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【東京高裁決定】別居中の夫による「転校」への妨害を排除

2024年5月、別居中の夫による「転校」への妨害について、東京高裁はこれを排除する判断を示しました。
以下、大貫憲介弁護士(さつき法律事務所)による報告からまとめました。

「2024年5月の2本の東京高裁決定から、以下のとおり結論付けられる」として、大貫弁護士は以下のようにコメントしています。

「共同親権であっても、監護者である同居親は、別居親の同意を得ることなく、その裁量で、転校、転居を実行できる。別居親がこれを妨害する場合、その妨害を排除できる」



1、東京高裁2024.5.28決定:夫に対して、「転校を妨害してはならない」と命令した。

【事案の概要】
別居後、離婚成立前(離婚裁判係属中)の事案。
妻は、夫と別居した後、別居前に長男が通学していたA小学校に通うことができないため、同学校から退学させたい意向を有している。ところが、夫がこれを認めないため、転校手続ができず、未成年者が新たな学校に通うことができない事案。
妻が、夫に対して、未成年者を本件小学校から退学させることに同意し、これを妨害してはらない旨の仮処分命令を申し立てた事案である。
申立人=同居親、母、相手方=別居親、父

【東京高裁決定主文】
夫に対して、「妻が、長男をA小学校から退学させることを妨害してはならない」と命令した。

【決定の理由(決定文の抜粋)】
…離婚に至らない夫婦間においても、子をいずれかが監護するかについて争いがある場合、いわゆる子の奪い合いが生じている場合においては、夫婦の婚姻関係は殆どの場合既に破綻に瀕していて、事実上離婚状態にあるとみることができ、そのような夫婦間の子を巡る紛争はし烈であって、共同親権の行使により監護方法を決することが期待できないばかりか、子の福祉にも反する状態となっており、家庭裁判所が子を監護すべき者等を定める必要性がある点では、離婚の場合と異ならないと解されることから、民法767条の類推適用により、家庭裁判所において、子の監護者の指定をすることができる

離婚前に監護者に指定された者には、…監護と教育は不可分一体なのだから、監護者には監護教育権、子の居所指定権及び職業許可権(民法820条ないし823条)を中心とする身上監護権が分掌され、監護者は、原則として、監護教育に関する事項について単独で決定するものと解されるし、その行使が事実上妨げられる場合には、監護者の判断は基本的に尊重され、監護者は、妨害者に対して、妨害排除請求権を行使することができる…

出典:大貫憲介さん: 「再掲(まとめ直し) #共同親権に負けない 監護権に基づく、別居中の夫の、転校への妨害排除 転居、転校と共同親権 東京高裁決定2本(2024.5.28) 1、東京高裁2024.5.28決定 東京高裁は、同決定にて、夫に対して、「転校を妨害してはならない」と命令した。➡」


2、東京高裁2024.5.13決定「別居中の夫の同意がない場合に、夫の転居、転校の差止めを否定」

【決定の要旨】
別居中で離婚成立前の夫(子の父)が共同親権に基づいて、同居親・監護者である妻(子の母)の行う転校、転居の差止めを求めた事案について、
「被保全権利がない」として、夫の申立てを却下した東京地裁の決定を支持した。

【決定の理由(決定より抜粋)】
「抗告人は、…子は父母の親権に服し、親権は…父母の一方が親権を行うことができない場合を除いて共同で行使されんければならず、子の利益に反しない限り、単独で行使することは認められていないから、親権の共同行使とは認められない、親権者の一人が独断でした行為は、たとえ子の利益に反していなくても他方親権者の意思に反する限り、適法な親権の酷使とは認められない…と主張する。
「しかし、未成年者の監護教育の内容、方法等につき親権者に一定の裁量が与えられており、明らかに未成年者の利益ないし福祉に反しない限り、親権が共同行使されていないという一時から、一方の親権者が他方の親権者の親権の行使を排除し、その差止めを求めることはできない」

出典:大貫憲介さん: 「#共同親権に負けない 「別居中の夫の同意がない場合に、夫の転居、転校の差止めを否定」 2、東京高裁2024.5.13決定 【決定の要旨】 別居中で離婚成立前の夫(子の父)が共同親権に基づいて、同居親・監護者である妻(子の母)の行う転校、転居の差止めを求めた事案について、➡」 

出典:「#共同親権に負けない 「被保全権利がない」として、夫の申立てを却下した東京地裁の決定を支持した。 【決定の理由(決定より抜粋)】 「抗告人は、…子は父母の親権に服し、親権は…父母の一方が親権を行うことができない場合を除いて共同で行使されんければならず、子の利益に反しない限り、➡」


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