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記憶のいたずら 雪丸 短編集

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短編集です。消えそうな記憶を手繰り少しづつ書いていこうと思います。(Since 2021/08/14)
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#猫

『人のころ』

 物心ついたら家にネコがいた。  幼い頃、ぼくは父親の両親の家、つまりぼくにとって父方の祖父母の家に住んでいた。その家には ”みつ” と呼ばれるネコがいた。みつはとても賢く、まるで人間のルールを理解しているかのような振る舞いをした。  横断歩道を渡る時は車が来ないことを確認して渡ったり、信号のある大通りの交差点では、歩行者信号が青にならないと渡らなかった。ある日、ぼくが「みっちゃんはおりこうさんですね」と言ったら、ニヤリと笑ってから「ミャウ」と言い返してきた。  トイレ

『ネコのころ』

 もう何回目になるのかしら。この家に来てからは3回目。前の家を合わせると10回ぐらい?もう覚えていない・・・  私たちネコは、誰にも看取られず死ぬことができると、また子ネコに戻ることができる。子ネコに戻った後は、前に居た家に戻るものもいれば、別の家に行くもの、野良になるものなど、新しい生活を選択するものもいる。  私はこの家が好き。おじい、おばあ、そしてお父さんはとても優しい。けんちゃんは生まれた時から知っているから、私の子どもみたいに感じる。  時々怖い夢でも見るのかしら