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記憶のいたずら 雪丸 短編集

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短編集です。消えそうな記憶を手繰り少しづつ書いていこうと思います。(Since 2021/08/14)
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#2000字のドラマ

『プレハブ』

今でもあの頃のことは鮮明に覚えている。 マサ、ジンバ、ケンチ。 同じ年に同じ大学に入って、同じ日に同じサークルに入った三人。 マサはドラム。ジンバはギター。ケンチはキーボード。 バンドは別々だったが、暇さえあれば三人でセッションしていた。 「暑っ!もう無理。手が汗で滑って、バチが飛んでいきそうや。」  上半身裸のマサが、ドラムを叩くのを途中で止めて叫んだ。 「おめ、こっちに飛ばすなや、マサ! そうやケンチ、途中でなんかしたか? コードが、なんか変な感じになったと思ったら、

『朝の色』

 バイトが終わった後、大学近くのいつもの居酒屋に、いつものメンバーで集まる。 「マスター!”といちんさ”ライムでグラス二つ!」  ゼミが常連ぽく注文した。私もそんなふうに注文してみたいと思うが、結局はいつも思うだけ。 「あっ私は・・・」 「イっちゃんはいつものウーロン?」 「はい・・・」 「はーい!ウーロンジョッキで大盛〜!」  ”といちんさ”は、ゼミとヘマがボトルキープしている地元の安焼酎。他のお店の仕組みは知らないが、このお店では、ボトルキープのお酒には、ライムジュース