戦術的仕組みと同じスペースや時間を得る(削る)方法として、どんな状況でもまず前に動いて結果としてそれを得る事が重要になります。
もちろん前に動くのはリスクが伴います。ボールを奪われたら・奪えなかったら一転してピンチになる事もあります。しかしそのリスクの担保となるのは選手達個々の能力とそれがJ2ではできるという秋葉監督の見立てです。逆に言えば先に動かない事には戦術的な仕組みもないエスパルスには何も生まれないのです。相手云々ではなく自分達から「アグレッシブ」に動く事がエスパルスの勝利への方法なのです。
秋葉監督が言葉にしていた「超攻撃的・アグレッシブ・前に向かう」は一見メンタル的なものに聞こえますが、このようにチームを作るうえでとても重要な言葉でした。
そして選手の感覚の解放とプレーの方向性と得たエスパルスは息を吹き返します。
少し長くなってしまいましたが、まとめると

・効果的な判断の妨げになっていた縛りからの解放
・共通認識とするべきプレーの基準の提示と効果
・選手の能力の見立てと目的を達成する為の戦い方の設定

これが秋葉マジックの正体です。

秋葉マジックの結末

プレーオフ決勝のヴェルディ戦、チームは2点とるつもりで試合に臨んでいました。それでも岸本と吉田が投入された後にチームは明らかに後ろに重くなり5バックで守るだけの時間が続きます。組織的な守備ができなエスパルスは引いてしまったら何もできません。必死に堪えるだけの時間が続きますが、秋葉監督が北川と神谷を入れてからチームは少しづつ前へ出て本来のエスパルスのサッカーを徐々に取り戻しています。

しかしその前へ出た事で裏にスペースを作り、最後は今シーズン前掛かりの守備をするチームにあって個の判断で失点を防いできたCBの判断ミスという残酷ではありますがチームのやり方としては至って自然な形での失点となりました。

では今回はこの辺で、お読みいただき有難うございました。

















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