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共同親権運動とリーガルハラスメントの実態 ―親子ネット会長、法制審で「おわび」も

DV・虐待事件を多く取り扱う弁護士の間では、別居・離婚後に執拗に続くリーガルハラスメントの深刻な実態がよく知られています。また、加害的で反復的な申し立てを繰り返す当事者が、「共同親権」を掲げていることも、しばしば見られる事象です。

しかし、法制審議会は、「たたき台(2)」でもリーガルハラスメントについて無策なままです。
この記事では、法制審(第22回・2023年1月24日)での参考人ヒアリングにスポットを当てます。

参考人からの発言では、共同親権の導入をめざして活動するDV加害者が、「親子ネット」のホームページをリーガルハラスメントに活用している実態も明らかになりました。

法制審議会家族法制部会第22回会議(令和5年1月24日開催)https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00180.html


○じゅんこ参考人 
(略) 
このような状況でも、夫と子どもとの面会交流は当たり前のように家庭裁判所に強制されました。調停委員からは、たとえ虐待やDVがあっても面会交流を拒否することはできないと言われました。子どもは面会交流が終わるたびに情緒不安定になり、面会交流が終わって2日ほどは、家の中でも家の外でも私に抱っこをせがみ、片時も離れたくないそぶりを見せて、情緒不安定です。私自身も、面会交流の1週間ほど前から不安で怖くて体調を崩します。面会が終わっても、安堵感と恐怖にさらされたことで体調を崩します。月に1回の面会交流であっても、月の半分近くが体調不良で終わるのです。
(略)
 離婚調停から離婚裁判に移行する過程で、相手の主張が変わりました。書面には聞き慣れない、フレンドリー・ペアレント、連れ去り、実子誘拐、弁護士の洗脳という言葉が並ぶようになりました。その頃から相手が共同親権の導入を目指す活動をしていることが分かりました。親子ネットさんのホームページから抜粋した記事が書面に添付されるようなこともありました。私と子どもは警察に保護され、相手から避難したにもかかわらず、相手は私が子どもを連れ去った誘拐犯だと、何度も警察を訪ねては、私を誘拐罪で逮捕してもらおうとしました。警察に保護されたとき、私が警察に、以前からDVがありましたと話したことが、別に命に別状があったわけではないからDVではないと、虚偽申告罪でも私を逮捕してもらおうと何度も警察に足を運ばれました。裁判所での裁判や調停は9件を超えました。法外な損害賠償請求もされています。相手の警察への訴えも、裁判所への訴えも、認められることはないかもしれません。ですが、相手の目的、ハラスメントは達成できている状況です。
  離婚後の共同が制度化されれば、リーガルハラスメントの材料が増えて、もっと苦しめられることになるだろうと予想しています。DVや虐待を認めずに威圧的な言動を繰り返して重ねてくる人と、相互に協力が不可欠な離婚後の共同ができるはずがありません。連絡を取ることでさえも第三者を挟まないと怖いです。相手の名前を書面で見るだけで震えが出ます。このような状況で裁判所から離婚後の共同を命じられたらと思うと、怖くて仕方がありません。
(略)

○武田委員
 親子ネット、武田でございます。勇気を出してお話しいただきまして、本当にありがとうございます。あと、弊会のホームページ、じゅんこさんの相手方が訴訟のために使ったと、ごめんなさい、まずはおわびを申し上げたいと思います。
(略)
もう一つ、お話だけお聞きしていると、ひどいDVを長期間受けられてきたと理解をしておりまして、今いろいろな係争を、係争の中で今、離婚調停というものと離婚裁判、恐らく手続としては、あと面会交流の調停もやられたのかなと理解しました。私の感覚からすると、否認するDV加害者は、私もいると思います。手続の中で、そういうDVの認定を家庭裁判所なりが、する機会がまだないのか、それとも認定されなかったのか、そこだけでも教えていただきたいなと思います。

○じゅんこ参考人
(略)
  DV認定のお話ですが、相手が共同親権運動に関わっていて、将来的に私も共同親権になるのかもしれないという不安があったことや、調停の段階から相手が全然DVや虐待を認めなかったことがすごく怖くて、何とか裁判所にDVの認定をしてもらいたいと思って、今私は裁判所にDVの認定をもらうための慰謝料請求をしています。それを離婚裁判の中で慰謝料請求をしている段階であり、まだ、裁判が始まって5年近くたつのですが、終わっていないです。

○武田委員
 終わっていないということですか。

○じゅんこ参考人
 はい。ずっと相手が1か月、2か月、3か月と期日を延ばすものですから、全然話が進まない、そのような状況です。

(略)

○赤石委員
 しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石です。じゅんこさん、ありがとうございました。本当に勇気を持ってここに臨んでいただき、ありがとうございます。
  私からの質問は、9件裁判、向こうからのリーガルハラスメントといえるのだろうと思うのですが、起こっているというのを、何と何が起こっているのか、もしよろしければ教えていただきたいと思います。この中間まとめでも、そこの法的な嫌がらせというかリーガルハラスメントについて若干書かれているのですが、委員の皆さんはなかなか想像が付かないかもしれないので、教えていただければ大変参考になると思います。

○じゅんこ参考人
 ただいまリーガルハラスメントということで質問を頂きましたが、終わっても何回も減額調停を立ててくる。同じ内容でも何回でもできることは、相手は機会を狙って何回も何回も繰り返し立ててきます。1年たったら減額してくれというふうに何回も立ててくるという状況で、今、9件という内容になっています。


以上、法制審の議事録より、リーガルハラスメントの実態を紹介しました。

離別後アビューズの一形態として、リーガルハラスメントは、海外でも問題になっています。
オーストラリアの家族法改正(2023年)では、「長期にわたる敵対的な訴訟の弊害から、当事者と子どもを保護するための権限を強化する」ことが盛り込まれています。
また、イギリス司法省報告(2020年)でも、「主張を繰り返し、裁判所の手続を虐待として使用する」(8.5)ことが問題として指摘されています。

法制審議会・法務省は、家事事件におけるリーガルハラスメントについて、早急に実態を把握し、対策を講じるよう、強く求めます。

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