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「離婚後共同親権」5つの誤解 ―マスコミの俗説を検証する

明日3月14日から、「離婚後共同親権」導入を柱とした民法改正案について、国会での審議が始まります。でも、「共同親権の問題ってよくわからない」という方も多いようです。

なぜ、共同親権問題はわかりにくいのか?
それは、法務省が恣意的な情報を流し、マスコミも誤解を招く俗説を垂れ流していることが一因です。
この記事では、「離婚後共同親権」についてのマスコミの俗説を検証します。



1.「離婚後共同親権は、家族の多様化に対応するため」??

法務省は、離婚後共同親権の背景として、「父母の離婚が子の養育に与える深刻な影響」と「子の養育の在り方の多様化」などと説明しています。

マスコミでは、以下のような「問題」を離婚後共同親権と結び付けて報じていますが、いずれも直接の因果関係はありません。

(1)「子育てに参加できない」問題
 現行民法は共同養育を禁じておらず、離婚後に協力して子育てする父母は存在します。 日常の監護に関する共同決定は、現行民法766条に規定があります。 現状、離婚後に母親が親権者になることが多いのは、子の監護が母親に偏っていることの表れと言えます。

(2)「面会交流できない」問題
これも現行民法766条に規定はあり、面会交流できていないのは、「申立てをしていない」「裁判所が子の利益の観点から認めなかった」等、何らかの理由があります。むしろ、DV・虐待があっても、面会交流を命じられてきたことこそが社会問題と言えます。

(3)「養育費を受け取れない」問題
「養育費不払い」は経済虐待の一種とも言え、「親権がないから養育費を払わない」という論議の立て方自体に問題があります。 養育費すら払わない親に、重要事項の共同決定権(拒否権)を与えるべきなのか、大いに疑問です。


2.「共同親権を自由に選択できるようになる」??

マスコミは、離婚後共同親権が「選べるようになる」とか、「選択的共同親権」と報じていますが、これはミスリードです。現行法が実質的な「選択的共同親権」制度であることは推進派議員も認めています。

法改正によって何が変わるのか? それは「父母の合意がなくても共同親権を命じる」制度の導入です。つまり、「非合意・強制型」共同親権の是非こそが争点だと言えます。


3.「DV・虐待は例外だから問題ない」??

 日本では、現状、協議離婚が9割を占めています。協議離婚についてはノーチェックという法案ですので、DV・虐待加害者から力関係で共同親権を強いられる事案を絶対に排除できません。
また、 裁判離婚の場合でも、DV・虐待を立証できなければ、裁判所に共同親権を命じられる可能性があります。特に、精神的・性的な暴力の場合、被害者が物的な証拠を残すことは非常に困難です。


4.「養育費と面会交流の問題もこれで解決」??

(1)養育費
 「先取特権」が盛り込まれましたが当事者の負荷は大きく、また、「法定養育費」も低額となることが予想されます。結局、 海外のような「国の立替払い」「強制徴収」という抜本対策は見送りのままです。
むしろ、 共同親権を理由にした養育費減額申立てなどにより、母子家庭の貧困が悪化するおそれすらあります。

(2)面会交流
いわゆる「試行面会」は、すでに現行法のもとでも運用されています。 「会えない」という不満の背景は、家裁の審理期間の長期化も一因です。しかし、 離婚後共同親権の導入は、家裁のパンク状態に拍車をかけ、さらに悪化する可能性大です。
さらに、 祖父母などによる面会交流の申立ては、紛争を誘発し、子の利益を害するおそれがあります。

5.「家庭裁判所の体制を強化すれば大丈夫」??

 離婚後共同親権の導入にあたっては、家庭裁判所の予算・人員・施設などについて、量的にも質的にも飛躍的な強化が最低限の条件です。
 にもかかわらず、岸田政権は、今国会で民法改正と同時に、裁判所の「定員削減」の法案を提出しています。
マスコミは、 「裁判手続きのデジタル化」「研修強化」などを対策としてあげていますが、焼け石に水であり、根本解決には程遠い内容です。

まとめ:「離婚後共同親権」5つの誤解

このように、以下のような俗説は、いずれも誤解であると言えます。

✖「離婚後共同親権は、家族の多様化に対応するため」
✖「共同親権を自由に選択できるようになる」
✖「DV・虐待は例外だから問題ない」
✖「養育費と面会交流の問題もこれで解決」
✖「家庭裁判所の体制を強化すれば大丈夫」


国会審議にあたっては、社会の実態や現行法について、事実を正しく理解することが必要です。
小泉法務大臣は3月8日、閣議決定後の記者会見で「まずはしっかり国民の皆さんに理解してもらう。そういったことに特に気を付けていきたい」と語りました。国会での趣旨説明に注目していきましょう。

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