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(7)〔元棋士の事件から考える〕離婚後共同親権、5つのギモン

共同親権運動を担ってきた橋本元棋士が、元妻らへの殺人未遂容疑で7月20日に逮捕されました。

また、民法改正のたたき台を法務省が8月にも提示予定、とも報じられています。

パブコメまとめも報告されていないのに、共同親権導入へと加速して大丈夫なのでしょうか?

この記事では、元棋士の事件から浮かんでくる、離婚後共同親権への疑問を考えてみます。



【1】「子どもを連れて出ていけ!」と言われた場合も、別居できないのか?

夫に「子どもを連れて出ていけ!」と何度も言われ、やむなく乳児を連れて実家に帰ったのに、後から「実子誘拐だ!」「連れ去りだ!」と妻が非難される。…そんなケースが後を絶ちません。
一方で、子どもを置いていけば「育児放棄」「子を置き去り」と非難されます。

離婚後共同親権の案では、「共同養育計画」に合意しないと離婚できないという規律が検討されています。
もし、諸々の合意が整うまで別居禁止となれば、父母が対立する環境に、長期間、子どもを晒すことになります。

【2】DV・虐待をどうやって除外するのか? 除外できるのか?

「共同親権になっても、DV虐待は除外できるから大丈夫」。共同親権導入論の常套句です。

では、橋本氏のケースは、共同親権の対象外なのでしょうか?
対象外だとしたら、いつの時点からでしょうか?そして、誰がどうやって判断するのでしょうか?

【3】父母の「真摯な合意」があるか、本当に確認できるのか?

橋本氏は、妻子を追い出し、自らが子との面会交流を拒否しているにもかかわらず、「連れ去り」を主張していました。
事実を都合よく捻じ曲げて、事後的に相手を非難する行為は、「実子誘拐」「共同親権」を主張する人たちに、しばしば見られる言動です。

日本では、協議離婚が9割を占めており、裁判離婚は1%に過ぎません。
父母で「権力格差」のある関係で、やむなく「合意」せざるをえないケースもあるでしょう。
「真摯な合意」など、いつ、誰が、どうやって、確認できるのでしょうか?

【4】別居親に対して、面会交流を強制するのか?

「単独親権制度のせいで子どもに会えない」。これも、共同親権導入論の常套句です。
現行法には面会交流についての規定があり、面会交流していない理由には、「別居親が面会交流を希望しない」というケースもあります。

橋本氏も「面会交流など絶対にしません」「息子はいらん」と公言しています。

離婚後共同親権になれば、面会交流を望まない別居親にも面会交流を義務付けるのでしょうか? 

渋々、会いに来た別居親との面会交流は、子どものためになるのでしょうか?

【5】話し合えない相手との共同決定は、子どものためになるのか?

橋本氏の手記などからは、同居時にも、別居・離婚に向けた冷静な話し合いが困難だったことが伺えます。
別居後、橋本氏は、子の実名や顔写真をSNSで拡散し、また、妻を罵倒する言動を繰り返しました。
共同親権を主張する人が、妻や義父母を誹謗中傷することは非常によくあるケースです。

こういう相手と、子どもの重要事項を決定することが現実的なのでしょうか? 都度都度、紛争になることは明らかです。
子どもは、長期に渡り父母の紛争に晒され、重要事項は適時適切に意思決定されなくなります。


さて、以上、5つの疑問をあげてみました。

これらは、共同親権を導入するのであれば、向き合うべき実践的な問いです。
なぜなら、事件として顕在化しないまでも、妻子への「離別後アビューズ」を繰り返す人たちが、共同親権運動の中にゴロゴロいるからです。

論議が不十分なままに法改正を強行すれば、被害を受けるのは子どもたちです。
DV・虐待事案でも面会交流を強要してきた「面会交流原則実施」論の過ちを、二度と繰り返してはなりません。


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