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紅茶に溢れた風景

 紅茶があらゆる存在の代替物質として確立されてから数百年…無論、人類すら代替する存在として、意志持つ紅茶が現れるのも必然であった。

 「馬鹿め!我ら高貴な紅茶種族を只の人間と見間違えるなどと!貴様のその肉体頂くぞ!」

 何度もハンドガンを撃ち込むが液体と化したその肉体には無意味。油断し、殺しきれなかったとは!何たる迂闊!アストラル体と化した紅茶が、体内に侵入してくる。「さあ抵抗は無意味だ!お前の肉体を…うっ!」体の中から苦しみに悶える声が聞こえてくる。「貴様!何故…紅茶を…」紅茶の断末魔が体中に響く。

 何が起きたんだ?全く理解できない…襲われる前に俺は、探索を終え封印されていた飲み物を…まさか!カバンの中を漁り少しだけ減ったペットボトルのラベルを古代文字の辞書と照らし合わせる。これは…”午後の紅茶”?聞いたことがある!変化せず最後まで人類と共に戦った紅茶の名前だ!まさかまだ残っていたなんて!

 ”午後の紅茶”はただ唯一紅茶を滅することができる存在。すべての紅茶が奴らの監視下に置かれた以上不可能だと思っていたが…”午後の紅茶無糖”を握りしめ立ち上がる。

 あの後も様々な場所を巡り、午後の紅茶を探し求めた。紅茶を仕込んだ銃弾。破片と紅茶を配置したグレネード。最後の切り札、紅茶を詰めた注射器。奴らを全滅させる準備は万全だ。二丁拳銃を引き抜く。目の前には数多の紅茶人間と紅茶の海が広がる。この紅茶に溢れた風景をお終いにしてやろう!

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