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「共同親権」になるとどうなるの? ~「中間試案」10のギモン~

離婚後共同親権の導入を含む、「家族法制の見直しに関する中間試案」について、パブリックコメントが募集されています。

いま出されている案が現実になると、いったい何が変わるのでしょうか?
10個の疑問について、Q&A形式でまとめてみました。

法律の専門家ではありませんので、もしかしたら解釈の間違いなどあるかもしれません。ひとつの考え方として参考にしていただければと思います。

なお、「共同親権の問題について正しく知ってもらいたい弁護士の会」作成の以下の資料を参考にさせていただきました。


(1)共同親権を自由に選択できるの?

そうではありません。甲案は、①②③いずれも当事者の意思に反して共同親権が強制されうる制度です。選択的共同親権でなく、「強制的共同親権制度」と言えます。
共同親権が強制されない制度は乙案(現行法)だけです。

原則 : 父母双方が親権者とされる制度
ただし、 一定の要件を満たす場合に限り、 父母の協議又は家裁の裁判により、 その一方のみを親権者とすることも可能(甲①案)

「中間試案の説明資料(概念図)」共同親権の問題について正しく知ってもらいたい弁護士の会

(2)共同監護が義務づけられるの?

父母双方が子の監護を共同することを義務付ける提案がされています(B案①③)。
現行法では、協力できる父母が監護を共同することは自由です。
(「単独親権制度のせいで、共同で子育てできない」というのは嘘です。円満に子育てしている芸能人の元夫婦の報道などを見れば明らかですね。)

父母双方が身上監護を共同することが義務となる。 父母の協議により、 その一方のみを監護者と定める ことも可能だが、父母間の協議が整わない場合は、家裁の裁判により、 監護者を定めるかどうかが判断さ れ、 一定の要件をみたさない限り共同監護しなくて はならない(B案①)

「中間試案の説明資料(概念図)」共同親権の問題について正しく知ってもらいたい弁護士の会

(3)共同で決定しないといけないの?

財産管理や法定代理は共同で行うものとし、合意できない場合は裁判手続きをする案が提案されています(γ案)。また、事前協議を義務付け、別居親による差し止めを認める案もあります(β案)。
現行法は、親権者が単独で決定することができますし、非親権者に相談することも自由です。

財産管理や法定代理は、父母が共同 で行わなくてはならない。 父母の意見対立時は、監護者が定められている場合も、 定められていな い場合も、 家裁の手続をとる必要が ある。(γ案)

「中間試案の説明資料(概念図)」共同親権の問題について正しく知ってもらいたい弁護士の会

(4)すでに離婚が成立しているから 大丈夫?

いいえ、すでに離婚していても他人事ではありません。
改正前に離婚した人、子の監護について必要な事項の定めをした人、養子縁組をした人のほか、これらついての裁判手続の申立てをした人などにも適用することが検討されています。

すでに離婚が成立し、 親権の争いも終了し ている方にも、 再度、「共同親権とするかどうか」 の審判をしなくてはならないという提案がされています。(第2-1-注、第8-注2)

「中間試案の説明資料(概念図)」共同親権の問題について正しく知ってもらいたい弁護士の会

(5)DVや虐待を申告すると不利になる?

そのような法改正にならないよう、パブコメでしっかりと意見を述べていくことが必要です。
共同親権運動は、DV被害者が子連れ避難することを「連れ去り」「実子誘拐」と攻撃し、刑事告訴する運動を展開しています。また、DV・虐待があって面会交流に消極的だと監護者として認められにくくなるかのような考え方を主張する人たちもいます(フレンドリーペアレントルール)。
これらは、子どもが安心して生活できる環境につながるでしょうか??

監護者を定める際の考慮要素を明確化す るとして、 父母の一方が他の一方に無断で子を連れて別居した場面においては、「不当な連れ去り」であるとして、当該別居から現 在までの状況を考慮すべきではないとする考え方や、 他の親と子との交流が子の最善 の利益となる場合において、監護者となろうとする者の当該交流に対する態度を考慮するという提案がされています。(第 3-4)

「中間試案の説明資料(概念図)」共同親権の問題について正しく知ってもらいたい弁護士の会

(6)自由に転居できなくなる?

