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子どものころ、おばあが、おじいに自分の匂いを嗅がせていた。 「もうすぐか?」 「あぁもうすぐだ・・・」 おじいはそう言うと泣き出した。 「今までありがとうな・・・」 「わしこそ・・・」 おじいは子どものようにシクシク泣いていた。 おばあは幸せそうに微笑んでいた。 「一政さん、本当にありがとうございました。」 「・・・」 おじいは子どものようにオンオン泣いた。 幼い私には、これがなんのシーンなのかよくわからなかった。 ただ、そのあと、おばあは死んだ。 ずいぶん経ってから
物心ついたら家にネコがいた。 幼い頃、ぼくは父親の両親の家、つまりぼくにとって父方の祖父母の家に住んでいた。その家には ”みつ” と呼ばれるネコがいた。みつはとても賢く、まるで人間のルールを理解しているかのような振る舞いをした。 横断歩道を渡る時は車が来ないことを確認して渡ったり、信号のある大通りの交差点では、歩行者信号が青にならないと渡らなかった。ある日、ぼくが「みっちゃんはおりこうさんですね」と言ったら、ニヤリと笑ってから「ミャウ」と言い返してきた。 トイレ
もう何回目になるのかしら。この家に来てからは3回目。前の家を合わせると10回ぐらい?もう覚えていない・・・ 私たちネコは、誰にも看取られず死ぬことができると、また子ネコに戻ることができる。子ネコに戻った後は、前に居た家に戻るものもいれば、別の家に行くもの、野良になるものなど、新しい生活を選択するものもいる。 私はこの家が好き。おじい、おばあ、そしてお父さんはとても優しい。けんちゃんは生まれた時から知っているから、私の子どもみたいに感じる。 時々怖い夢でも見るのかしら
また今夜も来る。また今夜もあいつが来る。そして私のことを鼻で笑う。 「ふんっ・・・」 母の入院中、あいつは2回目の脳梗塞で緊急入院した。普段から隠れてタバコを吸ったりお酒を飲んでいたようだが、母の入院で監視の目が無くなったことをいいことに、元の不摂生な生活に戻ってしまったようだ。その途端、脳の血管が詰まってしまい、半身麻痺の状態で入院した。その後、あいつは病状が回復し、多少の不便さは残るものの退院することができたが、肝心の母はそのまま帰らぬ人となってしまった。 母は