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共同親権等の民法改正を踏まえ、家裁の人的・物的充実を求める決議(全司法労働組合)

全司法労働組合は、7月21~23日に第81回定期大会を開催し、「共同親権等の民法改正を踏まえ、家裁の人的・物的充実を求める決議」を全会一致で採択しました。
政府や最高裁に対し、家裁の人的・物的充実を強く要求しています。

(23) Xユーザーの全司法労働組合(本部)さん: 「全司法は7月21~23日の日程で第81回定期大会を開催し、同大会において「共同親権等の民法改正を踏まえ、家裁の人的・物的充実を求める決議」を全会一致で採択しました。 政府や最高裁に対し、家裁の人的・物的充実を強く要求するものです。 https://t.co/retrOMT6Xg」 / X

※note掲載にあたり、段落間の改行を追加するなど、レイアウトを調整しています。


 共同親権等の民法改正を踏まえ、家裁の人的・物的充実を求める決議

 5月17日、離婚後共同親権導入を含む民法改正案が可決・成立し、今後2年以内に施行されることになりました。

 そもそも家庭裁判所は今でも繁忙で、職場からは切実な増員要求が出されています。これに共同親権や面会交流の拡大などの改正民法にもとづく事務が加わることを考えると、大幅増員は待ったなしの状況ですが、最高裁は「親権に関する規定の整備等を内容とする民法等の改正の影響はもとより、家庭事件全体の事件数の動向や事務処理状況等をきめ細かく把握した上で、必要な人員の確保にむけて、引き続き努力していきたい」と述べるにとどまっています。当面、2025 (令和7)年度予算の概算要求において、大幅増員の要求を行うことが必要です。

 これまで、離婚後共同親権の導入については賛否両論があり、様々な議論が行われてきました。家裁の職場からも、離婚に際して葛藤が高まった父母が協力態勢を築くことの難しさ、共同親権が相手方や子どもを支配したり、あえて行動を妨害し、攻撃するための手段として用いられる懸念、共同親権を定めることが事業の解決につながらず、むしろ、紛争を長期化させた新たな火種になる危惧などが示されていました。

 法案の国会審議においても、DV被害者をはじめ多くの国民から反対や不安の声が湧きおこる中での成立となりました。離婚時に双方の真意にもとづいて共同親権を定めることができるのかという問題に加え、双方の合意ができない場合に裁判所が共同親権を定めることができる規定があることや、共同で決めることが求められる事項で話し合いがつかない場合への対応、DV虐待被害者の保護など、多数の問題が山積みになっており、採決の際にも衆議院で12項目、参議院で15項目の附帯決議がつけられました。加えて、共同親権について賛否いずれの立場からも、家庭裁判所の体制整備が求められました。

 法案が成立したことで、今後、その運用が課題となります。立法趣旨や国会審議の経過を踏まえ、附帯決議を活かした運用を誠実に行うことで、制度をより良いものにし、国民からの信頼にこたえていくことが裁判所には求められています。とりわけ、家庭裁判所の役割がきわめて大きくなるとともに、事件の増加や複雑困難化が予想されることから、人的・物的な体制の整備は必要不可欠です。附帯決議でも「改正法により家庭裁判所の業務負担の増大及びDV・虐待のある事業への対応を含む多様な問題に対する判断が求められることに伴い、①家事事件を担当する裁判官、家事調停官、家庭裁判所調査官等の裁判所職員の増員、②被害当事者及び支援者の協力を得ることなどにより、DV虐待加害者及び被害者の心理の理解を始めとする適切な知見の習得等の専門性の向上、③調停室や児童室等の増設といった物的環境の充実、オンラインによる申立てやウェブ会議の利用の拡大等による裁判手続の利便性の向上、子が安心して意見陳述を行うことができる環境の整備など、必要な人的・物的な体制の整備に努めること」とされており、家裁調査官や書記官の増員は重要な課題です。

 こうした経過を踏まえ、政府や最高裁に対し、家裁の人的・物的充実を強く要求するものです。
 以上、決議します。

2024年7月23日
全司法労働組合第81回定期大会


なお、離婚後共同親権に関する声明などは、こちらにまとめています。


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