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深夜に粘土あそび

クレイアニメってあるじゃないですか。
ひつじのショーンとかみたいに、粘土をコマ撮りしてアニメにしているやつ。

あれって、作るのとても大変そうだなーとはなんとなく思うけど、何がどう、どれくらい大変なのか具体的には想像できない。
例えば、絵を描くことは多くの人がやったことあるので、二次元のアニメーションを作る大変さは、「あの、絵を描くという作業をひたすらたくさんやらなきゃいけないんだな」という感じで想像がつく。
でも粘土での塑像づくりはそんなにやったことがないから、クレイアニメの大変さは身に沁みてわからない。


彫塑という表現手法

考えてみれば、「うまい絵を描きたい」と思ったことは多くの人があると思うが、「うまい塑像を作りたい」と思ったことある人ってあんまりいないんじゃないか。立体物を表現する場合であっても、普通は塑像より絵という手段を選ぶ人がほとんどかと思う。
自分は大学で建築をやっているので建築模型を作ったりするが、模型は予め計算して出した形を切り抜いてその素材を組立てる場合がほとんどなので、塑像づくりには縁がなかった。表現として絵とか模型は当たり前のように使うのに、なぜか塑像ってあまりにも馴染みがないよね。ということで、粘土で立体彫塑チャレンジをやってみることにした。


こちら100円ショップで買ったごく普通の油粘土。

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今回の題材は、左手の親指。初めての立体彫塑には丁度いい大きさなのではないか。

さっそく粘土をこねこねしていくのだが、めちゃくちゃ難しい。最初の30分くらいは、この粘土の塊が親指になる兆しが全く見えない。こっちを凹ませたらあっちが膨らみ、あっちを削ればこっちが盛り上がる。粘土を持って作業していたが、ちょっと握ると形が変わってしまう。

やっと上から見た形を親指に似せることができた。と思って横から見てみると、全然親指じゃない。そこで今度は横からの見た目を整えたが、斜めから見ると全然親指じゃない。結構完成に近づいたかな。と思って別の角度から眺めてみると、全然完成してない。
建築の世界では立体の表現として平面図、立面図という非常に効率的な方法が普及している。下の画像のように、上からの見た目と横からの見た目の情報があれば模型が作れてしまうことも多い。

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でも親指のような有機的な形状を立体彫塑で表現するには、この平面図と立面図の間の部分を上手く写し取らないといけない。図面で抽象化できないので、コピーしなくてはいけない情報量が急激に増える。

そしてひたすらこねていると、段々と親指がゲシュタルト崩壊して、俺の親指めっちゃキモくね?となってくる。脳が親指の視覚的情報を抽象化できなくなって、親指を親指として認識できなくなる。皆さんはゲシュタルト崩壊するまで親指を眺めたことはあるだろうか?

そんなこんなで1時間くらいこねていたら、なんとなく親指っぽいものができた。あとはひたすら指で優しくなでて、表面の凹凸をなめらかにしていく。指でヤスリがけをする感じで不思議な体験。白い粘土はわずかな凹凸も陰影として克明に表現してしまうため、ここが結構根気がいる。



30分ほど撫で続け、ようやく完成といえるほどまで作り込めた。

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めちゃくちゃ親指である。


正直写真を撮っているときはそうでもなかったのだが、今撮った写真を記事に貼り付けてみてその完成度に驚いている。写真にすることで粘土の質感や表面の汚れなどのノイズがいい感じに抽象化されているからかもしれない。

気軽につくってみたものの、ちょっとこれは捨てるのがもったいない気がしてきた。かといって机の上に常に親指が転がっているのも非常に気味が悪いが。



ということで、以上、深夜に粘土遊びをした報告でした。おかげで親指の形についての理解が深まりました。この理解が役に立つときは来るのでしょううか。

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