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ロメリア戦記が出来るまで ~その04、専門家だけで構成しない~

 ロメリア戦記が出来るまで ~その04、専門家だけで構成しない~

 

需要があるのかどうかわからない記事の第四弾です

今回は小説を作る上で、私が注意していることを話そうと思います。

私が作品を作る際に気を付けていることは、その道の専門家だけで構成せず、門外漢や異業種の人を混ぜる。と言うことです。
例えばミステリでは、探偵や警官。頭の良い切れ者ばかりで構成しない。バトル系なら戦闘職以外の人を主人公かその周辺に置くようにしています。

ロメリア戦記では『戦記』というタイトルの通り、戦いがストーリーの主軸となっています。
しかし主人公のロメリアは、戦う力を持っていません。門外漢もいい所です。

プロット段階ではロメリアに戦わせる、と言うアイデアもありました。
細身の剣を片手に、ドレスの裾を翻してさっそうと戦うロメリア。
これはこれで面白いと思ったのですが、没にしました。

一つには戦記物として、主人公が強すぎるのはよくないと考えたからです。

戦記物と言うのは、作品の傾向として登場人物が多く出てきます。その時、どれだけ魅力的なキャラクターを出せるか、もっと言えばキャラクターの魅力を引き出せるシーンやイベントをどれだけ作れるか? というところに作品の良し悪しが出てきます。

しかし主人公が強いと、何か問題が起きた場合、主人公が行って解決すればいい。と言うことになります。

それでは他のキャラクターが主人公の添え物となってしまい、魅力を引き立てることが出来ません。そのためロメリアは、戦いの専門家にはしないことにしました。

このおかげで、戦いの専門家でもないロメリアがどうやって戦いのストーリーに絡んでいくのか? という別軸の面白さと切り口が生まれました。

 

また、この考え方は『セーブ・ザ・キャットの法則』とも相性がいいです
(注 セーブ・ザ・キャットの法則とは、木から落ちそうになっている猫を、間一髪のところで助けると言った、緊張感の演出と問題の解決を意味する創作的法則の事)

例えば木から猫が落ちそうになっている時、猫を助けたのが警官や消防士だったとしたらどうでしょう? 
正義感があり、訓練を積み、力と技術を持ったヒーローが危機一髪のところで事件を解決し人を助ける。

これはこれで面白いでしょう。しかし物語を専門家だけで構成すると、スムーズに話が進みすぎて、読者の心に残らないということが起きる時があります。
また問題に対して効率の良い解答を選ぶと言う傾向になりがちで、効率がいいと言うことは迷いや葛藤がなく、キャラクターの感情が介在しにくくなります。

またセーブ・ザ・キャットの法則は、緊張感を演出して問題解決することで読者に爽快感を与えることは出来ます。ですがこの法則そのものは深いドラマ性を持っていません。これだけだと事件が発生し、ヒーローがそれを解決しただけと言うことになってしまいます。

ではここで、専門家以外のキャラクターが、猫を助けたとしたらどうでしょう。

例えば重度の病人や怪我人といった、絶対に猫を助けない、助けている場合ではない人が猫を助けたら?
あるいは人生に絶望し、今まさに自殺しようとしている人が猫を助けたとしたら?

これはもうそれだけでドラマがあります。
上記の文章を読んだだけで、物語のストーリーを想像した人もいるのではないでしょうか?

もちろん専門家ではありませんから、効率が悪く失敗もするでしょう。迷うことも当然あります。ですが逆に言えば、失敗した後の成功。迷った末に答えを見つける。と言ったシーンを書くことが出来ると言うことです。

そして失敗の苦しみや成功の喜び、迷いや葛藤と言った感情を描くことは、物語のテーマにつながります。

ロメリア戦記では主人公のロメリアを始め、戦うことが専門でない人にスポットを当てることが多いのですが、それは専門家以外の人間を混ぜることで、作品の深みが増すことがあるからです。

 

それでは今日はこの辺で。


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