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小児科学会など4団体「医療を実施することが不可能あるいは遅延することを懸念」 共同親権めぐり要望書

2023年9月1日、離婚後共同親権の導入をめぐり、日本産科婦人科学会・日本法医学会・日本法医病理学会・日本小児科学会の4学会は、「要望書」を法務大臣へ提出しました。
要望書では、「親権者に医療行為の実施についての同意を求める場面において重大な問題が発生することを懸念」すると指摘。子どもを監護している親の同意のみで、例外的に医療を認めるなどの措置を検討するよう求めました。


4学会が提示した懸念など

  • 共同親権制度が導入された場合、父母の離婚後も子どもに医療が必要なときに両方の親権者の同意を得る必要があれば、生命・身体の保護に必要な医療を実施することが不可能あるいは遅延することを懸念しております。

  • DV 等の認定自体は離婚の際になされていなくても現実には精神的支配が行われているような状況下で共同親権の取り決めがなされた場合に、上記のような子どもに医療が必要な場面において適時に両親の同意を得ることができず、子の利益が侵害される怖れもあります。

新聞報道

「共同親権」、子どもへの医療行為に配慮を 小児科学会などが国に求める
(2023年9月1日 東京新聞)
 法制審議会の議論では、ドメスティックバイオレンス(DV)や子への虐待があった場合は単独親権とする制度が有力視されているが、この点に関しても「暴力が認定されていなくても、現実には精神的支配が行われているような状況下で共同親権となった場合、適時に両親から同意を得られない可能性がある」と懸念を示した。

  子への医療行為、円滑な決定を 「共同親権」巡り4学会が要望
(2023年9月1日 共同通信)
要望書は、共同親権の趣旨は「理解する」とした上で「医療行為が必要な時に両方の親権者の同意を得る必要があれば、生命・身体の保護に必要な医療実施が不可能あるいは遅延することを懸念する」と指摘。


要望書(全文)

令和 5 年 9 月 1 日

法務大臣 齋 藤 健 殿

公益社団法人 日本産科婦人科学会
特定非営利活動法人 日本法医学会
日本法医病理学会
公益社団法人 日本小児科学会

「家族法制の見直しに関する中間試案」への要望


 貴職におかれましては、社会・国民生活を支えるための法制度の整備や国民の人権擁護のため、日夜ご努力をいただいていることに衷心より敬意を表します。

 この度、法制審議会において「家族法制の見直しに関する中間試案」が示されており、父母が離婚した後に双方を子どもの親権者とする民法第 819 条の改正案が示されています。その改正案の趣旨・理念については理解するところですが、同時に、子どもに医療を提供する医療者の立場からは、患者の代諾者となる親権者に医療行為の実施についての同意を求める場面において重大な問題が発生することを懸念します。

 すなわち、共同親権制度が導入された場合、父母の離婚後も子どもに医療が必要なときに両方の親権者の同意を得る必要があれば、生命・身体の保護に必要な医療を実施することが不可能あるいは遅延することを懸念しております。

 また、夫婦間や家庭内でドメスティック・バイオレンス(DV)や児童虐待があったならば、例外的に共同親権ではなく従来通りに単独親権となるという制度も検討されているようです。しかしながら、DV 等の認定自体は離婚の際になされていなくても現実には精神的支配が行われているような状況下で共同親権の取り決めがなされた場合に、上記のような子どもに医療が必要な場面において適時に両親の同意を得ることができず、子の利益が侵害される怖れもあります。

 共同親権制度を導入するにあたっては、子どもの生命・身体を保護する重要な場面である医療の実情に関して適宜医療者の意見を聴取し、上記のような懸念にも対応できる仕組みを検討していただけるようお願いいたします。たとえば、子どもの生命・身体を保護するために早急な医療実施が求められる状況においては、子どもを監護している親の同意のみで子どもが適切な医療を受けることができるような例外的対応を許容するなど、通常の医療業務の範囲内で子どもの生命・身体を保護する職責を果たすことができる措置を講じていただくことを要望いたします。そうした法制度を受けて、医療現場
でも子どもへの医療提供のあり方や説明・同意プロセスなどについて再検討する所存です。

以上


掲載にあたり、行間を空ける等の編集をしました。
原文は、下記PDFか、日本産科婦人科学会ホームページでご確認ください。


なお、離婚後共同親権をめぐっては、2022年6月、「日本乳幼児精神保健学会」が声明を出しています。


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