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離婚後の合法的嫌がらせ ―リーガルハラスメントの実態―

別居後・離婚後に延々と続く、法的手段による嫌がらせ。同居親は、お金と時間を奪われるだけでなく、精神的にも削られていきます。
「家族法制の見直しに関する中間試案」への意見書から、リーガルハラスメント(濫用的な申立て)についての意見を取り上げます。


中間試案「濫用的な申立てを簡易に却下する仕組み」の検討

中間試案では、いわゆるリーガルハラスメントについて、簡易に却下する仕組みを検討すると述べています。

5 家庭裁判所の手続に関するその他の規律の見直し
(1) 子の監護に関する家事事件等において、濫用的な申立てを簡易に却下する仕組みについて、現行法の規律の見直しの要否も含め、引き続き検 討するものとする。

家族法制の見直しに関する中間試案

これに対して、ひとり親家庭・DV被害者支援の団体は、被害実態に触れながら、対策の必要性を訴えています。

DV加害者から次々と裁判を起こされ、終わりが見えない

NPO 法人 全国女性シェルターネット(2023年2月)

【意見】
これらについては、ぜひ検討いただきたく、期待しています。
(理由)
・濫用的な申し立て(「リーガル・ハラスメント」)は深刻な実態があります。英国などでもその防止に取り組まれていると聞いています。日本でもぜひ実効性の高い対策の導入を希望します。
私たちが支援の中で見聞きしたリーガル・ハラスメントの例は次のようなものです。

・「シェルター入所後、弁護士に依頼して離婚手続きを開始したところ、加害者が、「シェルターに入る前から子どもを連れ去るように弁護士が仕向けた」と、未成年者略取教唆で弁護士が訴えられた。このため弁護士が警察対応をしなければならなかった。
その後も面会交流の申し立て、親権変更とそれに伴う子の引き渡しの申し立てが加害者からあった。離婚成立後は何度も養育費減額の申し立てなどがあり、そのたびに加害者が提出してくる書面等に対応せざるを得ず、精神的に疲弊し、うつ的になってしまった。」

・「加害者が弁護士に対して、「でっち上げ DV である」として懲戒請求をし、保護した警察官の処分を求めて公安委員会に訴え、シェルタースタッフを名誉毀損で告訴し、住民票の閲覧制限をした〇〇市に対して慰謝料請求した。」
このようなリーガル・ハラスメントは最近多くなっていると感じている。(相談支援者)

NPO 法人 全国女性シェルターネット(2023年2月)


認定特定非営利活動法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ(2023年2月8日)

【意見】
いずれも、賛成である。
子の監護に関する家事事件等において、濫用的な申立ては、当団体の調査でも2524人中11%が受けたあると回答していた。リーガルハラスメントの一種である。自由記述も多く、「裁判、調停、合わせて9つやっています。裁判では6000万円の請求(根拠のない言いがかりの金銭要求)がなされています。裁判で、相手の言い分が通ることはほぼないと分かっていても、裁判をしなければならないこと自体が苦痛です。DV加害者に、DV被害者を相手に裁判をさせることに制限を与えてほしいです。次々と裁判を起こされ、終わりが見えません」という記述も見られ、制限についての検討が必要である。その手法も、新たな損害賠償請求をする、裁判官を忌避する、管轄の裁判所の移送を申し立てるなど、合法であるが単なる引き延ばしやいやがらせになっているものがある。

認定特定非営利活動法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ(2023年2月8日


日弁連「日常生活の平穏が害され、子の最善の利益に反する状況を招く」

日本弁護士連合会は、「濫用的な申立てを簡易に却下する仕組み」に賛成する立場を示すものの、慎重論も併記しています。
濫用的な申立ては現に子を監護する親に無用な手続への対応を強いることにより、日常生活の平穏が害され、子の最善の利益に反する状況を招くことにつながりかねない」との意見は、今まさに起きている現実についての現場感覚を反映しています。

日本弁護士連合会(2023年2月16日)

【意見】
本提案(1)(2)いずれの仕組みについても、引き続き検討することに賛成する。
【理由】
子の監護に関する家事事件手続等において審判や判決が効力を生じた直後に、非監護者又は非親権者から、特段の事情の変更がないにもかかわらず、子の監護に関する家事事件手続等の申立てが繰り返されることがあり、このような濫用的な申立てを却下するための仕組みが必要であることに異論はない。
もっとも、現行法を見直して新たな仕組みを設けることについては、現行法下でも一定の規律が整備されていることや、実体審理を経ずに申立てを簡易に却下し得る制度を設けることは当事者の裁判を受ける権利を侵害するおそれがあることから、慎重であるべきとする意見と、現行法下の規律が活用されて濫用的な申立てに対する適切な対応が図られているとは言い難いことや、濫用的な申立ては現に子を監護する親に無用な手続への対応を強いることにより、日常生活の平穏が害され、子の最善の利益に反する状況を招くことにつながりかねないことから、新たな仕組みの導入に賛成する意見があった。
しかし、いずれの意見においても、子の最善の利益を確保するために、濫用的な申立てに対して適切な対応が図られるべきことについては一致していることから、本提案の仕組みについて、現行法の規律の見直しの要否も含め、引き続き検討することに賛成する。

日本弁護士連合会(2023年2月16日)

イギリスなどでは、離婚後のリーガルハラスメントについて、「ポストセパレーションアビューズ」(post-separation abuse)と呼んでいるようです。
同居親と子どもを過酷な状況に追い込む行為は、まさに「abuse」という言葉が実態に近いかもしれません。


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