見出し画像

陸奥新報の社説を読んでみた ―ふわっと共同親権を肯定し、最後は「当事者の心がけ」に丸投げ

2023年12月28日、陸奥新報が社説 共同親権導入へ「子どもの幸せと福祉を第一に」 を掲載しました。
以下、突っ込みを入れながら、読んでみます。



「これまでの単独親権から両親が協力して子どもを養育することが可能となる」って??

 法制審議会(法相の諮問機関)の家族法制部会は、離婚後も親双方に子の親権を認める「共同親権」の導入に向けた民法改正要綱案を公表した。政府は改正案を来年の通常国会に提出する方針で、導入が実現すれば、これまでの単独親権から両親が協力して子どもを養育することが可能となる。両親の関係は子どもの成長に大きな影響を与える。共同親権が子どもの幸せや福祉を優先して考える関係を築くための端緒となることに期待したい。

<コメント>

  • 第1文から間違っています。事務局から提示された「要綱案(案)」の段階であり、部会として取りまとめしたものではありません。他紙は、要綱案の「素案」「試案」「原案」と表現しています。

  • 法制審議会の調査審議中なのに、「政府は改正案を来年の通常国会に提出する方針」とは、誰に取材して確認したのでしょうか?

  • 単独親権は、両親が協力して子どもを養育することを禁じていません。三谷議員でさえ、国会で「共同親権は共同養育と全く関係ない」(4月19日 衆議院内閣委員会)と述べています。


現行法は「親権を持たない親と子どもの交流を断ち切る制度」??

 現行の民法は、どちらか一方のみが親権を持つ単独親権を規定しているが、「親権を持たない親と子どもの交流を断ち切る制度」といった批判があった。欧米では、ほとんどの国で共同親権を採用していることから、国際結婚が破綻した日本人の親による「子の連れ去り」が、国際的な問題として指摘されていた。

<コメント>

  • 現行民法は「親権を持たない親と子どもの交流を断ち切る制度」ではありません。民法第766条には「子との面会及びその他の交流」があります。


「子どもに会えない疎外感が、養育費の支払いが滞る一因に」??

 要綱案では現行法を見直し、両親が協議して共同親権か単独親権かの選択を可能にする。両親が合意できなければ、家庭裁判所が判断する。日常的な教育や居所に関しては、どちらか一方を「監護者」に指定して単独で決められるとした。ほかにも養育費の不払い対策の創設などを盛り込んだ。
 単独親権では、基本的に親権者が子育ての責任を負うことになる。ただ、シングルマザーが一人で子どもを抱え、時間的にも経済的にも疲弊してしまうケースは少なくない。一方、親権者でない親は、子どもの生活や将来への関与から遠ざかってしまう傾向にある。子どもに会えない疎外感が、養育費の支払いが滞る一因になることもあろう。共同親権の導入で、これらの問題が解決につながる可能性がある。

<コメント>

  • 親権を持たない親が子育ての責任を持たないわけではありません。

  • 「子どもに会えない疎外感が、養育費の支払いが滞る一因になることもあろう」と、「面会交流できなければ養育費なんて払わない」論に迎合してしまう陸奥新報。経済虐待の容認ではないでしょうか?

  • 「共同親権の導入で、これらの問題が解決につながる可能性がある」と、ずいぶん、ふわっとしています。


「共同親権が認められるようになれば、争いを回避できる道が開かれる」??

 ほかにも、両親がともに親権を希望した場合、裁判に持ち込まれ、結果的に不和や亀裂が深まることもあった。共同親権が認められるようになれば、争いを回避できる道が開かれる。

<コメント>

  • 「争いを回避できる道が開かれる」という表現も、ずいぶん、ふわっとしています。

  • 離婚後共同親権になれば「不和」「亀裂」「争い」がなくなるというのはファンタジーで、他国では離婚後も紛争が継続しています。


「福祉優先へ単独親権を維持するのは当然の配慮だ」

 共同親権の導入を懸念する声もある。離婚後も虐待やDV(家庭内暴力)が続く可能性があるケースだ。要綱案では、共同親権を選択した際に「子の利益を害する」と認められる場合、家裁は「父母の一方を親権者と定めなければならない」と明記するとともに、面会交流も認めないとした。子どもは守られるべき存在であり、福祉優先へ単独親権を維持するのは当然の配慮だ。

<コメント>

  • 「福祉優先へ単独親権を維持するのは当然の配慮だ」とまとめつつ、虐待・DVへの懸念に応えていない文章となっています。

  • 「面会交流を認めないとした」とは、要綱案(案)のどこに書いているでしょうか??


「当事者同士がいかに子どもの幸せを優先するか」

 共同親権の場合、進学といった重要事項を決めるには双方の合意が必要になる。その際、教育方針やしつけなどで両親の意見が食い違う場面もあろう。この際、大切になるのは互いの冷静な話し合いだ。いがみ合ったり、怒鳴り合ったりしては、子どもが悲しみ、苦しむことになる。共同親権の導入はあくまで一里塚であり、当事者同士がいかに子どもの幸せを優先するかが、制度を真に生かすカギになると考える。


以上、

 現行法について誤解を広めて論じて、ふわっと離婚後共同親権を肯定したあげく、最後は、「当事者どうしの心がけ」に丸投げ!

という、陸奥新報の社説でした。



よろしければサポートお願いします。 共同親権問題について、情報収集・発信の活動費として活用させていただきます。