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寄生生物Xの優雅なる侵略

 俺には一つ誰にも言えない秘密がある。「お帰り、真司君。仕事はどうだったかな?」それは、喋るネズミと一緒に生活している事だ。こいつは随分と愉快な奴なんだが、今日の声色からは何か緊迫した響きを感じる。

 「いや、今日もまた怒られちゃってさ…部長のやつも少しの事で起こるようになってきちゃって…大変だよ。」「ふーむ…やはりかい。」ネズミは言葉を続ける。「遂に奴らが侵略を始めたのかもしれない…」この胡乱なネズミは同類の侵略者を殺しに来た存在だと自称する。つまり奴らとは、「うむ私の同類のことだよ。」「最近、君に対して攻撃的な人間が多いと言っていたね?」「え、あぁ確かに言った気がするけど…」なんせ彼は俺の愚痴を聞いてくれる数少ない存在だ。最早何を打ち明けたかなど覚えてはいない。

 「それでだい、もしかして彼らはーその部長とかに寄生してねー私の存在を嗅ぎ取って、近い匂いがする君に探りを入れているんじゃないかって考えたんだ。」「いや、流石にそんなことが…」「君は私のような存在を目の前にしても”そんなこと”などと言うのかい。」「事態は非常に緊迫しているんだ。もしかしたら君は明日殺されるかもしれない。」「俺はあんたみたいな胡乱なネズミを招き入れたってだけで殺されるかもしれないってのか!?」ふざけている。確かに愚痴を聞いてもらってだいぶ楽にはなっていたが、こんなふざけた事で死ぬのはごめんだ。

 「いやいやだから私も申し訳なく思っていてね。そこで一つ提案があるんだ…私を君の体に寄生させてみないか?」「イカれてんのか!これは俺の体だぞ!」「でも私はこれが最善だと考えるがね…」胡乱なネズミは言葉を続ける。「君は関わってしまった。もうそれは覆せない。ならば最も確率の高い手段にかけるべきだ。それが生きるということだろう。」「絶対に嫌だね。」「ならば一週間、試しにやってみな。どうせすぐに君は泣きつくだろうがね…」

【続く】

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