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Matter=大切、なの?

またBLM運動について書きます。ただ今回は言葉の意味、という観点で。


”Black Lives Matter”

NHKや新聞だと、だいたい「黒人の命は大切だ」か「黒人の命も大切だ」と訳されています。


わたしがひっかかるのは、”Matter"つまり「大切だ」の部分。留学で感じた”Matter”という単語のフィーリングに対して、日本語が合っていない違和感があります。


”Matter”には、すごく主体的なニュアンスを感じます。言語化するなら、私という存在が、世界に影響を与えている。私の存在には、行動には、価値がある。だからこそ私は大切なんだ。そんなイメージがあります。もしかすると、動詞だからこその強さがそのニュアンスを生むのかもしれません。


アメリカのある選挙啓発動画のセリフがこれをよく表していると思います。https://youtu.be/_FNA7b_HSq0

”We will vote because we matter.” 

”We will vote because we make a difference.”

ものすごく力強く訴えるメッセージです。


一方の「大切だ」には、どんなイメージがありますか?私が感じるのは、どちらかといえば受動的な意味合いです。大切なもの=守られるべきもの。周りから価値づけられ、保護される。そんな感触を受けます。


Black Lives Matterというムーブメントは圧倒的に能動的です。黒人もこの世界で生きている。そこには何の命の重みの格差があってはならないはずだ、と世界が動き始めています。一人ひとりが”I MATTER”、自分の行動が変化を起こせると信じ行動していることが、世界を変えつつあるのだと思います。

ここを鑑みたとき、日本語訳では”Matter”というワードが使われた意味が薄れてしまったのではないかと感じたことが違和感の始まりだといえそうです。


追記

留学を通して、たとえある言語のネイティブスピーカー(もちろん日本語も含め)でも、ニュアンスの解釈には幅があることを体感しました。この記事は現行の訳の批判ではないし、様々な解釈が存在するのもわかっています。ただ、一つの単語の訳から言語やそれを形作る文化の違いが垣間見える面白さを感じたのでシェアしました。


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