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モテるということ。

中学時代、私は完全にモテない女だった。
小学生の頃、仲良くなった女の子Aちゃんは、担任の男教師に、「お前は中学に上がったらモテるだろうな」と言われていた。私は、意味がわからなかった。目は小さい。顔は小さい。鼻は低い。髪はサラサラ。歯は矯正。痩せ型。なAちゃんのこと、私は同姓として可愛いと認識したことがなかったからだ。
しかし、先生の予言通り、Aちゃんは中学に入学するとぐんぐんモテだした。キモい男子たちが、Aちゃんを隠し撮りして、写真集を作り、一軍と思しき男子から告られて、Aちゃんはあっという間にファーストキスを終えた。
Aちゃんはなぜか、私をよく慕った。アーちゃんて本当面白いよね。アーちゃんといると楽しい。と言っては、移動教室や休憩時間のトイレや帰りの時間に声をかけられた。
人を笑わせることが好きな私は、私のどうでもいい話にAちゃんが笑ってくれることに満足はしていたけれど、Aちゃんと一緒にいて私が笑わせてもらうことはなかった。私は人を笑わせることが好きだけれど、面白い=モテにはならないのだということを、嫌というほど経験から学んでいった。
いつかふとつけた深夜番組で、ある有名お笑い芸人は言っていた。「面白い女の人に欲情できない」。全ての答えがそこに詰まっていた。笑いは、性欲に結びつかない。はっ、という嘲笑をこめた嘆息とともに、私は怒りを吐き出す。
瞬間、男ならめちゃくちゃモテただろうねと言った顔も覚えていない誰かのいつかの発言が、微かに脳裏をかすめた。

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