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共同親権の論議を止めたのは誰か? ―「怒号」でパブコメを阻止した自民党保守派―

共同養育支援議員連盟(柴山昌彦会長)が2月24日、離婚後共同親権の早期実現を求め、齋藤健法務大臣へ申し入れを行いました。
議連は「今国会において、DV法の改正とともに、中間試案のパブリックコメント終了後直ちに共同親権の実現に必要な成案を取りまとめ、一刻も早く法案を提出すること」を求めています。

しかし、そもそも、法制審議会のパブリックコメント募集を「怒号」で阻止して議論をストップさせたのは自民党だったという事実を、この記事では再確認していきます。

責任を転嫁する共同養育支援議連

はじめに、共同養育支援議連が法務大臣に提出した文書を見てみましょう。
議連の努力をアピールする一方で、法務省が怠慢だと言わんばかりの書きぶりとなっています。
【速報】共同養育支援議連 法務大臣へ今国会への法案提出を申し入れ|ありしん@共同親権反対です|note

法務省で検討されている家族法制の見直しは、累次にわたり当議員連盟の議論等を通じて検討の加速を求めてきたにもかかわらず、昨年八月に中間試案を示したものの、中間試案の修正案の審議が十一月、パブリックコメントの開始が十二月となるなど、いまだ必要な法案の提出までの道筋が示されていない。

こどもの最善の利益を図る観点からの共同養育を実現するための法案の
早期成案・提出を求める決議(共同養育支援議員連盟 2023年2月24日)

「怒号」でパブコメを阻止した自民党

では、昨年8月に何があったのか? 共同通信が詳しく報じています。
自民党本部に響く怒声 離婚後の「親権」を巡る専門家会議の試案、議員の“横やり”で急きょ延期(共同通信 2022年10月5日)

法制審議会は、中間試案を用意してパブリックコメントを募集する方針でしたが、自民党の議員らの怒号により、急遽、延期を迫られました。

法制審は、複数の案を併記した中間試案を用意し、パブリックコメント(意見公募)で国民の考えを広く聞いた上で、さらなる議論に生かす方針だった。
 しかし、そこに“横やり”が入る。自民党の会合で、共同親権導入を強く求める一部の議員が法務省側に怒号を飛ばし、中間試案の取りまとめは急遽延期になった。その後の法制審の部会では、発言した専門家らの大半が「政党の圧力で変えると禍根を残す」などと懸念を表明する異例の事態に。

共同通信 2022年10月5日

共同親権・共同監護の導入を強く求める複数の議員が大きな声でまくし立て、その怒号は廊下にまで響き渡りました。

▽「壁耳禁止」も、扉越しに廊下まで響いた怒号
 事態が急変したのは8月26日。法制審が中間試案を取りまとめる予定としていた30日の4日前だ。
 東京・永田町の自民党本部で開かれた「法務部会」。法務省関連の案件が議論される会合だ。法制審の議論状況について、法務省がこの部会で説明するのは3回目だった。終了予定時刻を大幅に過ぎた頃、共同親権・共同監護の導入を強く求める複数の議員が、大きな声でまくし立て始めた。
 「この議論は法制審にどう反映されるのか。何のための法務部会だ」「法制審はこんなことしか決められないのか。原則共同親権じゃない。答えられないでしょう。もっとちゃんとやってくださいよ!半端な議論をしているんじゃないんですよ、われわれは」「これなら連れ去り問題は全然解決しないじゃないか!」
 報道陣はこうした部会を傍聴できないが、会議室の扉の近くで耳をそばだてる、いわゆる「壁耳」を一般的にしている。しかし、この日の会合は、家族法制の議題に進んだ途端に「壁耳禁止」が告げられ、記者は部屋から離れた廊下で待機するよう指示された。それでも、議員らの怒号は、扉越しに廊下まで響き渡り、しっかり聞き取れた。
 結局、法務省側が取りまとめを見送る方向を示し、その場を収めたという。

共同通信 2022年10月5日

自民党議員らは何を要求していたのか? 彼らがねじ込もうとしたのは、運動団体「民間法制審」の独自案でした。

この議員らが求めているのは、婚姻中と同様の共同親権だ。背景には、法制審に対抗し、北村晴男弁護士が中心となって結成した「民間法制審」という団体がまとめた独自の試案がある。ある法務省幹部はこう推し量った。「ニュートラル(中立)に複数案を併記するだけで、自分たちの推す案が際立っていないと不満を持ったのだろう」

共同通信 2022年10月5日

自民党の法務部会の介入で先送りされる異例の事態

法制審議会のパブリックコメントを自民党が介入してストップさせる。これが異例の事態であることは、新聞各紙の報道にもあらわれています。

●自民党の法務部会で、共同親権導入を求める議員から注文が付き、試案の取りまとめが一時先送りされる異例の事態まで起きた。
離婚後の親権 子の幸せ最優先の議論を(毎日新聞 2022年11月21日)

●8月の会合で議題になった際、推進派の一部議員が内容に異論を唱え、実施が先送りになっていた。
離婚後の「共同親権」を議論 自民部会、パブリックコメント実施を了承(東京新聞 2022年11月10日)

共同親権の推進役は、「伝統的な家族観」にこだわる自民党保守派

ところで、離婚後共同親権を推進しているのは、どんな議員たちなのでしょうか? 東京新聞の記事を見てみましょう。
「共同親権」の導入に政治の影響は…自民部会紛糾でパブコメ延期 揺らぐ法制審の独立性(東京新聞 2022年11月7日)

 Q 自民は共同親権を推進しているのですか。
 A 法務部会のプロジェクトチームは6月、「家族の分断を生じさせてはならない」と、離婚後の共同親権導入を法相に提言しました。別居親を支援する議員、法律婚や血縁を重視する「伝統的な家族観」にこだわる議員らが推進役になっています。

東京新聞 2022年11月7日

朝日新聞の8月の記事の見出しも、「自民保守派が反発」となっています。
離婚後の共同親権、法制審が試案取りまとめ延期 自民保守系が反発
(朝日新聞 2022年8月30日)

「共同親権」という言葉から「リベラル」なイメージを抱く方も多いようですが、実態は、自民党保守派が怒号をあげてまで推進しようとしている政策なのです。

旧統一教会の集会に出席していた柴山昌彦議員

この記事の最後に。
共同養育支援議連の会長として共同親権を推進している柴山昌彦議員が、旧統一教会の集会に出席していたという事実を付言しておきます。

「柴山氏は今年一月、所沢市内で開かれた旧統一教会の集会であいさつ。昨年十月には、県内の地方議員の活動報告会であいさつしたが、この会に旧統一教会の関係者が数人出席していた。」


お読みいただき、ありがとうございました。
共同養育支援議員連盟については、こちらのマガジンにもまとめてあります。どうぞご覧ください。


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