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コロナ対策に成功した台湾の取り組みとは

■ はじめに〜コロナ対策に成功した台湾〜

台湾では、4月下旬に「防疫新生活」と呼ばれる日本でいうところのニューノーマルの日常が宣言され、世界の中でも一足先に次のフェーズが始まっています。コロナの新規感染者数が4月にピークを迎えた後、ほぼ感染者数はゼロのまま推移している状況であり、非常に安定した環境となっています。世界が苦戦している中で、いったいなぜこのようなコロナの封じ込めに成功したのでしょうか。

10月20日に放送されたガイアの夜明けでも「新型コロナ 台湾の奇跡!日本と何が違ったのか」という番組名で台湾のコロナ対策の様子が放送されました。

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■ 3つの理由

「SARSからの経験」

1つ目には、コロナ感染拡大が世界的に始まった頃から言われていますが、感染症への意識の高さが挙げられています。特に、台湾では2003年のSARSでの経験があったため、日本や他の世界と比べて危機意識は高かったといえます。日本が周囲の状況を見ながら本格的に対策を始めたのは2020年3月頃となりますが、(弊社でもリモートワークが始まったのがこのぐらいの時期でした。)台湾では2019年12月に既に中国の状況を察知して2020年の1月には政府による本格的な対策が始まっているほど、動きは早かったといえます。

「デジタル対策」

2つ目にマスク管理(マスクの実名導入制)を代表とするデジタル対策です。日本ではマスクが手に入らない時期が続きましたが、台湾では日本でいう健康保険証を薬局などで提示することでマスクが買える仕組み(一人あたりの枚数制限がかかりますが、確実に手に入る環境でした)が導入されました。そして外国へのマスク輸入の制限も早くマスク在庫の管理は優秀であったと言えます。他にも海外から台湾へ帰国した際にQRコードを活用して、確実に14日間の隔離を徹底したことも大きな要因です。(毎日、スマートフォンで報告が義務付けられ、家を出ると警察が警告に来る仕組みになっていました)。一方の日本の対策では、そこまでの危機感を持って徹底された印象はありません。

「安心のプロ集団」

3つ目に国民に安心を与えるプロ集団が挙げられます。日本でも東京や大阪でも都知事や各地の県知事が連日、コロナの状況や対策について記者会見をしていました。台湾でも同様ではありますが、台湾では感染症を専門にしている医者やSARSを経験した医者が毎日のように会見を開きました。そして根性論ではなく、医学的なデータを元に大学の講義のような会見内容が国民に正しい情報を提供し、安心感も高かったと言えます。(ピンクのマスクが男の子に敬遠されたときには、ピンクのマスクを全員でつけ恥かしくないアピールをするなどのお茶目な一面もあるのが台湾らしさでもありますが)

こちらの動画は「台湾モデル」と呼ばれ、世界と対比して、台湾でのこれまでのコロナ対策が時系列で動画化されています。日本語字幕もあり、非常によくまとまっているものとなります。(5分27秒)

■ コロナ後の行動変化

・消費行動
コロナによる消費行動の変化は、日本と大きな違いはありませんが、在宅時間が増えたことによるネットショッピングは増加傾向となりました。例えば、生活用品の消費拡大や衛生対策のためのクリーニング用品の商品拡大などが起こりました。アフターコロナ後にはスポーツドリンクやミネラルウォーターの購入も増加しています。

Vponのアプリダウンロードデータから見ると、UberEatsのような宅配型のアプリ利用も増加しています。(ちなみに台湾では、UberEatsよりもFood pandaというサービスが最もメジャーです。)

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・外出傾向
台湾でも「安心旅游」と呼ばれる日本でいうGo To キャンペーンが2020年7月1日〜2020年10月31日まで適用となっています。大きくは以下の5つの補助となっています。その影響もあり、台湾の国内旅行は日本では考えられないほどに活発なものとなっています。(海外旅行ができないためその反動もあると想定されます。)

・団体旅行補助
・個人旅行宿泊補助
・個人旅行テーマパーク補助
・個人旅行観光バス補助
・各地方の独自キャンペーン

そして以下のグラフは、旅行予約アプリ(AgodaとBooking.com)のダウンロード傾向となります。丸印の5月上旬を境にして急増している様子が伺えます。4月末にアフターコロナの宣言が行われ国内旅行へのキャンペーンが告知され意識が高まった結果と言えます。

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旅行先の傾向としては、世界的な傾向と同様に離島人気が高まっている様子が伺えます。以下の図のように「金門県」や「澎湖諸島」といった離島は非常に注目を集め、滞在データからも実際に人が集まっている結果となりました。そして宿泊でいうと、家族で楽しめるようなエンタメ性の高いテーマを持ったホテルの人気が上がっています。

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■ さいごに

台湾がこれだけコロナ対策に成功した要因は一つだけということではありません。しかし、意識の高さからくる判断の速さや医者や過去の経験者による適切な対処は、明暗を分けたのではないでしょうか。

そしてこれだけ台湾の国内旅行が活発となり、海外旅行待ちになっていることも事実です。航空便も段階的ではありますが検討が進んでいます。しかし日本の観光対策として、コロナ解禁待ちという訳にはいきません。なぜならば、それは台湾からの海外旅行の選択肢として日本だけというわけではないからです。タイや香港へ行く台湾人旅行者も多くいます。そのため、日本(その中でも観光地域)は自地域の情報発信(衛生面や新たな魅力も含め)を続けて来る日に備える必要があります。

おそらく春節(2021年2月)や春先(2020年4月)頃は、台湾からの訪日旅行者も増えてくることが予想されます。このような台湾の状況を理解した上で、日本全体も衛生対策を一層意識し、観光客を迎え入れる必要があると言えるでしょう。