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共同親権における問題点のポイント(自由法曹団)②親権の共同行使

離婚後共同親権を導入する民法改正について、自由法曹団が、衆議院法務委員会での審議からの問題点をまとめました。
この記事では、論点ごとに分けて、その内容を掲載します。




Q.離婚後共同親権の場合、母と子が引っ越しする際、離婚している父親の同意は必要か。

A.必要。
(令和6年3月14日衆議院本会議 米山隆一衆議院議員)

【問題点】
子の居所指定を単独で行うことができる「急迫の事情」の時期の切迫性の時点・内容が不明確である。具体的には、単独での親権行使(子の居所指定)ができる「急迫の事情」(824条の2第1項3号)の内容が不明確であり、離婚後共同親権下であってもDV・虐待・支配等の加害が継続あるいは再燃した事例において、子を連れて避難することが違法とされうる(婚姻中の共同親権下の子連れ別居の場合も同様。)。例えば、(婚姻中)1か月前に夫が妻の顔を殴った。夫を恐れて離婚を切り出せず夫が出張で不在になる機を待って子連れ別居した場合、「急迫の事情」があるといえるのか。殴られたのが3ヵ月前の場合、1年前の場合はどうか。いずれも不明である。


Q.子の利益を見極めるためには基準や運用を明らかにする必要があるのではないか。


A.親権者、保護者等の合意や関与が必要とされる事項につき、本改正法の影響の有無は、一時的には法令を所轄する関係各省庁等において検討されるべき事柄であり、法務省において、運用の基準を明らかにすることは困難。
(令和6年3月22日参議院法務委員会 仁比聡平参議院議員)

【問題点】
法案の前提となる運用の基準が検討されず、他省庁に下駄を預けており、子の利益に反する運用がなされる危険性について十分な検討がなされていない。


Q.監護及び教育に関する日常の行為の具体例は。


A. 例えば、その日の子の食事といった身の回りの世話や、子の習い事の選択、子の心身に重大な影響を与えないような治療やワクチン接種、高校生が放課後にアルバイトをするような場合。
(令和6年4月2日衆議院法務委員会 大口善徳衆議院議員)

【問題点】
子の心身に重大な影響を与えないような治療やワクチン接種の具体的な内容が不明。


Q.離婚後共同親権の下、子の修学旅行先が海外である場合、改正案824条の3に基づいて、子の教育の範囲として、監護権者が単独でパスポートの取得できるか。


A. 【法務省】実務的にどうかは、旅券法の解釈、適用の問題になるので、外務省であり、法務省から答弁することは差し控える。
※数回速記中止
パスポートの申請、取得に関し、基本的には、共同親権の場合には父母共同で行う必要がある。

【外務省】現状においては、旅券発給申請の法定代理人署名欄に一方の親権者の署名を求めている。他方、本改正案の議論を踏まえて、本改正案の解釈に基づき、今後、未成年者の旅券取得について、適切な手続を定めていきたい。
( 令和6年4月2日衆議院法務委員会 枝野幸男衆議院議員)

【問題点】
【法務省】外務省に下駄を預け、正面から答弁していない。
実務上、多く生じるであろうケースであり、かつ子の利益に多大な影響のある海外修学旅行や留学に際して、基準が不明確である。
監護と教育の範囲と法定代理行為について、混乱が見られる。

【外務省】本改正案の解釈に基づく未成年者の旅券取得について、現時点で具体的な手続きについて定めておらず、実務上混乱を来す。

「親権者のできること」という見地から、e-GOV法令検索システムで、「親権」、「未成年」、「十八歳未満」の単語で条文を検索した法律(左記各単語順で、38本(346箇所)、149本(922箇所)、43本(134箇所))と膨大であり、公布後2年以内に施行では到底、具体的な検討が間に合わない。


Q.父母の協議が調わないとき、改正案の八百二十四条の二、三項で、家庭裁判所が単独行使を認めることができる手続は、家庭裁判所において、保全処分や逮捕状発布手続のように即座にできるか。


A.現時点で法改正後の裁判所の運用について具体的に申し上げることは困難。改正された場合、今後、そのような場合も想定しながら、改正法施行後の運用に関する大規模庁での集中的な検討、全国規模での検討会の機会を設ける等。
( 令和6年4月2日衆議院法務委員会 枝野幸男衆議院議員)

【問題点】
現時点では、裁判所の迅速な手続ができるか不明であり、検討もしていない準備不足、検討不足の状態であって、公布後2年以内に施行では、到底間に合わない。本来は、その体制如何で、本法律案の実質的な評価が決まるのであって、重要な部分について、決まっていないことに本質的な問題があり、まさに、生煮えの法律案である。


Q.医療行為やパスポートを取る等、日常の範囲がどこまでか分からないから、どこまで確認する必要があるのか混乱が生じるがどうか。


A.親権の単独行使が許容される範囲について、関係府省庁等とも連携して、適切かつ十分な周知、広報に努めたい。
(令和6年4月2日衆議院法務委員会 枝野幸男衆議院議員)

【問題点】
現時点で、連携していない。「親権者のできること」という見地から、e-GOV法令検索システムで、「親権」、「未成年」、「十八歳未満」の単語で条文を検索した法律(左記各単語順で、38本(346箇所)、149本(922箇所)、43本(134箇所))と膨大であり、公布後2年以内では到底、具体的な検討が間に合わない。そもそも、子の利益を考えた制度設計であれば、まずは、他の法律との関係で、子の利益に反しないかどうかを検討すること先決である。


Q.単独親権か共同親権かの確認方法や、双方の意思が一致しなかった場合の調整方法について、厚生労働省はどのような事態と対策を想定しているのか。

A.【厚労省】個別の事情に即して判断されることになるため、一概に答えることは困難。父母双方が親権者であることは来院した親に確認を取り、双方が親権者である場合には、同意を取得できていない親に対して、事情を説明した上で同意書を送付する等の対応が考えられる。厚生労働省としては、今後、法務省とも相談しながら、医療機関に対して適切に今般の制度趣旨等の周知する。
( 令和6年4月2日衆議院法務委員会 道下大樹衆議院議員)

【問題点】
急迫ではないが、そのような対応ができない場合の具体的な方策が決まっていない。


Q.離婚後、共同親権になった場合、その子に合う薬を決めるために、何度も薬を試すために変えなければいけない場合、その都度、元配偶者の合意が必要なのか。特別支援学校にするのか、特別支援学級にするのか、別の学校の特別支援学級にするのか、普通学級に、そして通級にするのかとか、一年かけて相談しながら決めることも、その子の日常の様々きめ細かい状況も把握していない別居親の合意が必要なのか。


A.子が日常的に使用する薬で、その心身に重大な影響を与えないようなものの選択は、監護又は教育に関する日常の行為に当たり、同居親が単独で決定することができる。子の進学先の選択や特別支援学級への進級等の決定は、基本的には父母が共同して行うことになる。
(令和6年4月2日衆議院法務委員会 本村伸子衆議院議員)

【問題点】
急迫ではなくて、一年かけて相談しながらその子の特性に合った学校を選ぼうと努力をされているが、通常その子の様子をきめ細かく把握していない別居親の合意が必要だということになれば、様々な、子の利益に反することが出てくるのではないか。


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