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記憶のいたずら 雪丸 短編集

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短編集です。消えそうな記憶を手繰り少しづつ書いていこうと思います。(Since 2021/08/14)
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#詩のようなもの

『冷たい毛布』

 ほどよく冷たく、ほどよく弾力があり、ほどよく優しい。  なんだったかはよく覚えていないが、なにかとても心地よかったように覚えている。 「これは・・・なんだったかな・・・」 「お父さん? なに? どうしたの?」 「・・・」 「気のせいか・・・」  あれはなんだったか?私はずっと触っていた。触っても触っても満たされることはなかったが、触っていないと満たされるという感覚からもどんどん遠ざかっていく。  だから触る。触る。触る。触る。触る。触る。触る。触る。触る。触る。触る

『西口の鳩』

今日も聞こえる鳩の泣き声 駅にはたくさんの鳩 帰巣本能? 鳩になっても帰ってくるの? 鳩に雑じった人の声 今日も聞こえる鳩の泣き声 駅にはたくさんの鳩 鳩に雑じった人の声 ”くるっくーくるっくー・・・” ”ぽーぽ―ぽっぽー・ぽーぽーぽっぽー・・・” ”なんで・・ここに・・・来ちゃ・・くるっくー” ”おわ・・いなか・に・・おかあちゃん・ぽー・・” ”くるっくー・・・くるっくー・・・” ”どげなっちょう・・かかぁ・・待っちょう・・・” ”くるっくー・・・炊き出し食っちょ