別居親が関与しないと引越しは許さない、という提案が出されています。
「子どもの居所=同居親の居所」なので、同居親の居住選択の自由も制約されるということです。
親の介護、仕事の都合などで引っ越そうと思っても、別居親が妨害することができます。一方、別居親の引越しについては制約がありません。


子どもの居所を指定、変更するにあたって、 父母双方の関与を必要とするという提案が されています。(第 2-3-(4))

「中間試案の説明資料(概念図)」共同親権の問題について正しく知ってもらいたい弁護士の会

(7)調停の結果がでなくても 面会交流を命じられる?

調停の途中であっても面会交流を裁判所が命じる制度が提案されています。「一定の要件が満たされる場合には」と書いてありますが、膨大な申し立てを裁判所が処理することは非現実的です。DV・虐待ほか、個別の事情を丁寧に見ることなく、事実上ノーチェックで“とりあえず面会交流せよ”と命じられる危険性があります。
2012年の「面会交流原則実施論」以降、面会交流にあたってDVは全く考慮されず、虐待も見過ごされてきた実態があります。裁判所も反省し、ようやく最近、運用が見直されてきているところです(ニュートラルフラット)。
パブコメで、危険性を強く主張していかなくてはならない項目です。

面会交流を申し立てられたら、 その調停 の結論が出る前に、 暫定的に面会交流をすることを裁判所が命令するという制度、 申立てから一定の期間が経過すれば、 1回 又は複数回、 面会交流を決定で命じられる制度が提案されています。(第 5-3-(1))

「中間試案の説明資料(概念図)」共同親権の問題について正しく知ってもらいたい弁護士の会

(8)再婚相手が子どもを養子縁組するにも、共同親権者の同意が必要?

再婚して養子縁組する際には、別居親の同意が必要になる提案が出されています。これは、別居親が持つ「拒否権」として機能します。
「再婚相手からの虐待防止のため」という主張もありますが、虐待は、養子縁組の制度をいじったから防止できるような甘いものではありません。このような制度改正をしても、虐待加害者との同居を防ぐことはできません。むしろ、「実質的に同居しているが、養父としての責任は負わない」という無責任状態になるだけです。

未成年者を養子縁組する時に、 共同親権者の同意がないと、 再婚しても養子縁組で きないようにすべきとの意見も示されてい ます。(第 6)

「中間試案の説明資料(概念図)」共同親権の問題について正しく知ってもらいたい弁護士の会

(9)認知しただけで共同親権?

認知しただけで共同親権者になる提案が出されています。
認知は一方的に行うことができます。婚姻関係にない中で、共同親権を強制する法制度は危険ではないでしょうか。
現行の民法は、「父母の協議(又は家庭裁判所の裁判)で父を親権者と定めたときに限り父が親権を行う(それ以外の場合は母が親権を行う)」としています。現行維持の乙案が妥当です。

父が認知した場合、その子どもに対して共同親権となるという提案がされています。 (第 2-5)

「中間試案の説明資料(概念図)」共同親権の問題について正しく知ってもらいたい弁護士の会

(10)祖父母との面会交流も明文化?

同居親の合意がなくても、家庭裁判所が祖父母など第三者との面会交流を命じる考え方が示されています。
現状でも、離婚後に、別居親の親族が入れ替わり立ち替わり、次々と訴訟を提起するリーガルハラスメントの事案があります。
現行法は、祖父母などの親族との面会交流を禁じているわけではなく、円満に面会交流できている事案も少なくありません。問題となるのは、円満に協議できない事案であり、法改正で明文化することにより、子どもと同居親を過酷な状況に追い込む可能性があります。

親以外の第三者 (祖父母等) と子どもの面 会交流に関する規律をもうけるという提案 がされています。(第 4-2)

「中間試案の説明資料(概念図)」共同親権の問題について正しく知ってもらいたい弁護士の会

こうして見てくると、全般的に、 同居親の自由を 制限する方向での提案がされています。それは、子どもが安心して生活できる環境につながるでしょうか?

DV 被害者がさらに追い詰められることになるのでは? と非常に心配になる論点もあります。

たくさん書かなくても、理路整然と書けなくても大丈夫です。
経験してきた事実、そして子育ての実感に基づく声を、パブコメで届けていきましょう。


パブコメに向けて、もっと詳しく学びたい方は、Kids Voice Japan のサイトをおすすめします。


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