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共同親権における問題点のポイント(自由法曹団)①「急迫の事情」

離婚後共同親権を導入する民法改正について、自由法曹団が、衆議院法務委員会での審議からの問題点をまとめました。
この記事では、論点ごとに分けて、その内容を掲載します。



Q.離婚後共同親権の場合、「急迫の事情」(民法改正案824条の2第1号3号)について、受験の願書が翌日に迫っているとき、母親の同意だけで願書を提出できるか。

A.受験願書の提出期限が翌日に迫っている場合は、あたる。
(令和6年3月14日衆議院本会議 米山隆一衆議院議員)

【問題点】
「急迫」の時的限界が不明であり、受験校の決定が直前まで決まらず、子のメンタルに悪影響が生じる恐れがあり、子の福祉に反する危険性がある。父母とも単独で決定できるのであるから、競合する場合がある(父も母も「急迫」だとして、父はA校への出願を単独で希望し、母がB校への出願を単独で希望した場合にはどうなるのか不明である。このような、単独親権行使できる「急迫の事情」または「監護または教育に関する日常の行為」における父母競合の問題は他の場面でも当然生じる。)


Q.離婚後共同親権の場合、ある種の小児の心臓手術のように、2か月から3か月程度の範囲で手術日を選ぶ場合、「急迫の事情」があるとして母親の同意だけでよいのか。


A.直ちにあたらない。協議等ができずに手術日が迫ってきた場合は、当たりうる。
(令和6年3月14日衆議院本会議 米山隆一衆議院議員)

【問題点】
「急迫の事情」の判断基準が不明である。結果として医療機関では、トラブルを避けようと子への対応に父母双方の署名を求める場面が増え、臨床現場に過大な負担をかけることになり、適時適切な医療の実現の妨げになるし、両親の意見が食い違った場合、困難な立場に医療機関が置かれる。手術日が迫ってきた時期に手術の申込みと取り消す意思表示が単独でなされた場合の該当性が不明。
3か月後に手術をする予定で、現時点では父母の同意は無いが手術予定日を仮押さえする対応を病院が行うことが可能か。父母連名の同意書を手術日程をおさえるということでは、適時適切な医療が受けられず、子の生命・身体に危険が生じうる。手術前提の検査をするためには、早い段階で手術同意書の提出が必要になるところ、2、3か月前では「急迫の事情」にあたらないとされ、手術前提の検査が行われない危険性がある。
医療ネグレクトに該当する危険性がある。


Q.法制審家族法制部会の棚村政行委員による共同親権が望ましい場合と単独親権がよい場合の基準や運用につき十分な議論ができなかったとの発言、戒能民江部会委員がDV被害者の安全確保が後退しないか強い懸念を持っているとの指摘、殴られてすぐに逃げない場合に、子どものことを考えて、夏休み等まで待って秘密裏に家を出ることは「急迫の事情」に含まれるのか疑義があり、コンセンサスが得られてないのでは。

A.完璧というわけにもいかないが、ベストを尽くした。足りないものがあれば、補う。
「急迫の事情」が認められるのは加害行為が現に行われているときやその直後のみに限られず、加害行為が現に行われていない間も「急迫の事情」が認められる状態が継続しうると解釈することができる。
(令和6年3月22日参議院法務委員会 仁比聡平参議院議員)

【問題点】
 法制審家族法制部会の委員からも議論が不十分であるとの指摘、「急迫の事情」の該当性とDV被害者の安全確保の懸念から重大な疑義が呈されており、対策や議論が不足している。「急迫の事情」が認められるのは加害行為が現に行われているときやその直後のみに限られず、加害行為が現に行われていない間も「急迫の事情」が認められる状態が継続しうると解釈することができるというが、一般的にそういった事態のことを「急迫」とは言わない。修文する必要がある。具体的に、継続しうるとあるだけで、どの程度。認められるのか不明である、「急迫」の文言が一人歩きして、限定的に解釈される危険性がある。
※非合意型共同親権の導入がされることも大問題。どのような場合に、父母に共同親権の合意がないのに裁判所が共同親権を命じることが適切かについて、法制審での議論はわけがわからない。
法制審小粥太郎委員発言 https://twitter.com/katepanda2/status/1760241780325597671


Q.「急迫の事情があるとき」の具体例は。

A.入学試験の結果発表後の入学手続のように、一定の期限までに親権を行うことが必須であるような場合、DVや虐待からの避難が必要である場合、緊急の医療行為を受けるため医療機関との間で診療契約を締結する必要がある場合。
(令和6年4月2日衆議院法務委員会 大口善徳衆議院議員)

【問題点】
従前の基準の不明確さの問題が解決されず。


Q.子が慢性的な病気手術が必要だが、早く手術した方がいいケースで、父母がなかなかコミュニケーションが取れない場合、「急迫の事情」にあたるか。

A.手術の緊急性如何である。
(令和6年4月2日衆議院法務委員会 枝野幸男衆議院議員)

【問題点】
「急迫の事情」からだと、明確な基準が読み取れない。


Q.急迫の事情がある場合の対策は。

【厚労省】明確にどういう場合が緊急かというようなものは示したものはない。そういった実態を踏まえまして、今後、法務省とよく相談しながら、医療機関に適切に示す。
(令和6年4月2日衆議院法務委員会 道下大樹衆議院議員)

【問題点】
具体的な対策が決まっていない。



<関連記事>国会審議については、こちらにまとめています。





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