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記憶のいたずら 雪丸 短編集

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短編集です。消えそうな記憶を手繰り少しづつ書いていこうと思います。(Since 2021/08/14)
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#人間の記憶

『人のころ』

 物心ついたら家にネコがいた。  幼い頃、ぼくは父親の両親の家、つまりぼくにとって父方の祖父母の家に住んでいた。その家には ”みつ” と呼ばれるネコがいた。みつはとても賢く、まるで人間のルールを理解しているかのような振る舞いをした。  横断歩道を渡る時は車が来ないことを確認して渡ったり、信号のある大通りの交差点では、歩行者信号が青にならないと渡らなかった。ある日、ぼくが「みっちゃんはおりこうさんですね」と言ったら、ニヤリと笑ってから「ミャウ」と言い返してきた。  トイレ

『西口の鳩』

今日も聞こえる鳩の泣き声 駅にはたくさんの鳩 帰巣本能? 鳩になっても帰ってくるの? 鳩に雑じった人の声 今日も聞こえる鳩の泣き声 駅にはたくさんの鳩 鳩に雑じった人の声 ”くるっくーくるっくー・・・” ”ぽーぽ―ぽっぽー・ぽーぽーぽっぽー・・・” ”なんで・・ここに・・・来ちゃ・・くるっくー” ”おわ・・いなか・に・・おかあちゃん・ぽー・・” ”くるっくー・・・くるっくー・・・” ”どげなっちょう・・かかぁ・・待っちょう・・・” ”くるっくー・・・炊き出し食っちょ